妄想小説
謎の中国女 李
十
そしてその後は何も無かった一週間を悶々と過ごした後、とうとうあの命令の書かれた手紙を社内便で受け取ったのだった。その手紙には、例の写真を顔付きで会社内に貼り出されたくなかったら、ここに書いてある命令に従えと書かれていたのだった。そうして、いとも易々と自分の穿いていたショーツを奪われてしまったのだった。その時はとにかく今は黙って服従しておく他はないと思っていたのだ。しかし、その後、知り合ったばかりの中国人派遣社員が自分がショーツを入れて置いてきたものと思われる茶色の紙袋を手に現れた時には、気を喪ってしまいそうなほど慌てたのだった。
それは夏美には犯人からの脅しであると思った。犯人は、わざと派遣社員が通りそうな廊下へ紙袋を落としておいたのに違いなかった。それを派遣社員に拾わせ、自分の所へ届けさせて、自分を動揺させ、狼狽させて密かにほくそ笑んでいるに違いなかった。
そしてそんな事件から何も無い一週間が過ぎた今になって、再び、やっと少しずつ生え戻り始めた陰毛をまた自分の手で剃り落とせという命令なのだった。
夏美は一旦は剃刀を手にショーツを下ろしたまま、風呂場へ立ったのだった。が、剃刀を自分の股間に当てる勇気はどうしても出なかった。夏美は先輩、香澄が結婚してしまう少し前に、結婚相手も含めて数人の男性社員との合コンに誘ってくれた日のことを思い出していた。その夜、会が解散してメンバーがばらばらになった時、一人の男性社員からもう少し付き合って欲しいと誘われたのだった。香澄は婚約相手と早々に消えていたし、示し合わせたかのように他の男性社員も居なくなっていた。酒も入っていたし、一線を越えてしまうかもしれないという気がしないでもなかった。しかしそういう事は初めてだったのでその一線を踏み越える勇気が出せず、「ごめんなさい。」と言って走って一人で帰ってきてしまったのだった。
(もし、もう一度あんな風に誘われたとしても、あそこに毛が無いのを知られてしまったら、どんな変態女と思われてしまうかしれない。)
そう思うと、早く元に戻しておきたかったのだった。
夏美が、あそこをもう一度つるつるに剃り上げろと書かれた手紙を受け取った次の日、夏美の頭の中で、「命令に背けばきつい罰を与える」と書かれたことの真意が何であるのか、そればかりがぐるぐる何度も巡り続けていたのだった。
その日も事業部長は一日不在で、夏美は秘書室でずっと一人ぼっちだった。不安に怯えながら、何か物音がする度に身体をびくつかせながら、とうとう何も起こらないまま定時時刻を迎えようとしていたその時、郵便配達夫が最後の配送に現れたのだった。定年後の嘱託で雇われているらしい、人の良さそうなその初老の郵便配達人から郵便物の束を受け取った夏美は、ひとつだけ気になる封筒が混じっているのを見逃さなかった。事業部長である専務宛てへの郵便物に使い古しの使用済み封筒が使われることは殆どなかった。しかしその使い古しの社内専用便の宛先は「秘書斉藤夏美殿・親展」となっていた。
呼び出しは定時の1時間後で、場所は前回ショーツを置いてくることを命じられたひと気のない書庫にしか使われていない工場奥の建屋の同じ男子トイレだった。昨今は定時から一時間もすれば、殆どの社員は帰ってしまってそれでなくとも工場はがらんとしてしまう筈だった。
夏美は何度も逃げ出してしまおうかと悩みながら定時後の一時間近くを次第に暗くなってゆく秘書室で一人悶々としながら待っていた。そして指定された10分前に立ち上がると、手には何も持たず、一人でその場所へ向ったのだった。
何がなんでも、土下座をして頼み込んでも、もう許して貰う他はないと思っていた。相手が許してやる代わりに何かを要求するのではという事はちらっと夏美の頭をよぎった。しかしそこから先は怖ろしくて考えることも出来なかった。とにかく頼み込んで許して貰うのだ、それしか考えないことにしたのだった。
その建屋はもう薄暗くなっていて、ひと気は全く無いようだった。所々にある非常灯だけが唯一の灯りだった。男子トイレの場所は二度目なので迷うことは無かった。そおっとその回転ドアを押す。暗くて見えないので、意を決してドアの傍にある電灯のスイッチを押してみる。明るくなった内部に夏美には見慣れない男性小用便器が妙に目立って見え、それを目にすることが恥かしかった。
今度もそっと個室の戸を開いてみた。二つある奥の方を開いたところで、便器の蓋の上に手紙が畳んで置かれているのが判った。夏美はおそるおそるそれを取り上げ広げてみる。
(ドアの裏側の取っ手に下がっている袋の中のアイマスクを嵌め、手錠を後ろ手に掛けて待つこと。)たったそれだけの文章がワープロで書かれているだけだった。振り向いて見ると、確かにドアの裏側に衣服などを掛けるらしい取っ手があって、そこに紐の付いた布袋がぶら下がっていた。手に取るとずしりと重く、ガチャリという硬質な音がした。
腕の時計を見ると、約束の時間まであと1分しか無かった。何度このまま逃げてしまおうと思ったかしれなかった。その度に、(もうこれで終わりにして貰わねば)というぐらつきかけた決意が戻ってくるのだった。
片腕に手錠を嵌め、その締まる様子を確認してから、頭のアイマスクを目の部分まで降ろし、両手を背中に廻す。もう片方の手首に手錠を掛けるのはどうしても躊躇われたが、外に物音がして、はっとしてつい手錠を嵌めてしまっていた。「きつい罰」という言葉が夏美の頭の中でぐるぐる廻っていたのだ。
すうっという風を頬に感じて、個室の扉が外から開けられたのを感じた。アイマスクで目隠しされた夏美はトイレの奥の壁に背を付けて、ドアのほうを真っ直ぐ向いている筈だが、扉の向こうに現れた者の姿を観ることは出来ない。
「あ、あの・・・。言いつけ通りにやってきました。どなたか判りませんが、もう許してください。わたしにはもうこれ以上のことは出来ません。」
しかし、夏美に返事は無かった。ごくりと生唾が夏美の喉を下ってゆく。近寄ってくる気配だけが感じられた後、スカートがさっとたくし上げられたのが判った。(どうしよう)と思っている間に、さっとショーツの端をつかまれ、膝まで下ろされてしまう。夏美にはただされるがままになっているしかなかった。
何者かの手が剥き出しの股間に添えられ、指の腹らしきものがなぞり上げてきた。
「ああ、そこは処理出来なかったのです。もうこれ以上は無理です。どうか許してください。」
沈黙が流れた。その静かさが、却って夏美を詰っているようだった。
沈黙が不安を煽って、夏美が相手に何かを言わなくてはと思った瞬間に動きがあった。突然首の周りを何かで蔽われたのだ。それはなにかのベルトのような物に思われた。夏美が想像したのは犬用の首輪だった。それには鎖のようなものが繋がれているらしく、チャラチャラ音がしていた。と思うと、それがグイっと引かれ、首が苦しくなる。首輪に繋がれた鎖の先が上のほうで何処かに繋がれたらしかった。上から吊られるようになって夏美は身動きが出来なくなる。
夏美が突然の拘束にパニックになりかけた時、今度は下半身の中心に違和感を感じた。何かひんやりとした冷たいものが陰唇に塗り込められたように感じた。が、その一瞬後にそれは皮膚をかっと熱くさせ始めた。熱いというより、疼いてくる感じだった。しかしそれは徐々に掻痒感へと変わってゆくのだった。
「何、なにをしたの・・・。ああ、変。何、これっ・・・。ああ、痒い、あそこが痒いわ。」
突然募ってくる掻痒感に夏美は剥き出しにされている両腿を擦り合わせながら堪えている。しかし、痒みは容赦なくどんどん強くなってゆくのだった。
その時、バタンと音がして個室の扉が再び閉められたようだった。足音が何者かが去ってゆくことを夏美に教えていた。痒みを自分ではどうすることも出来ない夏美を残していく。それが罰なのだと知るのはすぐのことだった。
「ああ、痒い。もう堪らない・・。ああ、気が狂いそうなの。何とかして、して下さい。」
再び扉が開かれる音を耳にしたのは、一人残されてから小一時間が経過していたように夏美には思われた。背中で繋がれた手錠から指先を尻たぶを伝って何とか痒い部分に届かせようとするのだが、会陰まで届かせるのがやっとで、一番痒い陰唇までは届いてくれない。身体を反らせて何とか指先を伸ばそうとするのを首輪が邪魔してそうはさせてくれないのだった。
「ああ、もう駄目っ。気が狂っちゃう。痒いわ。あそこが痒くておかしくなっちゃう。何とかして。手錠を外して・・・。お願い、お願いだから。もう駄目っ。」
必死で懇願する夏美だったが、相手は無言だった。
「ああ、私が悪かった。悪かったのです。もう何でも言うことを聞きます。お言い付け通り、あそこの毛も全部剃り上げます。つるつるにします。約束します。だから・・・、だからもう、この痒みから救ってください。」
とうとうそこまで口にした夏美だった。その時、突然、目の前でウィーンという軽いモーター音がし始めるのを夏美は耳にした。何事と不安に思っている夏美はそれが突然股間に押し当てられたことで、それが何かを悟った。実物を見たことはなかったが、その姿を女性誌の通販の頁で目にしたことはあったのだ。それを初めて目にした時には、恥かしさについ目を逸らしたのだった。
しかし、その先端から伝わってくる強い振動は、痒みに苦しめられていた夏美を一気に解放した。
「ああ、気持ちいいっ・・・。もっと、もっと強く、押し当ててっ・・・。」
思わず、脚を少し広げると、自分から股間を突き出すようにして身を反らせる。
「ああ、もっと・・・。」
しかし、夏美が気持ちよさに酔いしれ始めたところで、そのモノは一気に夏美の股間を離れてしまったのだ。
「えっ、ど、どうして・・・。ああ、止めないで。お願いだから。」
バイブの振動が無くなると、それまでよりも更に強い痒みが夏美の股間を襲う。愉悦に酔いしれていただけに、そのまま放置されるのが却って辛くなってきたのだ。
「お願い、それ、それを当ててえ。止めないでえ。お願いだから。」
もう泣き叫んでいるに近かった。
夏美の身悶えに、相手も情けをかけたくなったようだった。指で陰唇の上のクリトリス部分が摘ままれ上に持ち上げられた。かと思う間もなく、今度は下からバイブの先が突き上げられてきた。それはすっかり濡れそぼっていた夏美の陰唇にすっぽり埋まっていった。
「あうううっ・・・。」
痒くて堪らない肉襞を膣の内側から刺激されて、夏美は完全に身体を支配されていた。
「いい・・・、イクっ、イクうぅぅぅ・・・。」
夏美自身もバイブの振動に合わせて腰を振り始めていたのだった。
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