妄想小説
謎の中国女 李
七
「お前はムダ毛の処理もしていないようだな。パンティから黒い毛が透けて丸見えじゃないか。」
「い、嫌っ。」
この言葉には堪らず、命じられていた裾上げの手を動かして、思わず股座を押さえ込んで隠してしまう。
「誰が隠していいと言った。罰としてショーツを下ろすんだ。」
涙目で許しを請う李の目に、冷たい影山の視線が飛び込んできた。影山の命令は絶対なのだった。
うなだれて、李は尻のほうからスカートの中に手を突っ込み、ショーツをゆっくり下げてゆく。
「止めろ。」
膝のすぐ上までショーツを下ろしたところで、李は制される。仕方なくそこで手を離すと、鏡を跨いでいる為に膝も開かざるを得ず、ショーツが思いっきり引っ張られて膝の間で広げられてしまっていた。その真ん中部分はじっとりと濡れているのがはっきり観てとれるのだ。
「片足ずつ抜いて、パンティを脱ぐんだ。」
李は言う通りにする他なかった。
「鏡の前へ広げて置くんだ。股布を表にしてだ。」
影山の言葉はどこまでも非情だった。
「そのまま腰を落としてしゃがむんだ。」
李は悪ふざけをして叱られ、罰として立たされている生徒の気分だった。目の前に晒させられている自分が汚した下着は見るのも堪えられず、横を向いてうな垂れているしかなかった。その下着を汚した元の陰唇が、鏡に映って、影山に丸見えになっているのが耐え切れなかった。
顔を上げられないでいる李の目の前のショーツの上へ影山が何かを置いた。コトリという物音に思わず視線をやると、そこには黒光りするものが置かれていた。一見すると髭剃りシェーバーのように見えた。
「そいつは電動バリカンってやつだ。そいつを使って、股の間のムダ毛を全部剃り落とすんだ。いいな。」
李は耳を疑った。何を言われたのか初めは理解出来ないでいた。しかし、何度考えても、男が自分の手で、股間の茂みを剃り落とせと言っているのに違いなかった。
おそるおそる電動バリカンと呼ばれたものに手を伸ばした。李はそれを手にしながら、男には何を言われてもいうことを聞くしかない自分の身を呪うほかはないのだと悟った。横にあるスイッチはすぐに判った。それを押すとウィーンという軽い音と振動が伝わってきた。下を向くと鏡に自分の股間がはっきり映っている。股を開いてしゃがんだ為に、広がって内陰唇までを覗かせてしまっている割れ目の前に、剃り落とすことを命じられた草叢が生えている。李はゆっくりと電動バリカンをその茂みに近づけていったのだった。
剃り終わった恥丘は毛穴の跡が青々としていた。毛のない陰唇は、割れ目からどうしても覗いてしまう肉襞が余計に強調されてしまう。李には最早、自分自身の肉体の一部とは思われず、何か別の生き物をみているかのような錯覚に囚われた。
李は渡されたジップロックのビニル袋に鏡の上に散らばった剃り落とされたばかりの自分の陰毛を集めてしまい込むと、べっとりと汚してしまったショーツまでをも仕舞い込むように命令された。李が恥ずかしげに俯いてそれを影山に手渡すと、代わりに以前にも身に着けさせられたこの会社の制服と、真新しい白いショーツが李に手渡されたのだった。
着替え終わった李が行かされたのは、前回、影山に連れていかれた事業部長室だった。しかし今回は一人きりだった。李が命じられたのは、一階の総務の倉庫へ寄って脚立を持参することと、秘書室で前回紹介された秘書の斉藤夏美に声を掛けて案内して貰うということだった。自分の会社でもない制服を勝手に着込んで、他の部署へ入り込んだりしたら誰かに見咎められるのではないかと申し立てると、影山は事も無げに「何か言われたら、私は派遣社員でよく判りませんと答えておけ。」とあっさり言われたのだった。不安はあったが、李には影山の命令には従うしか道はなかった。
影山が要領よく説明してくれた総務の倉庫というのは、ホールの階段脇の小部屋ですぐに見つかった。幸い誰も近くに居なかったので、何も見咎められることなく、脚立を取り出すと、それを持ってエレベータへ向うことが出来た。秘書室でも李の姿を認めると、すぐに秘書の斉藤が笑顔でやってきて、全て聞いていますとばかりに李を優しく案内してくれた。そればかりか、ノックして入った事業部長の岸川も、妙に相好を崩して親しげに李を迎え入れたのだった。
「や、この間の君か。影山君から聞いているよ。さあさ、どうぞ。」
「ありかとござます。なるぺくお邪魔しないように、すぐに仕事取り掛かります。」
そう言うと、李は持ってきた脚立を抱えて、教えられた通り、壁際の書棚へ向う。書棚は天井から床まで8段ほどあって、その全てにファイルがびっしりと並べられていた。影山は、その最上段に所望の書類がある筈だと教えていた。
「書類の場所は判っているのかね。」
脚立を据えている李の後ろで事業部長が声を掛けた。
「はい、わかてます。一番上の段の中と聞てます。私、背が低いだから、これ持てきました。大丈夫てす。」
脚立は高さ1mほどの中ぐらいのものだった。その一番上まで昇って手を伸ばして漸く最上段の棚に手が届くようだった。事業部長がこの書棚の正面に当る執務席の机に戻るのを見届けてから、李は脚立にあがった。1mの高さはそれほど怖くはなかった。気になったのは、それよりもスカートの裾の方だった。それでなくても短い丈なのだ。しかも分厚いファイルを取り出すのに両手を掲げて伸ばさねばならない。そうすると必然的にスカートの裾が更にずり上がってしまうのだった。作業を始めてすぐに李は影山の意図を悟った。 執務机の書類に向っている筈の事業部長の視線が時々射すように自分の足許に向けられるのを李は痛いように感じていた。しかしファイルを取り出そうとする時は、事業部長に背を向けるしかなかった。ファイルを引っ張って胸元に取り込み、脚立を降りようと振り向く時に必ず、事業部長が顔を下に向けるのに気づいてしまったのだ。棚から下ろした分厚いファイルは床に並べるように影山からきつく言われていた。その為にどうしても腰を屈めなければならない。まさかドスンと床に落とす訳にはゆかないので、そおっと脚を折って腰を屈めなければならない。その瞬間が一番裾の奥を覗かせてしまいそうになる一瞬なのだ。その瞬間を事業部長が見逃す筈もなかった。李は見られているのを意識しながらも、下着を覗かせてしまわないように細心の注意を払いながら黙々と作業を続けていった。 影山から言われたファイルを半分まで探し終えた頃、李の目の端に事業部長が書類を手にしたまま、席から立ち上がるのがちらっと見えた。そのまま鼻歌まじりに書類に目を落としたまま、事業部長は近づいてきて、李が脚立を置いたすぐ傍にある応接セットのソファに腰を下ろしたのだ。脚立からすぐ斜め下にあり、脚立に上がるとスカートの奥が事業部長から丸見えになる事にすぐに気づいた。しかし、李にはだからと言って作業を止める訳にはゆかないのだった。李は唇を噛み、わざと気づかない振りをして思い切って台にあがる。そちらを振り向かなくても、事業部長の目線がこちらに向いているのを痛いほど感じた。 やっとのことで、所望のファイルを10冊ほど探し当てたところで執務室の電話が鳴った。事業部長はさも名残惜しそうに、ソファから身を起こすと、電話口に向う。 「あー、もしもし。ああ、私だ。・・・、ふむふむ。・・・、そうか。・・・わかった。そうさせよう。それじゃあ。」
李がファイルを整理しようと床にしゃがんだまま、目を上げると受話器を置いた事業部長が李のほうへ顔を向けた。その視線は明らかに立て膝で露わになってしまっているに違いない、スカートの裾の奥の下着へと注がれているようだった。
「ああ、今、影山君から電話で、必要な書類だけコピーさせてくれとのことだ。秘書室にコピー機があるからそれを使いなさい。今、斉藤君に言って、運ぶのを手伝わせるから。」
そう言うと、事業部長は秘書を呼ぶために再び電話機を取り上げたのだった。
影山は秘書の斉藤と二人きりになったら、直に斉藤が事業部長から呼ばれる筈だからと事前に話していた。一緒にコピーを撮り始めてすぐに秘書室の電話が鳴った。斉藤が電話機を取ると、「判りました。」とだけ答え、李には「ちょっと御免。」と言って、予定が書かれているらしい秘書用の大きなノートを手に事業部長室のほうへ小走りに去ってしまった。全ては影山が事前に話していた通りだった。
李はすぐに行動に出た。それらしき物は斉藤の席のすぐ後ろに置かれていた。小振りのバッグで、ブランド物らしかった。開けて中を探ると、弁当らしき包みの奥に、保温袋に入れられたペットボトルのお茶らしきものが入っていた。袋からさっと取り出すと、あらかじめ影山から持ってゆくように言われていたペットボトルにさっと摩り替える。今にも斉藤が戻ってきてしまうのではと、ドキドキしていた李だったが、元の通りにバッグを戻してしまうのには充分な余裕があったのだった。
斉藤夏美との共同作業で、漸く必要な書類のコピーを全て撮り終えた時にちょうど昼休みのチャイムが鳴った。
「じゃ、私、このファイルを事業部長さんのお部屋、戻しにいてきます。」
「あら、じゃあ、私も手伝うわよ。」
「いえ、そな。いいてす。もうお昼時間たから。私やります。」
そう言うと、ファイルを両手に抱え、事業部長室に向う李だったが、夏美は優しく先に立って事業部長の執務室のドアをノックし、李の為に扉も開けてやるのだった。
「専務。書類のコピーが終りましたので、ファイルを戻しに来ました。あ、それから専務。午後の出張の迎えの車が参ったようです。お仕度をお願いします。」
「ああ、そうかい。夏ちゃん、悪いがちょっと運転手に10分ほど待ってくれるように言ってきてくれないか。」
「かしこまりました。」
自分の言いつけに従って、夏美が出てゆくのを見届け、今度はファイルの次に脚立を運び混んできた李の姿をみて、密かにほくそえむのだった。
「えーと、午後の出張の書類はこれだったかな。ふむふむ・・・。」
そう言いながら、事業部長は何気ない振りをしながら書類を持って、李がこれから脚立を立てる筈の書類棚のすぐ下のソファに深々と座り込むのだった。再び、この男に自分の恥ずかしい部分を晒さねばならないことを悟って、李は悔しさに唇を噛みながら仕事を始めるのだった。
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