妄想小説
覗き妻が受ける罰
第七章
「ねえ、お願い。この手錠を外して。さっきからおしっこがしたくて仕方がないの。私をトイレに行かせて。」
京子はあの男の股間に目が行かないように気をつけながら男に懇願する。
「ふふふ。駄目だな。もう少し我慢して貰おうか。それにお洩らしをするお前の姿も観てみたいからな。どんな風にお洩らしするのか楽しみだ。そのスカートは邪魔だから剥ぎ取ってやろう。パンツ丸見えのままでお洩らしするんだ。」
「嫌よ、そんな事。出来ないわ。ああ、トイレに行かせて。嫌よ。お洩らしなんて・・。ああ、駄目。早くして。もう我慢が出来ないわ。」
「ほら、股を広げて見せてみろよ。」
「駄目っ。やめてっ。足を引っ張らないで。ああ、股が開いてしまう。もう洩れそうなの。お願い。ああ、出てしまいそう・・・。」
その時、京子ははっとして目覚めたのだった。自分が何処にどうして居るのかが理解出来ていなかった。しかし強烈な尿意だけは本物だった。ふと気づくと自分は男性小用の便器の前に持たれかかっているのに気づいた。
慌てて立上ってスカートを捲り、股間を便器に押し付ける。
ジョロジョロっという音と共に、激しく尿が迸りでた。パンティは既に穿いていなかった。
(ああ、間に合った・・・。)
便器に放尿出来た安堵感が醒めてくると、少し冷静になって自分の状況が判ってきた。
(そうだ。この便器に繋がれていたのだった・・・。)
自分の右手首をみると、何時の間にか手錠は無くなっていて自由になっている。ずっと不自由な格好をしていたせいか、身体中の節々が痛かった。トイレの床から立上ると外を見る。もう明るくなりかけていた。腰のキッチンタイマを観ると4時を過ぎたところだった。
(こんなところで眠りこんでしまったのだわ・・・。)
スカートの埃を払うと、脱いでいた筈のショーツを捜すが何処にも見当たらない。ぼんやりする頭で記憶を辿るが、かろうじて記憶にあった手錠もペットボトルも、茂みの中に垣間見れたビデオカメラも全て無くなっていたのだった。念の為、スカートを捲ってみるがやはりノーパンのままだった。
家に戻ってみて、一晩中鍵も掛けないまま家を留守にしてしまったことに気づいた。慌てて家の中に駆け込むが、普段どおり何も変化がないのに一安心する。真っ直ぐに二階に上がっていって、三脚からビデオカメラを外し本体のモニタ画面で映像を確認しようと巻戻しをしようとするが一向にモーターが動かない。おかしいと思いながらテープを取り出そうとしてみて、カートリッジの中がからっぽであることに気づく。
(おかしいわ。たしかにテープはセットしておいた筈なのに・・・。)
自分の部屋に戻ってみると、パソコン用の机の端にビデオカメラ用のカセットテープが無造作に置かれている。
(私が入れ忘れたのかしら。)
訝しく思いながらも、ビデオカメラにそのカセットを入れて再生してみるが、何も写ってはいなかった。
(きっと慌てて、空のビデオカメラをセットしてしまったのだわ。)
京子は一晩公衆トイレに放置されたのに、何の証拠もつかめなかった事に落胆するのだった。
その日の午前中は疲れが出てついベッドに横になったらそのまま寝込んでしまったらしかった。そんな京子を起したのは玄関のドアチャイムだった。玄関へ出て覗き孔から外の様子を窺うと宅配の男だった。
「今、開けます。」
衣服の乱れを直して玄関口に立った京子は宅配の男から段ボールに入った小包を渡される。
「長谷川京子さんですね。ここにサインを下さい。」
差出人の名前は夫の和樹だった。だが、送り主の住所は東京になっている。
(変だわ。何故夫が単身赴任先の大阪ではなく、東京から送ってきているのだろう・・・。)
訝しく思いながら宅配の男が帰った後、段ボールを開けてみる。中から出てきたのはクリーニング店のもののような薄いビニル袋に入った黒いワンピースだった。伸縮性のあるニット地のものだったが、妙に丈が短かった。それと同じものを何処かで観た事がある気がしたが、さる外国のビール会社のトレードマークになっている衣装だったとまでは思い出せなかった。
(夫が私にこれを着ろっていうのかしら・・・?)
袋から出して自分の身体にあててみるが、どう見ても丈が足りないような気がする。その時、京子の携帯がなった。
(携帯メールだわ。夫からかしら・・・。)
しかし開いてみると、覚えのない登録されていない番号からだった。
「荷物は届いたか。今日からはこちらが送ったものだけを着るんだ。まず今日はその服で一日居る事。追ってまた指示を出す。」
一方的な命令の文だった。間違いなくここ数日来、自分に変態行為を強いている男からに違いなかった。
(どうやって私の携帯番号を見つけ出したのだろう・・・。そう言えば夫の名前までも知っているようだわ。)
以前にテレビのドラマで郵便受けに入ったままになっている電話会社からの請求書を盗み見られて電話番号を知られてしまうという話を観たのを思い出した。電話会社からの請求書は来れば中身を観てから捨てているが、毎月確実に届いているかまではチェックはしていなかった。おそらくその類のやり方で番号を盗み獲られたに違いないと京子は確信する。
ちょっと迷ったが、着ていたいつものワンピースを脱いで送られてきたものに着替えてみる。腰までぐらいしかないのではないかと思った伸縮性のワンピースは股下ぎりぎりまでの丈しかなかった。姿見の前に立ってみると身体の線をくっきりと浮かび上がらせてしまっている。真っ直ぐ立っていれば、下着までは覗かないものの、不用意に腰を屈めようものなら、間違いなくパンティを晒してしまう筈だ。
(こ、こんなもの・・・。外にはとってもじゃないけど着て出歩けないわ。)
取りあえず、男の命令には従って着てはおくものの、一日家の中に籠って外には出ないことにする。
一日中、男から呼び出しのメールがまた届くのではとびくびくしながら一日を送っていた京子は、夕刻近くまで何の音沙汰もなかったので、もうその日は何も無いのだろうと思い掛けてきた時に、二度目の携帯メールが鳴った。
「お前が持っているパンティを今穿いているものも含めて全部、今から洗濯し直せ。」
妙なメールだった。何の意図があるのかわからないが嫌な予感はする。だからと言って無視する訳にはゆかない。
洗濯籠には昨日、一昨日と穿いていたものが二枚、クローゼットの中には30枚ほどのパンティが入っている。殆どが無地の白いものだが、ベージュが数枚、黒と赤がそれぞれ一枚ずつある。黒と赤は通販で勇気を出して買ってみたのだが、夫の前でそれを着けてみたことはまだなかった。
それらを集めてきて洗濯籠に放り込み、少し思案してから今穿いているショーツも脚から抜き取って加える。暫くはノーパンで過ごさなければならないことを覚悟した。
洗濯物はいつも二階のベランダで干すことにしている。乾燥機を一緒に買おうと夫に提案してみたが、電気代が結構かかるらしいと言われたので諦めた経緯がある。南側にあるベランダは風通りもいいので、天気さえ悪くなければ乾燥機は不要だったので、それ以上強く主張はしなかったのだ。
洗濯機が止まって干す段になって、はっとした。ベランダは公園側からも表の通路側からも見上げられてしまう。男から送られた超ミニのワンピースでベランダに出なければならないことに初めて気づいたのだった。いわゆるボディコンというタイプでスカート部分はかなりタイトになっている為、普通に立っていればスカートの中まで見えてしまうことはなさそうだったが、かなり刺激的な眺めにはなる筈だ。それにうっかり身を屈めたりしたら、後ろからは丸見えにはなりかねない。しかもその日はノーパンなのだ。
京子は家の中で洗濯ハンガーにパンティを全部取り付けてしまってから一気に外に出すことにした。少しでも外に出ている時間を短くしたかったのだ。30数枚のパンティを一気に干すのは壮観でもあった。持っている洗濯ハンガーを全て使って漸く全部を吊るすことが出来た。
さすがに夕暮れ時で公園に遊びに来ていた子供たちはもう帰っていたが、散歩で出歩いている老人や買い物帰りの主婦などは時折通るので、京子は窓から公園と外の通りを窺って人通りが絶えるのを待った。
(今ならいいかも。)
人通りが絶えたところで、思い切って洗濯ハンガーを両手に下げてベランダに出る。最初は掃出し窓から身体半分だけ出して手前から干し始めたのだが、何せ数が多いので、ベランダの端まで使って物干し竿の先まで使わなければ干し切れない。意を決してベランダスリッパを穿いて掃出し窓から外に出る。しかし、そんな時に限って人が通るのだ。ベランダの上の自分には気づかないで老人が二人話しながら下を通っていく。一旦家の中に戻ろうとして慌てて洗濯ハンガーを取り落としてしまう。
「あっ・・・。」
思わず声を挙げてしまって急いで洗濯ハンガーを拾い上げようとして腰を屈めてしまってから、してはいけない格好をしてしまったことに気づく。公園のほうを振り向いてみると、京子の下半身を注視している二人の老人と目があってしまった。
(いやっ・・・。)
恥ずかしさに顔を赤らめながら急いで家の中に戻った京子だった。
(見られてしまったかもしれない。)
姿見の前で洗濯ハンガーを拾い上げた時の格好をしてみる。スカートの裾から白い尻たぶが完全に覗いてしまっていたことを知って京子は情けなさに泣きそうになるのだった。
公園を歩いていた老人は顔見知りではなかったが、近所に棲んでいるのは間違いないだろうと京子は判断する。ノーパンで居ることを気づかれてしまったかどうかは判らないにせよ。スカートのかなり奥までを見られてしまったのはまず間違いないだろうと京子は思った。
次第に暮れて行く外は、天気は崩れそうにはなかった。風も微かにではあるがあるので、外に出したままのほうが早く乾きそうだった。それよりももう一度ベランダに出るのが嫌だった。京子は一晩外に干しっ放しにして、朝早いうちに取込んでしまおうと決めたのだった。
次へ 先頭へ