妄想小説
謎の中国女 李
十五
定時を告げる鐘が鳴ると共に夏美はパソコンの電源を落とした。これでウェブカメラの監視から逃れられるのだと思うと、ほっと胸を撫で下ろした気分だった。手首の腕時計を確認する。李との約束の時間まで、まだ暫くある。夏美は下着を取替えたかった。しかし、一旦会社を出て、下着を買いにゆき、穿いて戻ってくるには時間がとても足りなかった。夏美は思い切ってショーツは脱いでしまって、ノーパンで行くことに決めた。もう何日もノーパンで過ごすことを強いられていた。だから少しだけ抵抗感が無くなってきていた。ノーパンで居ることの恥かしさよりも、汚してしまった下着を見られることのほうが堪えられなかった。何よりも中国人の李にだけはそれを見られたくなかったのだ。
夏美は殆ど自分しか使うことのない秘書室前の女子トイレに入り、念入りに化粧を直した。それからバッグからハンカチを取り出すと、水で湿してきつく絞る。それを手に個室に入ってしっかりロックを掛ける。誰も来ない筈と思っても、心配だった。個室に入ってからおもむろにショーツを下ろす。クロッチの沁みはさっきよりもくっきり浮かびあがって見えた。辱めを受ければ受けるほど、あそこは感じ入って分泌物が多くなってしまうようだった。夏美は片方ずつハイヒールを履いたままの足をあげてショーツを脱ぐ。汚れてしまった部分が外側に露出しないように、折り畳むように丸め込むとポシェットの奥底に突っ込む。スカートの前部分を捲り上げて、陰唇を剥き出しにすると、濡らしてきたハンカチで陰唇を入念に拭うのだった。
まだ少し早いと思いながらも、夏美は気が急いていた。李の居る建屋は定時を少し過ぎただけで、もう殆どひと気は無かった。それでも誰かに出逢わないように慎重に様子を伺いながら、その建屋へ近づいていった。建物の中は文字通り人っ子ひとり居ないかのように静まり返っていた。夏美は足音を立てないように靴を滑らせるように一歩一歩ゆっくり階段を昇っていった。
夏美がここでも音を立てないように細心の注意を払ってゆっくりとドアを開き、中へ滑り込む。右手の奥の隅に以前に使った革張りの長椅子がある。部屋の中心部の柱の横に以前に来た時には無かった、小さな珈琲テーブルのようなものがある。夏美が静かに近寄ってみると、目隠し用のアイマスクとロープの束が置かれていた。それを目にすると思わず顔が赤らんでくるようだ。辺りは次第に暮れかかって来ていて、薄暗くなり始めていた。夏美は始めにアイマスクを取り上げて、自分の目を蔽う。視界を遮ってしまってから胸元のボタンをひとつずつ外してゆく。目が見えないほうが、服を脱ぐ勇気が出るような気がしたからだ。制服のベストとブラウスを脱ぎとって目の前の珈琲テーブルへ載せる。背中のブラジャーのホックを外すと上半身裸になる。後はスカートを取るだけで真っ裸になってしまう。腰のホックを外してスカートをストンと床へ落とす。一歩、前へ出て脚を少しだけ開くと、自分から両腕を背中に廻し交差させる。
(いつでも、自分は用意出来ている、さあ、いつでも縛って)そんな気分だった。被虐のポーズを取ると、何故か不思議だが、気分が落ち着いてきた。
が、ガチャリと背後でドアノブが動く音が聞えると、夏美に新たな緊張が走った。思わず生唾を呑みこんでしまう。
「李ちゃん・・・なの?・・・。ああ、早く来て、私を縛って。」
自分でも思ってもみない言葉が口から飛び出ていた。そして後ろで交差させていた両手首を、縛りやすいように後ろへ突き出すのだった。
李との淫らな行為が、どうしてこうも自分を落ち着かせるのか、夏美自身にも理解出来ないことだった。全裸になって縛られ、目も塞がれて李と身体を合わせる間は、夏美は無我夢中で我を忘れてしまう。甘美な悦楽の時間だった。それが終ったあとの余韻に浸っている時も夏美には至福の時間に思われた。一日中、誰だか判らない者から理不尽な命令に服従させられいたその反動なのだろうとは薄々は思っていた。李との淫らな行為に耽っているという後ろめたい思いが、不審への理不尽な屈服と屈辱の思いを中和させてくれるような気がしたのだった。
その日の李の責めも夏美には天にも昇る絶頂感を与えてくれるものだった。ずっと目隠しをしたままだったので、どんな物を使ったのか夏美には判らなかった。乳首を散々に弄ばれ、陰唇を舌で蹂躙された後、そのモノは夏美の中に深々と進入してきたのだった。それは李が夏美の両腿を抱え上げた直後だった。いきなり硬いモノが濡れそぼった夏美の陰唇に挿入されたのだ。それが突き上げるように深々と夏美の身体の中心まで埋め込まれた時に、夏美は自分の両腿に李の両腿が押し当てられるのを感じたのだった。二人の身体が何かで繋がれたようだった。李は明らかに腰を夏美の陰唇に押し当てていた。それでいて夏美の陰唇には硬くて太いモノが挿入されていたのだ。夏美には李が男になったのではと思われたほどだった。李が腰を揺すると、その硬いモノが夏美の中で暴れて肉襞を掻き分けるように刺激してきたのだ。それに合わせて、夏美もついつい腰を振ってしまっていた。
最後に果てる時には、はっきりと自分の陰唇から何かが滴り落ちるのを腿の内側に感じていた。しかし激しい陶酔感がその後夏美を襲い、頭の中が真っ白になってしまった。
気づいた時には股間は拭われ、異物は抜き去られていた。自分で緩められた背中の縄を解いた後、目隠しを取ってみて、全てが綺麗に片付け去られているのを発見した夏美だった。
夏美への脅迫による辱めは、その後も陰湿さを増していった。夏美のパソコンに監視用のカメラを取り付けさせてからは、脅迫者は夏美を自由自在に操ることが出来るようになったと言っても良かった。ウェブメールによって命令を送りつけ、それに従ったかどうかちゃんと確認が出来るのだ。夏美にさせた恥かしい格好は、逐一静止画像が撮られていて、命令に従わないとこれをばら撒くとその画像を大写しにして送ってくるのだった。夏美は自分のあられもない姿が誰に配信されてしまうかわからないと思うと、どうしても命令に従わざるを得ないのだった。
次に夏美が命じられたのは、更なる屈辱だった。トイレへ行くことを禁じるというのだった。社内便で送りつけられたのは、大人用の紙おむつだった。それをカメラの前で着けることを命じられたのだ。
これまで何度もカメラの前で下穿きを膝まで降ろした上で、スカートを捲って陰部を映し出すことを命じられていた。それも恥かしかったが、紙おむつを当てるというのには恥かしいだけでなく、この上ない屈辱があった。しかもそれをトイレではなく、秘書室でやらねばならないのだ。
その日は事業部長の岸川は在室していたので、何時秘書室へ現れるかわからない。普段は用があれば電話してきて呼びつけるのが通常だったが、秘書室はエレベータホールの真ん前なので、どこかへ出掛ける用向きがあれば、秘書室の前を通る危険性があった。また事業部長へ逢いに誰かがやってくることも考えられた。これも秘書への電話でのアポイント無しにやって来る客は殆ど無かったが、全く無いとは言えないのだ。
夏美は何度も秘書室の外のひとの気配を確認してから、意を決すると、カメラが装着されたパソコンの真正面に立った。まず、尻からスカートの中に手を伸ばして、ショーツを膝まで下げる。ここまでは毎日の儀式のようなものだった。一旦ここで躊躇したが、ぐずぐずしている訳にはゆかなかった。ハイヒールを履いたまま、片足ずつショーツから足を抜くとショーツを抽斗の中に隠す。ノーパンになったまま、一旦スカートの裾を直すと、おもむろに紙おむつのパックを取り上げ、素早く広げる。股に当てる為には、どうしてもスカートを完全にたくし上げなければならない。夏美は再度逃れる手立ては無いのだと観念すると、一気にスカートを捲り上げる。股を大きくがに股に開くと、紙おむつをさっと股間にあて、両脇の粘着テープでしっかり留める。しっかり留ったか確認するのももどかしいように急いでスカートの裾を降ろすのだった。その時、夏美の目に、いましもエレベータホールに入ってきたらしい、李の姿を認めたのだった。
(どうしてこう、嫌なタイミングの時に限って現れるのだろう・・・。)一瞬そう思った夏美だったが、すぐに笑みを作って李のほうへ軽く会釈する。
「ナツミさん、お昼、一緒にできないかと思って、来てみました。」
一瞬、夏美はどう答えようか戸惑った。しかし、脅迫者の手前、勝手に席を離れることは許されそうもないのだった。
「そ、それが・・・。今日は、事業部長に言われて、電話を待っていなければならないので席を外す訳にゆかないの。」
「そてすか。残念てす。ても、しかたないてす。」
李はさもつまらなそうな顔をしてから、「それじゃあ」と帰り掛けた。その後姿に夏美は小声になって声を掛ける。
「定時が過ぎたら行ってもいい?」
夏美はパソコン上のカメラにつけられたマイクが声を拾わなかったか心配だったが、充分に気をつけて小声で囁くように呟いたのだった。
李はその意味を判ったのか、声には出して答えずにウィンクして判ったと合図をした。
尿意が募ってきて我慢の限界が近づいてきたのは紙おむつをして2時間ほどが経過した頃だった。まさか紙おむつを嵌めさせられるなどとは思ってもみなかった夏美だったので、事前に用を足しておくことも出来なかった。それでなくても夏美は催すのが早いほうだった。夏美はいつもペットボトルのミネラルウォーターを持参していた。脅迫者は念をいれて、何度か夏美にそれも飲むように命じていた。水を飲まずに催すのを出来るだけ遅らせることも叶わなかったのだ。
カメラで捉えられる夏美の表情は、次第に募り来る尿意に必死で堪えている表情を映し出してしまっているようだった。脅迫者からのメッセージが届いた。
<そろそろ我慢の限界なのだろう。おしっこがしたいか。ならば、このカメラにしっかり顔を向けて、そのまま出すんだ。>
非情な命令だった。紙おむつで小用を足すなどしたこともない。夏美には漏れ出してしまうのではないかという恐怖心もあった。それに放出する瞬間の表情を見られてしまうことに対する羞恥心もあったのだ。それでも自然の摂理には打ち勝つことは出来ない。
夏美は観念した。
「うっ・・・。」
尿が洩れだす瞬間、思わず呻き声を上げてしまい、慌てて手の甲で口を蔽う夏美だった。
<出したな。思いっきりするがいい。お洩らし女。>
最後の詰りの言葉は夏美のプライドを大きく傷つけた。思わず眦に涙が溜まる。それでも出し続けるしかない夏美だった。
トイレを催すのが一回で済む筈もなかった。二度目のは午後になってすぐにやってきた。外に出ることも許されず、昼休みはパソコンのカメラの前で持参した弁当で済ませた夏美だった。いつもなら昼食を済ませた後、すぐにトイレに立つ夏美なので、直に尿意がやってくることは覚悟していた。
夏美が募り来る尿意に苦しんでいるのは画像から見透かされていたようだ。すぐにメッセージがやってきた。
<またおしっこ、したくなってきたか。今度はこっちがいいと言うまで我慢するんだ。勝手に出したら罰を与えるぞ。>
夏美は罰という言葉に震え上がる。この上、どんな酷いことをされるのか、考えるだけで怖ろしかったのだ。
夏美は身体をもじもじさせながら、必死で堪えていた。その時、昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴った。
すると途端にメッセージがやってきた。
<お前のトイレは今度は事業部長室だ。事業部長の部屋へ電話して来週の予定の確認をしたいからと言って、部屋へ入るんだ。おしっこは事業部長の目の前でして来い。>
今度も非情な命令だった。しかし、従うしかないのだった。
<この番号に携帯を掛けろ。事業部長の部屋へ行っている間は携帯は繋ぎっ放しにしておけ。>
パソコンから離れる際にも声で監視をするつもりらしかった。事業部長の部屋へ行く振りをして、トイレに駆け込むことも叶わないのだった。
「あの、事業部長。これから来週の予定を確認にお部屋へ伺いたいのですが・・・。あ、はい。それではすぐに参ります。」
事業部長に電話をすると、夏美は机に手を突いて、ゆっくりと立ち上がる。急な動きをすると洩れてしまいそうなのだ。
事業部長室へ歩いてゆくのも、やっとのことだった。洩れてしまわないように脚と脚を擦り合せるようにしていなければならなかった。
「事業部長、入ります。」
軽くノックをして部屋へ入った夏美に、岸川は机に座ったまま顔を上げる。
「おう。あれっ、どうした。何か顔色が悪いな。」
「い、いえっ。ちょっと風邪気味なだけです。大したことはありません。」
「そうかい、額に汗をかいているみたいじゃないか。熱があるんじゃないのか。」
「い、いえ。そんなことは・・・。あ、ああ。」
事業部長に気取られそうになって慌てた夏美は、思わず括約筋を緩ませてしまったのだ。その途端に下半身にじゅわっと生温かいものが広がるのを感じる。一旦、緩めてしまうと我慢し続けていただけに止められなくなってしまった。立ったまま洩らしている夏美は最早凍りついたように立ち竦んで声も出せなくなってしまっていた。
突然、黙ってしまって呆然と立ち竦んでいる秘書の様子をしばし怪訝そうな顔をして見つめていた岸川だったが、何か秘書の様子が変なのに気づいて立ち上がる。
「どうしたんだ。何か変だぞ。」
岸川が近寄ってきそうなのを見て、夏美は慌てた。
「あ、専務。やっぱり、私、熱があるみたいです。予定の確認はまた今度にさせてください。失礼します。」
岸川が何か言い返す間を与えずに、踵を返して部屋を出る夏美だった。急いで歩くとおむつのギャザーの脇から洩れてしまいそうな気がして、摺り足でしか歩けない。事業部長が後を追って来ないのをほっとした思いで振り返ってみた夏美だった。
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