妄想小説
覗き妻が受ける罰
第四章
「あれっ。パンツ丸見えですよ。なんで、そんな格好してるんですか?」
その声にはっとして、顔を上げるとあの男が立っていた。ズボンのチャックは下げられていて、ペニスが社会の窓から突き出ている。
「あ、貴方は・・・。い、嫌っ・・・。こ、こっちを見ないで。」
京子はスカートの裾を持ち上げている手を動かそうとするのだが、何故か手が凍り付いたように動かせない。
「自分からスカートを捲ってパンツを丸見えにさせてるんですか。そういう趣味なんですね。」
「ち、違うのよ。そんなんじゃないんです。わ、わたし・・・。罰で、こうしていなければならないんです。」
「ほう?罰ですか。何をした罰ですか?そんな恥ずかしい格好をしてなくちゃならないなんて、随分と破廉恥な事をしたんですね。」
「そ、そんな・・・。あ、貴方には言えないんです。」
「私には言えない? それは私のこのちんこに関係があるんですね。だって、さっきから貴方は私の股間をずっと見つめてるじゃないですか。」
「い、いえ。見つめてなんかいません。そ、そのペニスを早くしまってください。」
「じゃあ、貴方もスカートの裾を降ろしてパンツを隠したらどうです?」
「だ、駄目なんです。私はこうするように命じられているのです。命令にそむくわけにはいかないのです。ああ、だからもう赦してください。」
「貴方がそんな格好を晒しているのなら、近所の奥さんたちにも報せなきゃ。」
「や、やめてっ。やめてください。お願いです。こんな恥ずかしい格好を他の人たちに見られるなんて。ゆ、赦してくださいっ。」
「駄目ですよ。だって、罰なんでしょ。だったら恥ずかしい思いをしなくちゃ・・・。皆さ~ん。ここに変態が居ますよっ。自分でスカート捲って、パンツ丸出しにしてる女が居ますよぉ・・・。」
「や、やめて。誰か来ちゃうでしょ。お願い。もう赦して・・・。」
自分ではスカートの裾を降ろすことが出来ないもどかしさに京子は気が狂いそうになる。そこでふっと目が醒めたのだった。
(ゆ、夢・・・? 夢だったの?)
昨夜も家に戻ってから寝付けないでいた。誰かが自分の痴態を覗き見していたのではないかと思うと、恥ずかしさに堪らず居ても立ってもいられなかった。しかし、二日続けての徹夜状態ではさすがに生理的にも限界が来ていたようで、何時の間にかベッドの上で寝入ってしまったようだった。そのせいで、そんな夢を見たのだと京子は思った。朝はもう明けようとしていた。
寝室を出て、一階の台所へ降りて水を呑んで落ち着こうと思った。その前に二階から階段を降りようとして、思わず正面の窓を少しだけ開けてみる。そこには何時も通りの風景がある。眼下に公園が広がっていて、真正面に公衆トイレが見える。それがちらっと眼に入っただけですぐにさっと窓を閉めてしまう。
(あそこに、あんな破廉恥な格好で自分が立っていたなんて・・・。)
夢の中の出来事だったのだと思いたかった。
階下へ降りていって、台所へ行こうとして玄関の郵便受けに何かが差しこまれているのに気づく。茶色い封筒だった。
水を呑みに降りてきたことも忘れて、ひったくるようにその封筒を抜き取ると震える手で封を切る。
(昨日は言い付けを守らなかったな。4分ちょっとしかスカートの中を晒していなかったぞ。罰として今夜は10分を命じる。それからストッキングを穿く事は禁じる。服は昨日と同じでいいが、生脚で、昨日と同じ白いパンティを穿いて同じ格好を同じ時間にすること。)
京子はその簡潔で要領のいい命令に、再度打ちひしがれるのだった。
その日は一日中、京子は何をやっても上の空の状態だった。どうやったらあの男の理不尽な命令の呪縛から逃れることが出来るのか、すぐにその事に頭が行ってしまうのだった。そして幾ら考えてもその答えは見つからないのだった。そしてその言い付けの時刻にどんどん時は近づいていってしまうのだった。昨日と同じ黒いワンピースを身に付けて姿見の前に立ってみる。その下にはストッキングは着けずに昨日と同じ色のパンティだけを穿いている。そしてスカートの裾を摘まんでゆっくり持上げていく。姿見に自分の姿を自分が見ているだけなのに、見られている自分を想像しないではいられない。あとちょっとで脚の付け根が覗いてしまう位置までスカートを持ち上げて、そこから先を持ち上げるのが躊躇われてしまう。しかし、どんな風に見えてしまうのか確認しない訳にはゆかなかった。思い切って裾を持ち上げる。白いショーツが丸出しになる。はしたない破廉恥な格好だった。そんな格好を人前で晒す。それは京子には耐え難い仕打ちだった。しかし、今のところそれを逃れる何の手段も無いのだった。
11時5分前に家を出た。昨日と違うのはストッキングを穿いてない生脚である事。そしてもうひとつは腰に小さなキッチンタイマーを下げていることだ。ワンピースにはポケットが無いので、ワンピースに近い色の黒いベルトを腰に巻き、それにキッチンタイマーをぶら下げた。時間は既に10分に設定してある。指定された時間より短くて更なる罰を与えられないようにと考えたのだ。
公園は前日とまったく変わらない風だった。誰の気配も感じられない。公園の前の家も幾つかは灯りがまだ点っているものの、窓を開けている家はない。
昨日と同じ様に公衆トイレの掃除用具室の扉の取っ手には小さな袋が下がっている。今朝、廊下の突き当たりの窓を開けて、公園を見下ろした時にはもう回収されていて無かった筈のものが、何時の間にか前夜と同じ様にぶら下げられていた。
京子はそこからアイマスクを取り出すと、前夜と同じ様に自分から視界を塞ぎキッチンタイマーのスイッチを入れてからスカートを捲りあげる。自分には見えないが、確実に見られている筈の視線を痛いように感じる。その視線の先が当てられている筈の股間が疼くように感じられる。
(私にこんな事を命じている男以外、誰も通りませんように・・・。)
京子にはそう祈ることしか出来なかった。
ピピピピ…。ピピピピ…。
漸くキッチンタイマーが10分が経過したことを報せると、京子は少しだけ余分に確実に10分を過ぎるように待ってからスカートの裾を戻した。アイマスクを取ると公園を見渡してみる。一本だけ立っている街燈の下辺りがぼおっと見える他は、殆ど真っ暗闇の静まり返った公園だった。
(これでもう赦して貰えるのだろうか・・・。)
えも知れぬ不安を抱えたまま、足早に遠回りして自分の家に戻る京子だった。
次の朝、京子の淡い期待は玄関に届いていた新たな封筒で裏切られることになる。
(今夜はスカートを捲る前に下着を膝のところまで降ろしておくこと。時間は15分だ。)
男からの指示はそれだけだった。パンティを降ろして股間を晒せという命令だった。明らかにどんどん命令はエスカレートしていた。
(そんなはしたない真似をして、もし誰かにみつかったらどうなってしまうのだろうか。警察に通報でもされたら、捕まってしまうかもしれない。そうなったとしても言い訳は出来ないのだ。脅されたと言い訳したとして、何で脅されたのかを答える訳にはゆかないのだから・・・。)
京子はほんの出来心で自分がしてしまった罪が如何に重い罰を受けることになったかを思い知るのだった。
その夜も公園に独りでやってきた京子は、何度も公園の廻りを見回してみる。しかし、誰の気配も感じられなかった。自分をこんな目に遭わせている男が、迂闊に自分にみつかるような場所に身を顰めている筈もないと京子は思った。
男が置いて行ったらしい袋からその夜も目隠しのアイマスクを取り出すと意を決して眼に当てる。
(もう後戻りは出来ないのだわ・・・。)
京子は観念してスカートのお尻の部分から手を入れて、ストッキングも着けない生脚にたった一枚だけ恥ずかしい部分を被っているショーツの端を掴むとゆっくり膝の上まで引き下ろす。それだけでも随分恥ずかしい格好なのに、その上剥き出しの股間をスカートを捲って晒さなければならないのだ。
(ああ、恥ずかしい・・・。ああ、もう赦してっ。)
心の中でそう叫ぶと、京子は一気にスカートを前面で捲り上げた。剥き出しにされた恥毛を夜の風が揺らめかせているようだった。
アイマスクを通して、京子は自分に向けて閃光が走ったような気がした。
(ま、まさか・・・。ストロボを炊いて写真を撮っているのでは。)
そう思った瞬間に、また閃光を感じる。
(や、やめてっ。写真を撮るだなんて・・・。)
しかし京子には時間が来るまでスカートを降ろす事は許されないのだった。
(ああ、まだかしら。まだ、時間は来ないの・・・。ああ、早くこのスカートを降ろしたい。パンティを引き上げたい。もう、いいでしょ・・・。写真だって撮ったんでしょ。もう充分じゃないの。ああ、もう赦して・・・。)
ピピピピ。ピピピピ。
漸く京子がスカートを捲りあげてからスタートさせた腰のキッチンタイマが15分が経過した事を報せていた。その音に近隣の誰かが気づいてしまうのではないかと慌ててタイマを止める。まずスカートを降ろして、アイマスクを外してからショーツを引き上げる。完全に穿ききることも出来ず中途半端に股間付近にショーツをたくし上げただけで、京子は暗闇に向かって走り出していた。
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