放尿待ち

妄想小説

覗き妻が受ける罰



 第二十二章


 次の日は一日中、京子の頭からはあの男の事が一時も離れなかった。あそこまでの失態を演じてしまったからには、もう全てを曝け出してしまわなければと、居ても立ってもいられなかったのだ。
 昼になるのが待ちきれなかった京子は公園の隅でずっと男がやってくるのを待っていた。そして何時もの時間にやってきて、男子トイレに入るのを観た京子は逸る心を抑えきれずに近づいていったのだった。
 男はアサガオに向かって放尿している。京子にはその背中しか見えない筈なのに、男がズボンから取り出している男根がはっきり見えている気がするのだった。男がし終えて軽く身体を揺すってから振向いた瞬間に、目と目が合うと魔法にかけられたかのように京子の身体が固まってしまったかのように感じる。
 「あの・・・。お話したいことがあるんです。今夜、私の家に来て頂けませんか。」
 京子には自分の唇が動いて、声が出せたのさえ不思議に感じられた。男は返事は返さなかったものの、軽く頷いたように京子には見えた。それ以上の言葉を聞くのが怖ろしく感じた京子はさっと踵を返すと一目散に公園から離れたのだった。

 ピン・ポーン。
 玄関のチャイムが鳴った時には、既に京子はドアの前に待機していた。
 「入って・・・、ください。」
 京子は男を招じ入れると、先に立っていつも食事を採るのに使っているダイニングテーブルの椅子を指し示し、自分もその真正面に座る。
 「実は・・・告白しなければならないことがあります。・・・・。私・・・、あの・・・。あなたが公園のトイレに行く時、いつも覗いていたんです。あなたの・・・、あなたのペニスを盗み見る為です。それだけじゃありません。あなたのそのペニスを望遠レンズで写真まで撮りました。」
 何度も胸の中で練習していた言葉を一気にまくしたてた。男の驚く顔を予想していた京子は、男が意外なほど落ち着いているのを見て、却って京子のほうが吃驚してしまっていた。
 「知ってました。その写真も見たのです。」
 「えっ?・・・。」
 京子には何が何だかわからなくなった。男はゆっくりと口を開いて訥々と語り始めた。
 「ある日、突然男の人に声を掛けられたのです。名前は知りませんが便宜上S氏と呼ばせてください。そのS氏は私のペニスが映っている写真を見せてくれたのです。そう、あの公園のトイレで撮られたものです。あ、私は明夫といいます。」
 明夫はS氏から、お前のペニスに夢中になっている若妻が居ると教えてくれ、その証拠がこれだと写真を見せてくれたのだと語った。写真が撮られた角度からすぐに公園の向かいにある家の二階から撮られたものだと気づいたと言う。
 「S氏はあなたが私の気を惹こうとしていると教えてくれました。あの時、オレンジを袋から溢して拾おうとしている時に、スカートの中を覗かせていましたよね。あの時は半信半疑でした。でも公園で二度目に鍵を落としたと言って膝を開いてしゃがんでいた時に確信したのです。」
 (えっ、それは違うの・・・。)
 そう言おうとした言葉を京子は呑み込んだ。
 「S氏は昨日の夕方、あの若妻の本心を確かめたかったら公園でこの家の軒下辺りで待っているようにと言ったのです。それで訳もわからずその場所でじっと待っていたら、あなたが二階のベランダにやってきて鍵を落とすのを観たのです。それで、それが合図なのだと判ったのです。」
 「そ、それじゃあ・・・。もしかして最初から手錠の鍵だと知っていたの?」
 「そんな気はしていました。S氏はあなたがマゾっぽい性格をしていると話していましたから。それを確かめてみるつもりもあったのです。」
 京子は男の口から(マゾ)という言葉が出たので、自分から白状しようとしていた話の最後の部分を先に言ってしまうことにした。
 「私・・・。あなたにお願いがあるのです。・・・。私を・・・、私をあなたの性の奴隷にして欲しいのです。私には夫が居ます。離婚を切り出しても多分承服してくれないと思います。だから・・・。だから、私に出来るのはあなたの奴隷になることしかないのです。昨日、はっきり判ったのです。私に歓びがあるとしたら、貴方に・・・。あなたに犯して貰うことしかありません。」
 京子の告白を聞いて、明夫は唖然としている風にしかみえなかった。しかし、それは京子の言葉があまりに突飛な話だったからではなかったのだ。
 「びっくりしました。何故って、私のほうが貴方に私の奴隷になってくれるようにお願いするつもりでした。S氏がそう言ったんです。あなたが私の性の奴隷になりたがっていると。それでこれを書いてきたんです。」
 明夫はそう言って一枚の紙をポケットから取り出して京子に差し出したのだ。
 (誓約書。私、長谷川京子は貴方様、山岡明夫の性の奴隷となることを誓います。但し、期限は一年間とします。)紙にはそう書いてあった。
 「S氏からはもう一枚、預かってきたものがあります。これです。」
 明夫がそう言うと更にもう一枚の紙切れをポケットから取り出す。
 「こ、これは・・・。」
 それは既に夫が署名、捺印した離婚届なのだった。勿論、京子の欄はまだ空欄になっている。
 「それはS氏があなたの夫、和樹さんの単身赴任先に行って書かせたものです。S氏はあなたに依頼された弁護士を装って、貴方の夫、和樹さんの不倫現場に踏み込んで問い詰め、最後に離婚を承諾させたそうです。この家の権利も放棄して慰謝料としてあなたに贈与するという証文も取り付けたそうです。」
 京子には寝耳に水の話だった。
 「性の奴隷となる期間が一年間なのは、その期間が終了した後は私の妻となるからです。」
 「えっ・・・、わ、わたしが・・・。」
 「駄目でしょうか?」
 京子はすくっと立上ると、キッチンの食器棚の抽斗から予め用意しておいたものを取り出して明夫の前に置く。
 「あなたが来たら使おうと用意しておいたものです。それが答えです。それで私を縛ってください。」
 用意していた荒縄を明夫のほうへ押しやると、黙って明夫に背を向け、両手を背中で重ねる京子なのだった。
 明夫に両手首に荒縄を巻かれながら、京子はどうしても聞いてみたかった言葉を口にする。
 「S氏というのは、どうしてこんな事を私にしてくれたのでしょうか?」
 「さあ、わたしにもよく判りません。ただ、こう話してくれたことがあります。S氏は性に囚われた女性を解放するのが仕事なんだと。それがどういう意味なのかはわたしにはよくわからないのですが。」
 (性の解放・・・。わたしは解放されたのだろうか。)
 京子は縛られていく快感に打ち震えながら、その言葉を胸の中で反芻していたのだった。

被縛請い2

 完

tbc


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