お出掛け2

妄想小説

覗き妻が受ける罰



 第六章


 京子に課せられた夜の辱めを確認に来なかったらしいことに少し安堵して、京子は久々に買い物に出ることにした。この数日間というもの、男から脅迫に昼間でも外に出ることを躊躇っていたのだった。スーパーは家から歩いて10分程度の所にあるので、京子はいつも買い物籠を下げて歩いていくのだった。
 家を出て角を曲がって、暫くいくと歩道橋に出て、それを使って幹線道路を渡るとそこにスーパーがあるのだった。その角を曲がった瞬間だった。
 「あっ。」
 咄嗟の事に思わず声を挙げてしまったのだった。角の向こうから現れたのは、まさに京子がこっそり放尿シーンを盗撮したあの男だったのだ。
 「あの、何か・・・?」
 突然吃驚したような声を出されて、自分の事だと気づいたようだった。
 「あ、いえ。何でもないんです。知ってる人に似てるように思ったものですので。し、失礼しました。」
 そう言うと、顔を俯かせて小走りに横を擦り抜けていく。後ろで男が不審そうに京子の後姿を見送っているような気がしたが、わざと振り返らないようにする。京子は急ぎ足で通り抜けた場所は工事現場の資材置き場になっていた。あの男と同じ様な作業着の男達が数人資材を運んでトラックに積む作業をしていた。あの男もここでいつも働いているのに違いないと京子は推測する。あまりの突然の出現だったので、動揺してしまったが、あの男に変だと思われてしまわなかったかと心配になる。
 (大丈夫。気づかれている筈はないのだから・・・。)
 そう京子は自分に言い聞かせるとスーパーへ急ぐのだった。

 スーパーから買物をして戻ってくると、家の玄関の郵便受けにまた何やら差し込まれているのが遠目にもわかった。辺りを見回し、誰も居ないのを確認してから急いで、玄関に走り寄り、封筒を抜き取ってから家に入る。
 嫌な予感がして手が震える。
 台所においてあるペーパーナイフで封を開けるとおそるおそる中から紙を引っ張り出す。以前に来たものと同じくデジカメで撮った写真を印刷したものだった。黒いワンピースを着た女がスカートの前を捲り上げている。顔は下半分までしか写っていないが、トリミングでわざとそこで切ったのに違いなかった。膝小僧の上辺りま下着が下されている事で露わにされた股間は無毛であることがはっきり観て取れる。
 (やはりあの時、撮られていたのだ・・・。こんなものがばら撒かれたら生きてはいけない。)
 京子はがっくりと肩を落とすように椅子に崩れ込んだ。
 ふと紙の裏に何かが書かれているのが目に入る。
 (今夜、もう一度11時きっかりにあの場所へ行くこと。指示はそこへ行けば判る。)
 パソコンのワープロで書かれたものだった。どんな指示を受けるのかは判らないが、嫌なことがいろいろ想像される。
 (無毛の股間を晒すだけでは今度は済まないのだろう。しかし、このうえ、どんな酷いことをさせようというのだろう・・・。)
 京子はいろいろ思いを巡らすが、何も思いつかない。しかし、考えても無駄なのだと直に気付いた。そんな事よりは何か対策を考えなくてはならない。
 (そうだ。今度こそ男の姿をビデオに撮るのだわ。あそこへ行けば指示が判るというのだから、事前に何かの指示を紙に書いて貼っておくに違いない。)
 ビデオカメラの撮影可能時間は最長で2時間だった。京子は指定された11時の1時間前からビデオカメラを録画状態にしておくことを考えた。それまでに何も貼り出されていなければ、男がやってくる所を撮影できるに違いないと考えたのだ。

 京子は階段上の窓を少しだけ開いて暮れてくる頃から何度もちらっとだけ公園のトイレの方を覗いては何も細工されていないことを確認して10時が来るのを待った。10時になった所でビデオカメラを公園の男子トイレの方向に固定して録画を開始した。そこまで準備すると、もう怪しまれるといけないと思い、二階の窓には近づかないようにする。
 着ていく服は迷ったが、どうせ何を着て行っても脱ぐように指示されれば同じ事と思い、これまでと同じ黒いワンピースにする。ストッキングも以前の指示通りに着けないで生脚にして、白いショーツにすることにした。以前に撮られたものと同じであれば、文句はないだろうと考えたのだ。

 11時5分前に京子は家を出た。何時も通り家の鍵は掛けない。バッグなどは持ちたくなかったからだ。どうせすぐに家に戻ってこれる。どんな格好をさせられるか判らないので、出来るだけ身軽で居たかったのだ。携帯も持って出ないことにする。
 時間を指定されるといけないので、いつものキッチンタイマだけは腰のベルトからぶら下げることにした。夜に紛れて公園の端に立つ。一本だけある街燈の傍と常夜灯の点いているトイレだけが闇のなかにぼおっと浮き上がって見える。公園の端からそっとトイレのほうを窺うと、掃除用具入れの扉に何やら貼ってあるらしいのが見える。10時前には無かったのを確認しているので、自分を脅迫している男の姿がビデオカメラに映った筈だと確信する。
 ゆっくりトイレに近づいていくと、掃除用具入れの扉に貼られた紙の他に何やら光るものがあるのに気づいた。男子トイレのアサガオの上辺りだ。すぐ傍まで来て、京子は愕然とする。光って見えていたものは何と手錠だった。片方がアサガオの上の水道管に嵌められていて、もう片側は開いたまま、便器の前にぶら下げられているのだ。
 (ま、まさか・・・。)
 京子の嫌な予感は的中した。紙に記された命令を読んでいくうちに京子は戦慄を憶えた。
 (便器にぶら下げてあるものを右手に嵌めてきっちり手首ぎりぎりまですぼめる事。嵌めたら外に向かって右手を上に挙げて嵌っているか見えるように翳す事。そこまでしたら、そこに用意してあるペットボトルの中身を全部呑み干す事。そこまでしたら手錠を外しにくるのを待っていろ。)
 夜の男子トイレの便器に手錠で繋がれるのだと知って、京子は思わず尻込みする。しかし、昼間受け取った紙に印刷されていたものを思い出すと、男に逆らえばどんな酷い目に遭うかそれも怖ろしかった。今は言われるままにするしかないのだと悟る。一つ京子にチャンスがあるのは、男が手錠を外しに来るということが男の姿を目にすることが出来るということだった。京子は男の姿を目にするという目的の為に、男の命令に従うことにする。
 手錠は初めて目にするものだった。本物なのかイミテーションなのかは判らない。しかし嵌めてしまえば、そう簡単には外せそうもないように思われた。他に方法はないのだと自分に言い聞かせて便器の前の手錠の片側を手に取ると左手で右の手首に嵌める。それからトイレの外側に向けて手を翳してみせる。嵌めたように取り繕うのは無理そうだった。男は暗闇の何処かに潜んでいて、こちらの様子を窺っているに違いないと京子は判断した。
 手錠を掛けてしまうと命令に書いてあったペットボトルを手に取る。捜すまでもなく、便器の前の棚みたいなところにそれは置かれていた。500MLのボトルは外側のラベルが剥されていて、透明の液体が入っていることしか判らない。何が入っているのか不気味だが、毒を呑まされることはないだろうと思った。何時までも呑み干さなければ、何時までも解放されないことも判っていた。早く解放されたい一心で、京子は一気にそれを呑み干すことにする。さすがに500MLを一気に飲み干すのは苦しかった。しかし急いで呑むことで誠意を示そうと思ったのだった。
 やっとの事で呑み終えて、カラになったペットボトルをトイレの外に向けて翳して見せる。しかし暗闇の中からは何の反応も返ってこなかった。

 腕時計はしてこなかったが、腰にぶら下げたキッチンタイマには時計が付いているので京子は自分が手錠で繋がれてからの時間は知る事が出来た。30分が経過しても男が現れる気配は全くなかった。ちょうど30分が過ぎた頃に京子は変調を感じ取っていた。何となく身体の奥でむずむずするような感じがあったのが、30分が経過する頃には尿意であるのをはっきり悟ったのだ。しかもそれはどんどん強くなってきていた。その時初めて男の悪意を理解したのだった。
 (あのペットボトルの水は利尿剤が仕込んであったのだわ。私にここで放尿させるつもりなのね。)
 そう理解して外の暗闇をもう一度見渡したところで、公園の中央付近にある柘植の植込みの奥に何やら赤く光るものがあるのを発見したのだった。
 (何かしら。あの赤く光っているものは・・・。)
 暫く考えていて、そんな赤い光をつい最近何処かで観た憶えがあるのに気づいた。そしてそれが何であるかに思い当たって、京子ははっとなる。
 (そうだ。ビデオカメラの録音中を示すLEDランプだわ。私が仕掛けたビデオカメラにも確か付いていた筈・・・。)
 そこまで思い当たって京子は、男の意図をはっきりと理解した。尿意が我慢出来なくなって、男性用便器に立ったまま放尿する姿をビデオカメラで撮影しようとしているのだと気づいたのだった。片腕を便器に繋がれたままでは個室に逃げることが出来る筈もない。そうなると男のようにアサガオに向かって放尿するしかない。スカートを捲ってパンティを下して膝を折って便器に向かって小用を足すのだ。そんな恥ずかしい格好を強要されるのだとは思ってもみなかった。しかもその無様な姿を撮影されようとしているのだ。

 ペットボトルの水の中に仕込まれていた利尿剤は相当強力なものらしかった。尿意を憶え始めてから、我慢の限界に達するのはあっと言う間だった。脚をくの字に曲げ、身体を震わせ腰を振って耐え忍んでいたが、それ以上は無理だった。
 京子はカメラにどんな姿が映されるのか考えないようにして、スカートの中に手を入れてショーツを抜き取ると、スカートを片手でたくし上げて男性用便器を中腰で跨いだ。すぐに激しい迸りが股間から流れだし、その勢いの強さに便器に当たって跳ね返って京子の太腿も濡らした。しかし、それでもそのまま放尿し続けるしか京子には出来なかったのだ。

 最後の雫が垂れた後も、残尿感が残っていた。ティッシュで股間を拭いたいのだが、個室にある筈のペーパーには手が届きそうもなかった。尿が跳ねた内股も拭いたかったが、それに使えそうなものは、京子が穿いてきた白いショーツしかない。尿意はまたすぐにもやってきそうだった。それでもうショーツを穿き直すのは諦めて辛うじて手が届きそうな手洗いの自動水洗に左手に持ったショーツを伸ばして水に浸し、それで股間と内股を拭うことにした。その一切がビデオカメラに捉えられていることはもう京子の意識には無かったのだった。

 三度目の放尿を終えた時には1時間近くが経過していた筈だった。その頃には、京子は尿意だけではなく、妙に睡魔が襲ってきていることに気づいていた。ここで寝てしまっては肝心の男の姿を目にするというチャンスを逸してしまう惧れがあった。起きていなくてはと思うのだが、ときどきふらっと睡魔に襲われて寝込んでしまいそうになるのだった。京子はその時に男がペットボトルの水に混ぜ込んでいたのが利尿剤だけではなく、睡眠薬も含まれていたことに気づいていなかった。
 (ああ、駄目っ。起きていなくては。でも眠い。どうしてこんなに眠いのだろう。)
 何度もガクッと首を落としながらも睡魔と闘っていた京子だったが、遂に右手を便器の水道管に繋がれたまま便器に身を持たせかけるようにして寝入ってしまったのだった。

tbc



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