妄想小説
覗き妻が受ける罰
第十三章
翌朝遅くに目覚めた京子はすぐに起き上がることが出来なかった。毛布の下は全裸だった。自分の尿にまみれた身体をシャワーで洗い流した後、もう新たに着る物を捜す気力もないまま、全裸のまま毛布を被ってベッドに潜り込んだのだった。
目が醒めた後も、前夜の事を回想していた。全てが夢の中の出来事のように思われた。現実の事とは信じたくなかったのだ。昨夜、自分がやっとのことで鎖で繋がれていた便器から解かれ、頭に被せられていた布袋を振り落して、ようやく男子トイレから逃げ出してきた時の自分の格好を思い返す。丁字帯の股間部分を外す鍵は自分が洩らした小水の中から拾い上げたものの、手錠で後ろ手に拘束されたままの為なので、手錠の鍵を置いて来た家の戻るまでは自分では外すことが出来ないのだった。その丁字帯には誰にも見られたくない疑似ペニスが恥ずかしげもなく勃起した時の形で生えているのだ。そればかりか、その丁字帯には内側にも疑似ペニスが装着されていて、それが京子の陰唇に深々と挿入されたままなのだった。痺れるようなむず痒さが常に股間にあって、そのせいなのか、陰唇からはぬるっとした自分自身の体液が洩れ出ているようで、その滑りで身体を動かすとその疑似ペニスが陰唇の中で動き回るのだった。
京子は誰にも出遭わないことを願いながら、小走りで家を目指した。公園が見えてきたところで自分が括り付けられていた樹の脇にベアトップのミニワンピースが落ちているのを見つけて、後ろ手で拾い上げた。京子がやっと大きな溜め息を洩らして一息吐けたのは、後ろ手で家の鍵を開け、玄関の内側にやっと滑り込んだ時だった。
京子はベッド脇の置時計に目をやる。既に10時を過ぎていた。ずっと寝ている訳にもゆかないと思い、立上る。毛布の下の身体には何も身に着けていなかった。ベッド脇には昨日の昼間に身に着けていたデニムのミニスカートとポロシャツが畳んで置いたままになっていた。取りあえずそれに手を伸ばす。下着はと考えて、1枚は洗濯機の中に入れたままで干してない。昨夜穿いていたほうは小水まみれのまま玄関で脱ぎ捨てたままだったことを思い出す。取りあえずノーパンの腰にデニムのミニスカートを着け、ブラジャーをする気にもなれず、ノーブラのままポロシャツを羽織る。
階下に降りると、玄関先に帰ってすぐ脱ぎ捨てたらしい革の拘束具と共に、ずぶ濡れのブリーフを見つける。そのブリーフを指の先で抓むと、一度洗濯機に掛けたまま干してなかったブリーフと入れ替えすぐに洗濯機を回す。ベアトップのミニワンピは、埃だけ払って洋服掛けに掛けておく。革の拘束具は洗う訳にはゆかないので、自分の部屋に持って帰ってアルコールを付けた脱脂綿で丁寧に拭うことにした。
アルコールで拭き終えた丁字帯を京子は改めて仔細に調べてみる。股にあたる部分の革の両側にクロムメッキを施された銀色に光る疑似ペニスは、まさしくペニスそのものの形を模っている。その棹の部分に人差し指と親指で挟むようにしてくびれた部分を掴んでみると指の先がかろうじて付くかどうかというぐらい太い。京子は夫の勃起した時のペニスを思い返してみて、こんなに太くはなかったような気がしていた。こんな太いものが昨夜は自分の股間に深々と刺さっていたのだと思うと、信じられない気がした。元々は取り外されていたことを思い出し、棹の部分をしっかり掴んで力を入れて回してみると、疑似ペニスは回転してネジ部が緩んできた。根元に螺子が切ってあって、3周ほど回すとそれはベルトからするりと外れた。ベルトの外側の疑似ペニスも同じ様に回転させると外す事が出来ることが分かった。京子は誰かに見つかることを怖れて、革の丁字帯と疑似ペニス、二本を丁寧にバスタオルで包んでクロゼットの奥にしまう。胸に当てられていた革ベルトで出来たブラジャーのようなものは、小水まみれにはなっていなかったので、軽く拭くだけで、同じ様な革製の手枷と一緒に別のタオルで包んでこれもクロゼットの奥にしまっておく。
気づくと階下の洗濯機が止まっていた。それで京子は一計を案じて洗濯物干しのハンガーに内側にブリーフ二枚を吊るし、外側をすでに洗濯済みの乾いたタオルを干してブリーフを見えなくして二階のベランダに干しておくことにする。
外はすっかり明るくなっていた。明るいうちなら誰かに襲われたりすることもないだろうと思い、気になっていた自分が放置されていた場所を確認に行くことにする。身に着けるものは男から与えられたミニスカートしかなかった。しかもその下はノーパンなのだった。それでもその格好で外に出るしかないと京子は自分を奮い立たせた。
家の玄関からちょっと遠回りをして家のすぐ裏にあたる公園の脇を通り抜ける。川沿いに上流に向かって歩くと、すぐに嘗て自分が吊るされた大きな樹のところに出る。あの夜はここを通り過ぎた筈だった。暫く行くと広い国道が川を渡っている橋に出て、そこからまた国道を外れて細い路地にそって川沿いにゆくと、大きなグランドに出たのだった。京子自身は、そこにそんなグランドがあったことにも気づいていなかった。おそらく休日には少年たちが少年野球やサッカーなどに興じてにぎやかな場所なのだろう。しかしその日は平日のせいか、誰も居ない風で閑散としている。グランドは外側をぐるりと巡る道路と敷地内を車止めの鉄柱とそれを繋ぐ鎖とで区切られている。鎖はそれほどの高さではなかったので、ミニスカートで跨ぐのはちょっと恥ずかしかったが越えられない高さではなかった。敷地内に入ってみると、地面はタイルのようなもので敷き詰められていて、外部の道路のアスファルトとは明らかに足音が変るのが判った。
(やはりここだったのだわ・・・。)
京子は自分が鎖で牽かれて連れ込まれた時に足音が途中から変わったのを思い出していた。グランドは観戦席があるようで、ちょっと高い塀のようになって続いている。その塀沿いに歩いていくと、観戦席の裏側に設置されている公衆便所に出た。男性用と女性用が並んでいる。女性用は扉が閉まっていたが、男性用は開いていて開放されている。あたりに人影はなかったが、堂々と京子が入って行ける場所ではない。素知らぬ振りをしながら壁沿いにゆっくり歩き、男性用トイレを通り過ぎる際にちらっと中の様子を見てみる。
(やはりここに間違いない。)
京子は自分が繋がれていた男性便器とその姿を映していた鏡を確認してみたかったが、そこまでする勇気はなかった。京子が通り過ぎようとしていたその時に中から声が聞こえたのだった。
「まったくしょうがないなあ。床にションベンを垂らしたままにした奴がいるらしい。さっきモップで拭き取ったけど、どういう神経してるのかなあ。」
「やっぱり夜は開放したままにしないで、鍵を掛けておいたほうがいいのかもしれないなあ。俺たち掃除をする者の身にもなって欲しいよな。」
グランドの便所掃除に雇われている職員か業者の者たちらしかった。
(ち、違うのよ。したくてしたんじゃないのよ。そう、させられたの。そうするしかなかったの・・・。)
そう叫び出したいのを喉元でぐっとこらえた京子だった。しかし、男達がトイレから出てくる気配を感じて、京子は慌ててトイレの出入り口から離れる。
「こんな事してる奴を見つけたら、絶対許さないからな。」
「おお、そうだよな。」
京子が気づかれないようにさり気なく振り返ると、今しも二人の清掃業者の服装の老人が二人で出てくるところだった。
京子はグランドを後にして我が家に戻ってきた時、玄関の傍に誰か居るのが遠目に見えた。家の前の道路に停まっているトラックの壁面の柄から宅配便の車であることが分かる。京子は玄関へ足を速める。玄関からトラックのほうへ荷物を持ったまま戻ろうとする運転手に京子は走り寄りながら声を掛ける。
「運転手さ~ん、待ってくださあい。」
走り寄る京子の姿を認めて運転手は足を止めた。
「ああ、よかった。留守かと思って出直すところでした。」
受取票にサインをして段ボール箱を二つ、受け取ってから家の中に入る。嫌な予感は否めない。玄関の鍵をきっちり掛けてから段ボールをキッチンのテーブルの上に置いて、鋏みを段ボールの梱包に入れる。
中から出てきたのは、奇妙なコスプレの衣装と小さなガラスの小瓶だった。コスプレのほうは、殆ど仮面と言うのか、むしろ頭巾に近いものだった。薄い黒の革を縫い合わせて作ってあるようで、顔の上半分と頭全体を覆うようなもので、目に当たる部分がくり抜かれている。頭の両側に角のように尖った突起がある。京子はどこかでこんなものを観た気がした。
(バットマン・・・?)
頭巾の下部分は短いケープ上のものがついていて、その裏側には分厚い革のベルトが付いている。ちょうどそれを被ると内側で首輪のように嵌める形になっている。しかもその首輪には小さな錠前の付いた鍵まで用意されているのだった。
コスプレ衣装のもうひとつは肩から掛けるマントのようだった。黒い布で出来ていて、内張りは深紅のシルクが張られている。丈はそれほど長くなく、肩から纏うとお尻が隠れるかどうかぐらいの長さしかない。
もうひとつ入っていた小瓶は白い乳濁色のどろっとした液体が中に入っているようだった。更には紙切れが一枚添えられてた。
(今夜、11時に連絡するので、携帯を持って待っていろ。その時にこれまでお前に渡している様々な道具も全部目の前に用意しておけ)
ただ、それだけが書かれている。
京子はもう一つ受け取った少し小さ目の方の段ボールも開けてみる。段ボール自体も小さ目だったのに、持ってみた箱自身もかなり軽かった。その箱を開けて出てきたのは、ビニル袋に入った白っぽい薄っぺらな袋一つきりだった。京子が裏返して中身を改めると、袋にはペーパーショーツとカタカナで商品名が記されている。
(ペーパーショーツ? 何かしら・・・。)
不審に思いながらビニル袋を開けてみて、白っぽく見えたのが女性用の下着であることに初めて気づいたのだった。
(ペーパーショーツって・・・。)
京子はその時初めて、送られてきたものが紙製の下着であることに気づいたのだった。旅行に行った時や、災害時にコンビニで紙製の下着が売られているというのを聞いたことはあったが、実物を見るのはその時が初めてだった。中身に触ってみると、布製のように伸縮性があるのが判る。一見、みた感じでは紙で出来ているとは思えないような触り心地だった。しかし、その時ふと京子の脳裏に嫌な予感が再び走ったのだった。
(ま、まさか・・・。)
慌てて二階に駆け上がりベランダに出てみる。そこにはさっき干して置いた洗濯ハンガーがまだ下がっている。四方にダミーのタオルが干してある。震える手でそのタオルをめくってみると、そこにある筈の干して置いたブリーフ二枚が無くなっているのだった。
京子は、再び送られてきた宅配の段ボール箱のほうへ戻る。ビニル袋に梱包された紙のショーツを再び取り出してみる。
(とにかく、私が穿くために送ってきたものには違いないのだわ。)
そう思い返すと片足ずつ足を通して膝の上へ引き上げる。穿き心地は布製のショーツと殆ど変りはない。ただ、紙製の使い捨てなのだというのが、ちょっと不安な感じを拭いきれない。
(何時までこの一枚のショーツで過ごさせるつもりなのだろう・・・)
一番の懸念点はそこだった。
次へ 先頭へ