妄想小説
謎の中国女 李
十一
夏美はどうやって戻ってきたのか、自分でもはっきり憶えていなかった。我に返ると自分のアパートだった。手には髭剃り用の剃刀とスプレー式のシェービングジェルの缶を持っていた。確か、両手を縛っていた縄が緩んできて、漸く自分の手でアイマスクを外した時に、目の前に置かれているのを発見したのだったように思えた。それの意味は疑いもなかった。自分の股間に手をやる。ショーツを透して、チクチクする生え始めの毛根が感じられた。それを今にも剃り落としてしまわねばならない。そう決意した夏美だった。
「さあ、パンツを膝まで下ろすんだ。そしてスカートを捲って見せてみろ。」
影山の言葉に李はうな垂れながらも素直に従う。影山の前で、陰部を晒すのは、何度そうさせられても恥かしい。それでもさすがに、躊躇はなくなっていた。
素早くスカートの後ろに手を突っ込むとストッキング毎、一気に膝の上まで引き下ろす。影山のほうを向いたままスカートの前をたくし上げる。
「漸く素直に命令が聞けるようになったようだな。今度はきちんと、つるつるに剃り上げてきたな。どうだ、毛のないおまんこは。この前のあいつのと比べてみて判ったか。ほらここに写真がある。観てみろ。あいつのとお前のはどう違うか判るだろう。さあ、どう違うか、お前の口から言ってみろ。」
影山が差し出したのは、携帯の画面に映っている、李が撮らされた夏美の剥き出しのあの部分だった。
李にははっきり判っていた。しかし、それを口に出して言うことはさすがに出来ない。
李は、一週間前、影山に言われて夏美を誘き出し、アイマスクをして手錠で拘束された夏美を辱めた時のことを思い出していた。抵抗出来ない夏美のスカートを捲り、パンティを引き下げて、毛の無いあそこを剥き出しにさせた時、李ははっきり見たのだ。夏美のあそこは、真一文字の縦の割れ目だけだったのだ。それはまさしく童女のそれだった。しかし、自分の毛のない割れ目からは、いつもビラビラの肉襞がどうしても覗いてしまうのだった。それを影山が言っているのは間違いなかった。
「何故、そうなっているのか判るか。・・・。それは、お前が淫乱だからだ。」
「い、嫌っ。言わないで。いわないて、くたさい。」
「お前はすぐにパンツの裏側を濡らしてしまうだろ。それもお前が淫乱な証拠だ。割れ目から、いつもビラビラがはみ出てしまっているから、パンツが濡れてしまうんだ。」
「ああ、言わないて、くたさい・・・。」
李は恥かしさに目を潤ませてうな垂れているしかなかった。
「さて、あいつのほうはどうかな。お前から問い合わせてみろ。ほら。」
そう言って影山が渡したのはさきほど見せられた携帯電話だった。
「この写真を写メで添付して、この未送信ボックスに入っているメールを送るんだ。」
李が渡された携帯の未送信ボックスを開いてみる。
(こんな写真をばら撒かれたくなかったら、今すぐスカートを自分で捲ってあそこの部分を写真に撮って送り返せ。5分以内に返事が返ってこなければどうなるか判らんぞ。)
李が斜め読みした文章はそんなものだった。宛先は秘書斉藤夏美となっていた。
チャラン。
きっかり5分後に影山の携帯が着信音を発した。影山が黙って携帯を李のほうへ押しやる。李は仕方なくそれを取り上げると、開いて返信を確認するのだった。
映っていたのは、スカートを捲り上げ、ショーツが丸見えになっている添付写真だった。ショーツは薄手のもので、クロッチ部分が二重になっていないタイプのものだ。当然ながらその下の恥丘が透けてしまっている。縦真一文字の毛の無いあそこがはっきりと透けて見えていた。
先週の辱めが相当、夏美には効いたようだった。すっかり性の奴隷になって言われたまま服従していることがはっきり判る。ショーツの下に透けてみえる恥丘には剃り残しは一本も無いようだった。生え始めてきた短い毛があれば、ショーツの薄い生地から梳け出てしまうことを李は経験から知っていたからだ。
「ああ、夏美さん。可哀そう・・・。」
「可哀そうだと。そんな目にあいつを遭わせたのは、お前じゃないか。お前がアイツのあそこの毛を剃って、その後、絶対服従するように誓わせたんだろ。」
影山の非情な言葉は、李の胸にぐさっと突き刺さった。確かにそうなのだった。影山に命じられたとは言え、夏美に首輪を巻いて自由を奪い、股間に薬を塗りたくって我慢出来なくさせ、バイブを突き立ててイカせるようにしたのは李自身の手によるものだったのだ。
「夏美への責めはこれで終りじゃない。今度は次のメールを送るんだ。」
李は影山に渡された携帯の未送信ボックスを再び探る。確かにそこにはもう一通のメールドラフトが収納されていた。
「ショーツも脱いで撮り直せ。机の角にあそこを擦り付けて撮るんだ。奴隷の印の首輪についた鎖も、嵌めている証拠として写るようにしておけ。今度も5分以内だ。」
李はこんなメールで秘書の夏美が影山の遣りたい放題に服従させられているのが信じられなかった。しかし、李が送らされたメールの5分後に返されたものを観て、信じる他はないと悟ったのだった。
「どうだ、送られてきたものは。ちゃんとあの部分が写っているか。」
影山は携帯を李から取り返して自分で見ることはしなかった。李に写っている様子をわざと話させるのだった。それは李への拷問でもあったのだ。
「う、写ってます。鎖も・・・。」
「割れ目から何か覗いているか。」
これが影山が一番遣りたかった李への辱めなのだと、判っていた。
「あの・・・、な、なにもうつてません。」
「じゃあ、どう写っているんだ。」
「あ、あの・・・。割れ目だけてす。割れ目の間から何もはみ出ていません。」
「ふふふ・・・。お前ほど淫乱じゃなさそうだな。それじゃあ、秘書室へ行って様子を観てきて貰おうか。おっと、その前にもう一通送っておくんだ。」
李は再度、携帯の未送信ボックスを開く。
(脱いだショーツは今日一日中机の上へ置いたままにしろ。隠すんじゃないぞ。命令に従うかどうかは俺には判ってしまうんだぜ。)
李は秘書室へ向って階段を昇りながら、先ほど送ったばかりのメールの文章を頭の中で思い出していた。
(夏美はちゃんと命令に従うのだろうか。本当にショーツを机の上に出しっ放しにしているのだろうか。)
李が階段からエレベータホールに出て、ガラス越しに夏美の顔を見つけて目が合った瞬間、夏美のほうが一瞬目を逸らして俯いてしまったのを見逃さなかった。夏美は明らかに狼狽している風だった。
「ナツミさん。また来てしまいました。お邪魔じゃないてすか。」
「ああ、李さんね。いいわよ。今は専務はお出掛けしてていないので。」
そう言って、夏美は李の為に空いていた椅子を引き寄せて勧める。何気なく薦められた椅子に座る前に、李はちょっと背伸びをして夏美の机の上を一望する。そして、机の右隅、薦められた椅子からは一番遠く、重ねた書類の陰で見えにくい位置に白い布の塊が丸めて何気なくそっと置かれているのを確認する。李は、それだけを確認してしまうと、素直に薦められた椅子に腰掛ける。
夏美は首にスカーフを巻いていた。制服の付属品ではないが、秘書の服には似合っている。しかし、李はそれが影山に嵌めることを強要された首輪を隠す為であることを知っていた。夏美の背中にはその首輪から鎖が下がっていることも確信していた。
「ワタシ、この会社でナツミさんしかトモタチ居ないてす。仲良くしてくたさいませか。」
この言葉に、夏美の顔が心なしか綻んだように思われた。
「私こそ、お願いするわ。秘書室に居ると、なかなか友達が出来にくいの。いつでも話に来てね。」
そう言いながらも夏美は落ち着かな気だった。李は素知らぬ顔をして夏美の腰元に目をやる。李の穿かされているものほど短くはないが、タイトで短めの秘書専用の制服のものだ。そのスカートの下に何も身につけていないのを李は想像した。その為なのか、夏美は両膝をぴったりくっつけるようにして座っていた。
(そんなに脚をぴったりくっつけているけど、その下はノーパンなんでしょ。しかもお股はつるっつる。あんたも感じてきて、そのうち割れ目から肉襞を覗かせるようになるのよ。)
つい、純真無垢にも見える夏美の剥き出しの太腿を見下ろしながら、李はそんな風に、嗜虐的に夏美を辱める自分をちょっと想像してみるのだった。
男子トイレに呼び出し、掻痒クリームを塗りたくって焦らし、戻ってきた時の夏美の毛の無い股ぐらは、陰唇がいやらしく剥き出しになっていて、クリトリスまでもがその頂きを突き出してしまっていた。そのあられもない姿を李は思い起こしていた。
(あなただって、興奮してくれば、同じになるのよ。私だけが淫乱なのじゃないわ。)
「ねえ、ノーパンにさせられているって、どんな気分?」
思わず、そう訊いてしまいたい気持ちに駆られてしまう李だった。今の李は影山からショーツを返して貰っている。自分のほうはパンツを穿いているのだと思うと、思わず優越感を抱かずには居られないのだった。
李は初めて夏美に逢った頃とは違う感情が芽生え始めていることに気づいていた。夏美の毛を剃られたつるつるの童女のような陰唇と比べられて、自分の陰唇はいつも軟体動物の触手のようにいやらしい肉襞が覗いているのを影山に詰られて、劣等感を抱き、しかしその後に夏美を自分の手で辱め、貶めることで、李の中で何かが癒されてきていたのだ。
李は流し目で机の反対側の端を夏美に気づかれないようにちらっと見る。そしておもむろに手帳をポシェットから取り出すと、いきなり立ち上がり、夏美の机の反対側の奥に手を伸ばしたのだ。夏美の顔が凍りつく。
「何するのっ。」
「ちょっとペン貸してくたさい。」
李の手は真っ直ぐに夏美が目立たないようにそっと丸めてそれとなく置いておいた下着に伸びていったように見えた。しかし、寸でのところでその白い布切れを掠めてその隣にあったペン立てから夏美のボールペンを取り上げたのだった。夏美の顔が真っ青になるのを確認して、李は軽い侮蔑の笑みを浮かべていた。
「あ、あの・・・、ペン、だったら、言ってくれれば、もっと書きやすいのを貸してあげたのに・・・。」
かろうじてそう言って何かを誤魔化そうとした夏美だった。その夏美の目が李を見つめながらも机の端のほうへ泳いでいた。
「夏美さの誕生日はいつてすか。教えてくたさい。」
「えっ、わ、私の誕生日?」
「そてす。誕生日に何かプレゼントしたいてす。」
「あら、いいのよ。そんな心配しなくて。」
「いえ、ともたちてすから。何か贈りたいてす。あ、そうた。日本の女性は、男性から下着贈られると喜ぶと本に書いてありました。そうなんてすか。」
突然、下着のことに話が及んで、夏美は顔を赤らめる。しかし、何か気取られないようにと、必死で平静を装おうとしていた。
「そ、そんなこと。わ、わたしには判らないわ。そ、そういう人もいるのかもしれないわね。」
夏美は狼狽している為にどうしてもどもり勝ちになってしまう。
にやりとした李は更に詰め寄る。
「夏美さんはどんな下着付けてるんてすか。」
これは今の夏美が一番して欲しくない質問だった。スカートの下に何も着けていないだけに、冷静に答えることが出来ない。何か言えば取り乱してしまいそうだった。
「夏美さん。どかしましたか。顔色が真っ青てすよ。」
「えっ、な、何でもないわ。あ、そうだ。私、急用思い出したの。すぐ行かなくちゃ。」
夏美は李を促すように先に立ち上がる。
「そ、てすか。私じゃここでもう少し休んでいってもいいてすか。」
「えっ、そ、それは・・・。えっと・・・、ええ、いいわよ。」
「そてすか。それじゃ、急いで行ってくたさい。」
夏美は咄嗟に李を追い出す口実で言った嘘の手前、行かない訳にはいかなくなってしまったのだ。机の端をちらっとだけ気づかれないように確認すると、秘書用のノートを持って立ち上がる。
「あの、すぐに戻ってくるから。」
「あ、そてすか。それじゃ、暫く待っていようかな。」
「そ、それじゃあね。」
まさか李に居座られるとは思っていなかった夏美だったが、用があるのは嘘だったとは今更言えなかった。後ろ髪を引かれる思いをしながら、エレベータホールを通り抜け、階段を音を立てながら降りていくのだった。
夏美の姿がエレベータホールから消えるのを見届けると、李はすくっと立ち上がり、机の端の白い布切れを取り上げる。広げるとシルクの滑らかなショーツだった。クロッチの部分を内側にして丸め込まれていたのを逆にひっくり返して広げる。その部分は李が予想したとおりだった。内布の部分が薄く沁みが付いている。じっくり観ないと気づかないほどの薄いものだったが、確かにそれは女の秘密を包んでいた証のようにはっきりと観てとれたのだった。
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