妄想小説
謎の中国女 李
十六
「それじゃ、やり方はちゃんと理解したな。」
パソコンの画面に向う李の後ろで、指導をしていた影山が念押しの確認をする。
「はい、わかりましたてす。」
影山に叱られるのが怖い李は、びくびくしながらもそう答えたのだった。目の前の画面には、困ったような表情の夏美の顔が映っていた。その表情の理由は李にはよく判っている。その夏美をこれから更に追い詰めようというのだった。
「じゃあ、やってみろ。」
影山が顎で促す。
李が、キーボードを叩くと画面の下のメッセージウィンドウに文字列が流れる。それは夏美のパソコンにも流れているのと同じ物である。
<おしっこがしたくなってきたか。>
画面の中の夏美が上目遣いに困ったような表情をしたあと、目を伏せて小さく頷いた。
李は更にキーボードを叩く。
<声に出して言ってみろ。>
顔は伏せているが、唇を噛んでいるのが李にも判った。しかし夏美はその後小さな声を発した。
「お、おしっこがしたい・・・です。」
<もう、洩れそうで我慢が出来ませんとちゃんと言え>
画面のメッセージをちらっと見た夏美はもう泣きそうだった。
「もう・・・、もう洩れそう・・・、洩れそうで、我慢が・・・出来ません。ううっ。」
<ちゃんと顔を上げろ。出す時に今から洩らしますと声に出して言うんだぞ。>
「うう、そんな・・・。わ、わかりました。・・・。ああ、もう、もう駄目っ。ああ、今から・・・、今からお洩らしします。」
そう口にすると、惨めそうな顔が歪んだ。
「ううっ・・・。」
暫く歪んだ顔が続いた後、強張った顔が少し緩んだ。小さな溜息が夏美の唇から洩れる。
<済んだか。>
「は、はいっ・・・。」
恥ずかしそうにまた下を向いてしまう夏美だった。
<今した事を、ちゃんと口に出して言え。>
「お・・・、おしっこを、おむつの中に洩らしました。」
<自分の名前をちゃんと頭につけてもう一度言うんだ。>
「わ、わたくし、斉藤夏美は・・・、お、おしっこを、おむつの中に洩らしました。」
<立ってスカートを捲って、おむつを見せろ>
「わかりました。」
もう抗うのを観念したかのように、素直に立ち上がるとスカートの両脇の裾を持つ。ゆっくり持ち上げてゆくと、おむつを穿いた下半身が丸出しになる。
<おむつを外せ>
その命令に一旦は怒りの表情を見せかけた夏美だったが、すぐにうな垂れて、命令に従うのだった。既に小水は吸収帯に吸い込まれていたようだった。
<カメラにそいつの内側を翳して見せろ>
もう何も抗わずに素直に言うとおりにする夏美だった。
「よし、録画停止ボタンを押すんだ。」
李の後ろで影山が命令する。李は、指示されたボタンを押し、画面の録画を停止させる。後の編集作業はちょっと難しいから俺がやるので、換われ。」
そう言うと李を脇にどかせ、影山はパソコンに向って操作を開始するのだった。
カメラに自分がしていたおむつの内側を映して暫くしてから命令のメッセージが何も流れなくなった。ずっとそのままにしている訳にもいかない夏美は、我に返って、おむつを何とかしなくてはと辺りを見渡す。給湯室にお茶殻専用のゴミ袋があるのを思い出して一旦、おむつを丸めて机の下に隠すと、エレベータホールの向こうにある給湯室へ向う。急いで戻ってきて、ゴミ袋にまるめたおむつを入れると、しっかり結わえて封をする。しかし、その後、その捨て場に困った。物がものだけにやたらなところへは捨てられない。女子トイレの汚物入れの中の考えたが、掃除婦が捨てる時に怪しんで中を確認しないとも限らない。このフロアでは誰が捨てたかすぐに判ってしまうのだ。
夏美は建物の外に、産業廃棄物専用の大きなゴミ捨て場があるのを思い出し、そこへ持ってゆくことにした。
もう一度パソコンのモニタ画面を注視する。そこには何もメッセージが出ていない。それを、もう自由にしていいと解釈して、抽斗から丸めたショーツを取り出すと、おむつをいれたゴミ袋と一緒に持って秘書室を出たのだった。
その夜の夏美は、心の中が激しく燃え滾っているかのようだった。縛り終えるのを待つのももどかしいかのように、両手が背中で括られたと判るや否や相手を求めて飛びついていた。目隠しで見えないのと、両手が自由でないことから、いつも身を任せているばかりなのだったが、この日は積極的に相手の身体を求めていることが行動にも表れていた。見えないながらも、相手の唇を探り当てると、激しく吸い付き舌を絡めてしゃぶりつくのだった。
「ああ、もっと、もっと激しくしてっ。ああ、もっと・・・。」
夏美と身体を合わせる際に、夏美に目隠しをすること、夏美を縛って身体の自由を奪うことは、今では二人の間の暗黙のお約束になっていた。夏美は一度も嫌とは言わなかったし、何故そうするのかも訊いてこなかった。しかし、本当は、李が影山からきつく言い渡されていた為だ。しかも李は夏美がそれを歓んでいるらしいことが不思議だった。確かに夏美は縛られて弄ばれると余計に燃える質のようだった。
いつもは乳首を舌でなぞられて、身悶えして喜ぶだけの夏美だったが、この時は夏美のほうから乳首を探ってきた。それで、李はブラウスを脱いで、ブラジャーも外し、裸の胸を夏美にゆだねた。いつもは跨られているだけの夏美が両手を縛られたままの格好で李の上に馬乗りになって、李の乳首を吸い始めた。李も初めての経験だけにその甘美な愉悦に酔いしれた。次第に乳首だけでは飽き足らなくなってきたらしい夏美は唇を下のほうへ滑らせていって、臍から更には李の下半身に頭を移し、スカートの中に頭を突っ込んで内腿を舐め始めた。あまりに性急にしゃぶりつくので、とうとう李はショーツを下ろすことにしたのだ。夏美には気配でそれが判ったようだった。李がショーツを脱ぎ取るや否や、夏美は李の股間にむしゃぶりついた。夏美の舌が李の陰唇を捉えた瞬間、一瞬動きが止まった。が、すぐにクニリンガスを再開した。
李には夏美が相手もそこを無毛にしていることに気づいたのだと判っていた。しかし、判ってからは一層激しく燃え上がってきたようだった。
「あれ、あれを着けて。この間のあれっ。二人で繋がるもの。」
夏美には目で見ていないので、何なのかははっきりとは判っていない。しかし、女性が股間に装着して、一緒に繋がる道具なのだろうとは想像していた。
夏美に求められて、李は用意してきた双頭のディルドゥを手に取った。夏美の唇を一旦股間から除けさせ、唇同士でキスをするようにしながら、李は素早くそれを腰に装着した。それから夏美の両脚を膝のところで抱えると、大きく股を割らせ、既にしとどに濡れそぼっている股間に一気にそれを突き立てた。
「あううっ・・・・。」
受容れた夏美は激しく腰を揺さぶり、李のほうへも振動を伝える。二人の腿と腿がぶつかりあいながら、硬いそのものは、二人の陰唇の中で暴れるのだった。
ふたりがほぼ同時に果てた後、李が自分の股間を拭ってくれているらしい間に、夏美は目隠しをしたまま、ふと口に洩らした。
「貴方もあそこを剃ってくれていたのね。私を気遣ってなのね。優しいのね。」
李は返事をせずに黙っている。夏美との行為の間、決して口を利いてはならないと命じられていたこともあるが、自分も男に剃られたのだとは言えなかった。ましてや、夏美の股間を剃り落としたのは自分なのだ。その事に触れること自体がタブーなのだった。
「ああ、今日は忘れたいとても嫌なことがあったの。おかげで気がすっきりしたわ。何とか立ち直れそう。」
それだけを言うと、夏美はどんな嫌なことがあったのかは口にしなかった。李は影山に従ってずっとモニタ越しに観ていたので、全てを知っていたが、勿論、そのことは口にしない。夏美の両手の縄を少しだけ緩めると、いつものように音を立てないでそっと立ち去るのだった。
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