覗き妻

妄想小説

覗き妻が受ける罰



 第一章


 「あ、またあの男だわ・・・。」
 京子にはそろそろまたやって来る頃ではないかという予感があったのだ。自然と夫の部屋へ急いでしまう。
 (いけない。もうやめなくては・・・。)
 心の中ではそう思いながらも自分を律することが出来ない。
 夫の書斎へ入ると書棚の奥にしまってある双眼鏡を持出し、廊下の端の階段の降り口にある窓を薄めにそっと開ける。窓の外には小さな公園が広がっている。近所のママたちが幼児を遊ばせる公園だ。京子の家は玄関からは裏側になる東側の壁がこの公園に接している。階段を上がって二階の廊下に出ると、この窓からは公園が見下ろせるようになっているのだ。
 男が公園の一番向こうにある公衆トイレへまっすぐに向かっているのが見える。左側の女子トイレはいつも扉が閉ざされているのだが、男子用は閉める扉がなく、二つ並んだ小用の便器が京子の居る位置からだと殆ど丸見えなのだ。
 男が便器の前に立つ。ズボンのチャックをいじっているのが判る。やがて男は腰を少し落とすようにして便器に向かって放尿を始める。男が身体を一瞬上下に揺するようなしぐさをする。
 (今だわ。)
 京子が双眼鏡を両眼に当て、ピントを合わせる。
 その男の癖なのだろう。放尿を終えて性器をズボンの中にしまう前にうしろに下がりながらトイレの外のほうを向いてしまうのだ。
 ゴクん。
 京子は自分の喉が鳴ったのが聞こえた気がした。
 勃起はしてない筈なのに、かなり大き目の肉棒が一瞬だけ見え、すぐにズボンの中に隠された。
 (やっぱり夫のモノより確実に大きい・・・。)
 双眼鏡を眼から外して一歩後ろに下がる。スカートの前に下された京子の右手は、二本の指で恥丘のすぐ上辺りを抑えていた。

 最初にその光景を目にしたのは全くの偶然だった。そろそろ花粉の飛散も終わろうかという春先から初夏にかけての頃、天気がいいと部屋の中がムッとしてくるので、空気の入れ替えをしようと二階の廊下の端の窓を開けた時だった。京子の視界に公園内のトイレに近づいていく一人の男の姿が見えたのだった。ちょうどお昼どきなので、子供を遊ばせる母親や子供の姿は無かった。おそらくは近所の工事現場で働く男たちのひとりで、お昼休みになって弁当の前に用を足しておこうとやってきた男に違いなかった。
 見てはいけないものを見てしまった気がして、すぐに窓をしめなくちゃと思いながら、何故か京子は動けなかった。向こうから判らないように一歩後ろへ下がるが、男の姿はまだ見えている。やがて男性用便器の前に男が立つと放尿を始める。
 (窓を閉めなくては・・・)そう思うのだが、京子は動けないでいる。
 放尿を終えた男はまだ性器をしまい終えていないのにこちらに振向いたのだ。その時、初めてその男のモノを目にしてしまったのだった。がっしりとした身体つきだが、まだ若そうな男だった。その男のモノは遠目にも大きく、太く見えた。放尿を終えたばかりで勃起している筈もないのに、見た事もない大きさだった。その姿が京子の目に焼き付けられてしまったのだ。

 その男は京子の真正面に立って、京子を見据えていた。恥ずかしさに顔を覆いたいのだが、両手の自由が利かない。背中で両手首を縛られているのだ。
 「ど、どうして私を縛るの?」
 「ふふふ・・・。自分でもわかってる筈だ。罰を受ける為だ。」
 「どうして、私が罰を受けなければならないの?」
 「まだとぼける気か。覗いていただろ、俺の事。」
 「えっ、し、知らない・・・。」
 「知らない筈はないだろ。さ、見覚えのあるこいつを見せてやれば思い出すだろう。」
 男はそう言うと、京子の目の前でズボンのチャックを下し始めた。
 「嫌っ、何するつもり・・・。」
 「ほらっ。こいつが見たかったんだろ。よく見るんだ。」
 男がズボンのチャックから取り出した肉棒はまだ硬さを伴っていないが、充分に大きかった。男は更に一歩、京子に近づいてくる。
 「こ、来ないでっ・・・。」
 「何を言ってるんだ。来て欲しいくせに。そらっ、こいつを生身で感じてみろ。」
 男が下半身を京子の身体に押し当ててくる。スカートを通してだが、男のモノがどんどん硬くなってくるのを京子は感じとっていた。
 「嫌っ。駄目よ、そんな事しては・・・。」
 「もっとはっきり感じられるように、今スカートを捲ってやるよ。」 
 「そ、そんな・・・。あっ、駄目っ・・・。捲らないで。」
 しかし、京子の願いも虚しくどんどんスカートが捲られていく。両手を縛られている京子にはどうする事も出来ない。裾がすっかりたくし上げられると太腿の内側に生身の肉塊をはっきり感じる。その先はうっすらと濡れているようにも思える。
 「ほらっ。擦ってやるよ。どうだ、気持ちいいだろ。」
 「ああ、駄目よ。そんな事、されたら・・・。ああ、どうかなってしまいそう・・・。」
 その時、突然自分が自分の股間を激しくまさぐっていたことに京子は気づく。
 (えっ、どうして・・・。えっ・・・。ゆ、夢・・・だったの・・・。)

 京子はその日の午後、ついうとうとして見てしまった白昼夢の中で、下着を汚してしまっていた。そのままにしておけなくて、すぐに着替えて洗面所で汚れたパンティを手洗いする。薄手の下着なので、夕方でもすぐ乾くだろうと二階のベランダに干しに出た京子は、はっとして物陰にさっと身を隠す。
 ベランダから斜め階下に見える公園の中を、今しもあの男が横切っているところだったのだ。よくよく考えてみて、ベランダにパンティだけ一枚干すのは、もし誰かに見られたらとても恥ずかしい事だと気づいた。パンティを持って屋内に戻ると、次の日に他の物と一緒に洗い直す事にして洗濯機の中に放り込んでおく。


 京子は目下のところ、自宅に独り住まいだ。夫は居るのだが、一年前から単身赴任になって遠くに棲んでいる。最初の頃は週に一度は週末に戻ってきていたのだが、半年ほど前から段々戻らない週が多くなってきて、このところは月に一度すら戻っていない。夫に言わせると帰任手当が充分出ないので勿体ないのだとの事なのだが、京子はそれだけではない気がしていた。
 京子が一人で住む家は、結婚してすぐの頃、夫が無理して建売を購入したものだ。その場所は新興住宅地として開発されたばかりのところで、元は何もない葦の野原だったところらしかった。そこへ道路を通し、十軒ほどの住宅がまず出来て少しずつ宅地が増えてきて川沿いの場所に公園も作られた。京子たちが購入した区画はその公園に面していて、家は最初に建ったもののうちの一軒だった。なかなか買い手がつかず、値下がりしたところを夫がみつけてきて、ローンがちょっと苦しかったが思い切って購入したのだった。しかし、購入して半年も経たないうちに夫の単身赴任が決まったのだった。

 京子は夫、和樹よりひとつ年上だった。京子は晩生なほうで、和樹が実は初めての男だった。しかし年下の和樹のほうは、はっきり聞かされた訳ではないが、既に何人とも交際していた風だった。結婚前に和樹が身体を求めてきた時は、京子は結婚まで待ってくれと拒んでいた。そう親から教えられて育ってきたのだった。実際、和樹に身体を許したのは、結婚一週間前のラブホテルでだった。どうしても今夜一緒になりたいとせがまれて、つい身体を許してしまったのだ。しかし、その一夜で目覚めてしまったのは京子の方だった。さすがに結婚式前に京子のほうから誘う訳にはゆかなかった。それとなく誘う風を装ったのだが、和樹は性には淡泊だったようで、その後は一向に求めてこなかった。結婚までの一週間に京子は自慰というものを憶えてしまっていた。
 結婚した後も営みは無かった訳ではなかったが、日に日に間隔は開いてゆき、ベッドで隣に眠る夫の横で自分を慰める訳にもゆかず、結婚後寿退社して昼間家に居るようになってから、昼下がりにこっそり自慰に耽ることが多くなっていったのだった。そんな日々を経ての夫の単身赴任は、昼間の京子の渇望感を更に煽っていったのだ。

tbc



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