妄想小説
覗き妻が受ける罰
第十五章
嫌な白昼夢をみてしまった後、今度は逆に目が冴えてきてしまう。11時に電話が掛かってくるらしい事ばかり気になっていても立っても居られないのだった。男から発せられてくるであろう理不尽な要求がどんなものなのかが気になって転寝どころの気持ちではなくなっていたのだった。
夕食も殆ど喉を通らなかった。男から電話が掛かってくるのは11時だと判っているのに、京子は10時には自分の部屋の机の前に座っていた。携帯はすぐ取れる位置に置いてある。そして目の前には男が指示していた(お前に渡している様々な道具)だと思われるものを並べていた。携帯に取り付けるハンズフリーのイアホン付のヘッドセット、アイマスク、手錠とその鍵、革の手枷、首輪、胸の拘束具、T字帯、そしてそれに取り付ける二つの疑似ペニス、その日初めて送られてきた奇妙な頭巾とマント。それらのものを着けさせられた夜の事を京子は反芻していた。
ピリリリリリ・・・。ピリリリリリ・・・。
携帯は11時ぴったりに鳴りだした。
「はい。私です・・・。」
「言われた通りのものは用意しているか。」
何度も聞いたボイスチェンジャーで加工された低いくぐもった声が聞こえてきた。
「はい。用意してあります。」
「今、何を着ている?」
「あ、あの・・・。命じられているミニスカートです。ジーンズのミニです。上はポロシャツです。」
「下着は何を着けている?」
「送って頂いたペーパーショーツ・・・です。ブラは着けていません。」
「ふふふ。ノーブラか。だいぶ分かってきたみたいだな。いい心掛けだ。」
「あの・・・。これからどうすれば・・・。」
「まず、着ているものを全部脱ぐんだ。」
「わ、わかりました。・・・・。今、脱ぎました。」
「姿見はそばにあるか。」
「あ、あります。」
「携帯にヘッドセットを繋いでケースに入れて首から下げるんだ。両手が塞がらないようにな。」
「判りました。」
「よし、そのまま姿見の前に立ってみろ。」
「は、はい。・・・。立ちました。」
「股間はどんな状態だ。」
「あ、あの・・・。毛を剃ったままです。まだ生えてきてはいません。」
「股間を触ってみろ。」
「えっ?わ、わかりました。・・・。あっ、うっ・・・。」
「どうした?」
「少しざらざらして・・・、チクチクします。」
「また毛が生えだしているみたいだな。毎日、ちゃんと手入れしておけっ。」
「て、手入れって・・・。」
「ツルツルになるまで綺麗に剃りあげておくんだ。」
「わ、わかりました・・・。」
「股間はどんなだ。どんな風に見える?」
「ど、どんな風って・・・。あ、あの・・・。縦に割れ目がくっきりみえます。」
「その割れ目を指でなぞってみろ。」
「えっ、なぞる・・・んですか? ・・・、うっ。」
「濡れてきているか?」
「い、いえっ。濡れなんかいません。」
「そうか。じゃ、まあいい。机に戻れ。」
「は、はいっ。」
京子は姿見から離れて机の前のスツールに腰掛ける。裸なのでビニル張りのスツールが裸の尻に冷たく感じられる。
「ディルドウはあるな?」
「ディルドウ?」
「疑似ペニスの事だ。二本あるだろう。」
「えっ、はいっ・・・。」
「小さい方をT字帯の内側に取り付けるんだ。ペニスの付け根をT字帯の金具に当ててゆっくり右へ回すんだ。カチリと音がするところまで回せば完了だ。」
「は、はい。・・・。付けました。」
「さてと、今日小瓶が届いている筈だ。」
「はい、届いています。」
「壜を開けて指で中身をすくって、ペニスのまわりにたっぷり塗りたくるんだ。」
京子はペニスを取り付けたT字帯を一旦机の上に戻して小瓶を取り上げる。蓋を開けて指を突っ込み、ねとっとした軟膏のようなものを掬い取る。
「たっぷりと塗るんだぞ。そうしないと、後で痛い目にあうのはお前なんだからな。」
京子には男の言っていることが理解出来なかった。しかし、男に言われることに背くのが怖くて言われた通りに何度も指で掬っては疑似ペニスになすり付ける。
「出来たか。そしたら革のT字帯を裏返してペニスが上を向くように椅子の上に置くんだ。そして脚を広げて椅子を跨ぐようにしてペニスを陰唇の中に挿入するんだ。どっちが前かは判るよな。」
「・・・・。」
薄々何をさせられるのかは判っていた京子だったが、あらためて男に指示されると躊躇ってしまう。しかし男の命令に背くことは出来ないのは重々わかっていた。
ペニスを取り付けたT字帯の股に当たる部分を裏返して椅子の上に載せる。そしてその上に脚を広げて跨る。疑似ペニスの先が陰唇に触れると全身に電気が走ったように感じる。
「ああぅっ・・・。」
京子はもう何も考えないようにして、自分の身を沈める。ぬるっとした感触と共に、疑似ペニスがするするっと陰唇の奥に滑り込んでいく。塗りたくった軟膏のせいか、痛みは感じられない。しかし、装着した直後にかっと火照りを感じたあと、徐々にむず痒さが沸き起こってくる。
(これは、あの時の・・・)
陰唇に感じるむず痒さに、京子はデジャブ感を憶えていた。
(この感じは、初めて外歩きをさせられた夜の・・・)
はっきりと蘇る記憶から、やがて訪れるであろう強烈な掻痒感を予感して京子はうろたえる。
「挿入したら、背中側から腹に巻くベルトを起して、腰に巻くんだ。前でバックルを留めてから股の帯の先についているバックルを正面のラッチに嵌め込むんだ。外す為の鍵は持っている筈だな。」
「あ、ええっ。あります。」
京子はT字帯の鍵を確認する。グランドのトイレで自分が洩らした小水の中から拾い上げたものだった。それを机の前に置くと、言われたとおりにベルトを締め上げる。カチリと音がして股下のベルトが正面のバックルに嵌り込むと、鍵を使わなければもう外せない。
「今度はもう一本のディルドウを股間の外側に嵌めるんだ。取り付けかたはさっきと一緒だ。付け根を股の金具に押し当ててゆっくり音がするまで右に回してゆくんだ。」
京子は言われた通りにもう一本のペニス型を手にすると股間に押し当てゆっくりと回していく。
「は、嵌りました。」
その疑似ペニスは、陰唇に差しこまれたもう一本の疑似ペニスのちょうど反対側にあたる部位に外を向いて屹立するようにT字帯に取り付けられるようになっているのだった。
「次は革のブラジャーを着けろ。後ろのホックは自分でも嵌められる筈だ。」
革のブラジャーは既に自分で外した事があるので要領はつかめていた。裸の乳房に二つの三角形になった部分を押し当て、背中で茄環のラッチを留める。後は二つの革ひもを肩の上を通して三角形の頂点の部分に嵌め込むだけだ。
「身に着けました。」
「よおし。ここから最後の指示をする。ようく聴いて覚えておくんだぞ。この命令を聞き終わったら、ヘッドセットと携帯は外して置いていくんだ。頭に今日送った頭巾を被って、その内側に着いている首輪をしっかり嵌めろ。首輪のバックルには錠前が付いているから、それをしっかり掛けて、その鍵も机の上に置いていくこと。下手に鍵を持って出たりすれば、お前が困ることになるんだからな。マントは後ろから背中に垂らして着ていくんだ。首の前で紐を軽く縛っておけばいい。最後に手錠だ。自分で後ろ手に掛けて同じく鍵は机の上に置いてゆくこと。用意が出来たら、この間のグランドの男子トイレまで独りで歩いて行ってくるんだ。但し、あそこのトイレは見廻りが夜の1時にやってくるから、その前に辿り着くようにしろ。そうじゃないとお前が困ることになるからな。じゃあ、幸運を祈る。見廻りが男子トイレに来てしまう前に早く行って来い。」
そこまで男は言うと、電話を切ったらしくツーという通信音が暫くしてから電話は切れてしまった。京子は壁の掛け時計を見る。時刻は11時半を廻ったところだった。
(急がなくちゃ・・・)
携帯のイアホンを外し、首から掛けていた携帯ケースを外すとバットマン風の頭巾を手に取る。昼間様子は確認してあった。それを頭から被る。大きさは計ってあったかのように京子の頭にぴったりのサイズだった。首の後ろの部分に首輪が縫い付けてあって、それを前で締め、錠前を掛けて小さな鍵を抜き取る。首輪を引っ張ってみたが、ピクリともしない。それからマントを肩から掛け首の前で紐を縛って留める。後は手錠だけだった。T字帯の鍵、頭巾の首輪の鍵を揃えて置いた横に手錠の鍵を置くと片手に手錠を嵌め、それをマントの下に差し込んでもう片方の手首にも嵌める。家を出る前にもう一度姿見の前に立ってみる。頭巾の上半分は目だけが覗いていて、後は顔の下半分が出ているに過ぎない。最初から京子だと言わない限り、誰なのかは気づかれないような気がした。マントは少し前屈みにしていれば、股間のペニスがぎりぎり隠れるぐらいの丈だった。しかし前を閉じている訳ではないので、下手に動けばすぐに股間はおろか、胸の剥き出しの乳房まで露わになってしまいそうだった。それでも躊躇している時間は残されていなかった。後ろ手に家の鍵を取ると、玄関を出て手探りで施錠してから植込みの陰に家の鍵を隠すと京子は公園の前の暗い路地に向かって小走りになるのだった。
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