妄想小説
覗き妻が受ける罰
第八章
目覚ましを朝の4時に掛けて飛び起きた京子はノーパンで着ていたパジャマのままで飛び起きると、ベランダの洗濯物を取込みに行く。しかし掃出し窓を開けた京子は呆然と立ち尽くしてしまう。干しておいた筈のパンティ30数枚がものの見事に一枚残らず無くなっていたからだ。
「な、なんて事・・・。」
ベランダは二階なので、まさか下着泥棒が居ても二階までよじ登ってくることはないだろうと高を括ったのが失敗だった。確かに30数枚のパンティが一斉に干してあるのだから、下着泥棒の目に留まったとしたら格好の餌食になる筈だ。
しかし、あまりにタイミングが良過ぎるという気もしてきた。夕方過ぎに持っている全てのパンティを洗濯しろと命令してきたあの男の仕業ということも充分考えられた。
朝の早い時間だったが、居てもたってもいられず、京子は自分に掛かってきた携帯メールに宛てて返信を返してみた。
「あなたなの。私の下着を盗んだのは。困ります。返してください。」
そう打つと意を決して送信してみる。朝の早い時間なのですぐの返事は期待できないと思っていた。が、意外にも1分もしないうちに返事が返ってきた。
「お前の下着ならまだ近くにある筈だ。捜してみろ。但し、外に出るのはあの服しか許さない。」
股下ぎりぎりまでしかないボディコンのワンピースを着て出ろというのだった。まだ5時まで少しある。外はやっと明るくなってきているが、まだ散歩に歩いているものは殆ど居ない筈だと思った。
パジャマを超ミニのワンピースに急いで着替える。ブラジャーは着けたが下はノーパンだ。それでもそれで外に出るしかなかった。何となく公園が怪しい気がして、まずは公園に行ってみる。見渡してみるが、京子の下着がばら撒かれているということはなかった。あまり近寄りたくはなかったが、一晩繋がれていた男子トイレにも行ってみることにする。小用便器のアサガオには最早手錠は掛かっていない。ふと、個室の扉が開いていることに気づく。いつも開いたままだったか記憶には定かではない。近寄ってみると、和式の便器だがなにやらその中に詰め込まれているような気がする。
辺りを気にしながら近づいていって、京子は凍り付く。和式便器の中に詰め込まれていたのは、見間違いようもなく、明らかに盗まれた京子の30数枚のパンティだったのだ。トイレはそんなに綺麗に掃除されている訳ではない。しかもその中にパンティを落としてから誰かが明らかに放尿した後があった。最早身に着ける為に回収する訳にはいかないことを悟った。かと言って、そのまま放置しておく訳にもいかない。京子のものであると証拠付けるものはないにせよ、自分の家の近くで大量の下着が公衆トイレから見つかったなどという噂が立つのは堪らなかった。急いで家に戻ると、紙袋とトングを持出して公衆トイレに戻る。便器の中からトングを使って下着を紙袋に拾い集めると、家から少し離れた場所のゴミ集積場まで持っていって、泣く泣くそこに下着の入った袋をゴミとして出したのだった。
家に戻った京子は再度携帯を取り出してあの男の所へショートメールを送る。
「貴方の仕業なの?あまりに酷いやり口ね。もう穿く下着が一枚も無いのよ。こんな短いスカートじゃ、外にも出られないわ。」
そう打ってみたものの、だからどうしてくれるとも思えなかった。それでもつい勢いで送ると早速返事が戻ってきた。
「だったら、旦那のパンツでも穿いていたらどうだ。」
そのメールが来て初めてその事に思い至った。もう単身赴任が長いので、下着類や替えのシャツなどはかなりのものを向こうの社宅に宅配便で送っている筈だったが、幾らかはこちらにも残してある。時たま帰省した時には使って京子がその後洗濯などしていたからだ。
夫のクローゼットを漁ってみて、見つけたのはブリーフが二枚だけだった。結婚当初京子が買ってきたものだ。夫がどんな下着が好みなのか判らないので男性下着売り場で、ブリーフとトランクスを数枚ずつ買ってきたのだったが、夫はトランクス派だったようで、その後はトランクスしか買わないようになった。買い置きしておいた筈のトランクスは一枚も残っていなかった。白いブリーフは女物のパンティに最も近い男性用下着と見えなくもない。しかし、前開きのペニスを取り出す部分が付いているブリーフを穿かされるのはとても屈辱的だった。しかし何時スカートの奥が覗かれてしまうかもしれない超ミニのワンピースをノーパンのままで着ているくらいなら男性用ブリーフでも穿かないでいるよりは遥かにマシだった。幸い、夫は痩せている体型なので京子と洋服のサイズはそれほど変わらない。ブリーフがブカブカという訳ではなかったので、取り敢えずはそれで凌ぐことにする。デパートが開く時間になったら、早速出掛けていって、下着を買ってくるつもりになっていた。外出するには男から送られた超ミニのワンピースを着るしかないとは諦めていたが、ノーパンではなく男物にせよ下着を着けていられると思うだけで安心感は大分違ってくるのだと思っていた。
10時ちょっと前のバスに乗ることにした京子は超ミニのボディコン姿でバス停に立つ。通勤通学者たちはもう居ない時間帯なので、バスを待っているのは老人たちばかりだ。それでも老人とは言っても男達は剥き出しの太腿に、露骨に垂涎の眼差しを送ってきているのが痛いように感じられる。一方の女性たちは京子の姿をいかにもはしたない格好だという侮蔑の眼差しを放ってきている。京子は針の筵に居る気分を味わいながらバスを待っていた。
やってきたバスは空いていたが、座るのは下着を晒してしまいそうで躊躇われた。最初はバスの中央付近に立っていたが、それはそれで剥き出しの太腿を晒しているだけなので、空いている後ろの方の席の奥に座ることにする。ベンチシートでは座るとずり上がってしまう裾がスカートの奥を覗かせてしまいそうで目立ってしまうのだが、奥の席なら膝の位置が上ってしまうのでかなりきわどい格好になってしまうが、真上から覗かれるのでなければシートが邪魔してスカートの奥を覗かれることはないことに気づいた。自分自身が観て、超ミニの裾にブリーフの下着が丸見えなのが判るが、そこにショルダーバッグを置いて覗かれるのを防ぐことにしたのだった。
駅前のバス停に到着する前に、京子は財布の残金をチェックする。思いの外残金は少なく、既にお札は一枚も無い状態だった。
(ATMで生活費を下しておかなくちゃ・・・。)
そう思った京子だった。生活費は夫の給与振込口座である銀行口座に振り込まれているうちから、必要な額を銀行カードで下しながら生活をしていた。京子はその口座の銀行カードを預かっているだけで、通帳と印鑑は夫が単身赴任先に持っていっていて、夫はその口座か、もうひとつある別の振込口座からキャッシュを引き出して生活しているらしかった。
駅前でバスを降りると、銀行のATMへ行くかデパートで下着を先に買うかで迷って、取り敢えず下着を手に入れて落ち着こうと思い、クレジットカード決済で下着を買いに行くことにする。
その店で下着を買うのは何時もの事だった。適当に選んで数十枚のショーツを籠に何気なく入れてレジへ並んで、クレジットカードを出そうとして京子は蒼くなる。いつもの場所にクレジットカードが見つからなかったのだ。
「次のお客様、どうぞ。」
京子はレジ係に呼ばれてはっとなる。
「あ、あの・・・。済みません。これ、買うつもりだったんですけど、キャンセルして貰えません?」
「えっ? これ、全部ですか。」
「ご、ごめんなさい。」
恥ずかしさに店員の顔を観ることも出来ず、うつむいたままレジから小走りに離れる京子だった。売場から完全に離れてからもう一度財布を取り出して中をチェックする。無くなっていたのはクレジットカードだけではなく、銀行カードも無いのだった。ポイントカードやバスカードなどは全て何時も通りにちゃんと財布に入っているのに、銀行カードとクレジットカードだけ無くなっているのだった。京子は途方に呉れる。
(お金が全然ない・・・。)
京子はパンティ一枚を買うことも出来ないまま、家へ向かうバスに乗る事になったのだった。
帰りのバスの中で京子は少し冷静になって考えてみた。
(なんだか、おかしい・・・。)
それは銀行カードとクレジットカードのことだった。最初にクレジットカードが無いのに気づいた時は財布に戻し忘れたのだと思っていた。しかし銀行カードまで無いのは明らかに変だと思ったのだ。そう思ってみると、財布の中にお札が一枚もなく小銭しか無かったのも変だ。まだ幾らかお札で現金を持っていた筈だと冷静に思い返してみると気づいたのだ。
(泥棒に入られたのでは・・・・。)
その時、公衆トイレの便器に手錠で繋がれて一晩過ごした夜のことを思い出したのだ。
(あの時だわ・・・。)
それまでは公衆トイレに呼び出されてもほんの数十分の事だったので、家に鍵も掛けず、ハンドバッグやポシェットを持たないで済むように財布も携帯も家の鍵も置いて出たのだった。それが思いもかけず一晩中家を空けてしまったのだ。
(他にも何か盗まれたのじゃないだろうか・・・。)
家に金目の物が他に無かったか考えてみる。銀行口座の通帳は夫が単身赴任先に印鑑と一緒に持っていっている。京子は銀行カードだけ持っていて、それでATMから生活費を下して使っていたのだ。夫が銀行口座はいっぱい持たない主義だったので、預金通帳はひとつしかない。そう考えて、意外と家には金目の物は少ないことに気づいた京子だった。しかし、ふっとある事に気づいたのだ。
(そう言えば、あの日、初めて携帯にあの男からショートメールが入ったのだった。それまでは男からの指示はすべて封筒に入れられた紙で玄関のポストに入っていたのだった・・・。ま、まさかあの男の仕業だったのでは?)
そう思いついて更にビデオカメラで撮っていた筈の映像がなく、空のテープが京子の机の上に放置されていたことも思い出す。
(あの男が忍び込んだのだとすると、京子の携帯電話から電話番号を盗みみたり、撮影済みのビデオテープを空のものと摩り替えたりしたというのは充分考えられる・・・、というか、辻褄があってくるのだわ。)
京子は確信した。自分を公衆トイレの便器に繋いだのはあの男の仕業なのだから、その間京子が家には戻れないことを知っていた唯一の人間ということになる。そこまで思いついてはっと気づいたことがあった。
(もしかして、クレジットカードと銀行カードを盗み獲ったのも、お金目当てではなくて、下着を買えなくする為だったのでは・・・。)
家に帰った京子は、無くなったものが他にないか、家中を徹底的に探し回る。内心怖れていた男のペニスを盗撮した写真と最初にビデオカメラで自分が股間を晒しているのを撮ったビデオテープはちゃんと隠した場所にそのままあった。しかし、それはあの男に見つけられなかっただけかもしれないと京子は疑惑を拭い去れないのだった。
京子が男が忍び込んだのかどうか、あれこれ思案していると突然玄関のドアチャイムが鳴った。京子は男からの指示がまた届いたのではないかと、びくりとしながら玄関に向かう。
「宅急便でえすぅ。」
京子が覗き孔から外を窺うと、確かに宅急便の制服を着た男だった。
「今開けます。」
京子は玄関の鍵を解除してドアを開けると、結構大きな段ボールを抱えた男が立っている。
「お荷物の配達です。あ。これ、そこに置いていいですか。」
男は両手が塞がっているので、顎で玄関の上り框の部分を指し示す。
「あ、重たいでしょ。ここへ置いて下さい。」
「あ、ありがとうございます。よいしょっと。えーっと、受取りにサインをお願いします。」
荷物を床に下した後、男は下げ鞄の中から伝票とボールペンを取り出すと京子に手渡す。京子は渡された伝票とボールペンを受け取ると、段ボールの上に紙を置いてサインをする。書き終えて男のほうを見上げた時に男がさっと視線をずらしたのに気づき、(あれっ?)と思った次の瞬間、自分が不用意にしゃがんでいたことに気づいた。さっと手をスカートの裾の先に置いて隠してからすぐに立上る。
男は京子に真っ直ぐ視線を合わそうとしていなかった。
「あ、ありがとうございました。」
男は京子の目を見ないまま伝票を受け取ると玄関を出ていった。
(見られた・・・のだわ。)
京子は男が完全に居なくなったのを気配で確認してから、さっきのようにしゃがんでみる。京子の目から見ても、完全にスカートの奥に下着が丸見えになってしまっている。
(男性用ブリーフだと気づかれてしまったかしら・・・。)
京子に見える限りでは、逆三角形に白い布が丸見えになっているだけで、男性用ブリーフ特有の窓の部分までは確認出来ない。しかし、女性用だと思われたのなら良かったという問題でもない。つくづくはしたないほどに短いワンピースを強要されていることが悔しかった。
段ボールをキッチンのほうまで押して行き、そこでキッチン用鋏を使って梱包を解く。差出人は前回と同じく東京の住所で夫の名前が書いてあった。
段ボールを開いて出てきたのは、食料品の数々だった。その下に更にクリーニング屋のもののような薄手のビニル袋が前回と同じく入っていて、中から出てきたのは女性用の様々な服だった。ワンピース、フレアスカート、プリーツスカート、タイトミニの単品。様々なものがあるのだが、基本的には殆どボトムス系で、皆一様に丈が短いものばかりだった。京子にミニスカート以外を着けさせないという強い意図が感じられた。
その更に下から出てきた黒い布製の袋には京子があまり見慣れないものが入っていた。テレビの保険のCMでオペレータのような女性が着けているマイクとイアホンがセットになってもののようだった。
京子は段ボールの荷物を一通り検めると、超ミニのワンピースで応対したので下着を丸見えにさせてしまったことがショックで、家の中だったら判らないだろうと、いつもの膝下丈のフレアスカートに穿き替えることにした。身を屈めても下着が覗かない格好になって、すこし安心して気分も落ち着いてきた。すこし安らかな気分でいられるかと思ったところで携帯が鳴った。
あの男からだとナンバーですぐに判った。
「宅配便は届いたか?」
いつもながらにメールの文章は簡潔だ。
「届きました」
京子も簡潔に返信する。
「お前が穿いていいスカートは送ったものだけだ。わかっているな。」
京子は着替えたことを見透かされたような気がして思わず辺りを見回すが、男に覗かれている気配はない。
「わかりました。あの食料品はどういう事ですか?」
「調教が終わるまでは、お前を飢え死にさせる訳にはいかないからな。」
(調教? どういう意味だろうか・・・)
「もしかしてクレジットカードと銀行カードを盗んだのはあなたですか?」
「さあね。そんなことより送った中にヘッドセットがあっただろう。」
「マイクとイアホンみたいなやつの事ですか?」
「そうだ。あれをお前の携帯に付けておけ。今後の指示はそれを介して行う。」
「どういう意味ですか?」
「今夜11時から調教の第二段階に入る。準備をしておけ。」
「調教って何ですか。意味がわかりません。」
しかし、それっきり携帯のショートメールでは何も返信はなくなってしまったのだった。
男から送られてきた食材を冷蔵庫などにしまいながら、男が自分のクレジットカードと銀行カードを盗み獲ったのは、現金を持たせないようにして、下着や衣類を勝手に買えないようにする為だったのだと確信する。
夕食を送られてきた食材で採ろうと思案しているところに携帯が急になる。男の指示でヘッドセットを既に取り付けておいたので、それを頭にセットしてから携帯の着信ボタンを押す。
イアホンからくぐもった如何にもボイスチェンジャーを通したらしい声が響いてきた。
「言い付けどおりヘッドセットは付けたんだな。」
「はい。今、それで聴いています。」
「お前の携帯にはカメラ機能が付いているな。」
「ええ、付いています。」
「写メの仕方は知っているだろうな。」
「ええ、わかります。」
「そしたら今すぐに自分の下半身の写真を撮って1分以内に写メを返信しろ。」
そこで電話が切れた。
(下半身の写真・・・?)
少し考えて、すぐに男の意図に気づいた。男が命令していたことを守っているか試しているのだ。慌ててさっき着替えたミニワンピースを捜す。震える手で大急ぎで長いスカートを脱ぎ取るとワンピースを上から羽織り直し、すぐに写メを撮って、映り具合も確認せずに返信に添付する。
すぐに再び着信音が鳴る。
「はい、私です。」
「1分を過ぎていたぞ。言い付けを守っていなかったようだな。着替えていたのだろう。」
「あ、あの・・・。ち、違うんです。最近、写メとか撮ってなかったので、やり方を忘れていて・・・。」
「見え透いた嘘は吐くな。今晩罰を与えるから覚悟しておけ。」
そこで電話が切れてしまった。
(しまった。家の中だから言い付けどおりの格好をしていなくてもばれる筈はないと油断していた。罰を与えるって、どういう意味なのだろう・・・?)
更に不安が広がる京子だった。
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