妄想小説
謎の中国女 李
十三
夏美は何故、股間の陰毛を剃り落としているのか言わなかった。李のほうも何か事情があるのだろうと言ってそれ以上は訊かなかった。しかし、それだけにどうしてそういう事になったのか色々想像されることを思うと、却って余計に恥かしかった。あの時ノーパンになって、ショーツを手に握っていたことも李は何も訊いて来なかった。夏美には言い訳の出来ないことだった。
李に秘密を知られてしまったのは、夏美には弱みを握られたも同然だった。しかし、夏美にはプライドがあった。李に全てを打ち明けて相談に乗って貰うのは考えられないことだった。なにせ、自分は正社員であって、事業部長の秘書という立場なのだ。派遣社員でしかなく、パートの身分の李に何か出来る筈もなかった。しかも日本という国の中での在日中国人なのだ。夏美は知らずしらずのうちに中国人を自分より下に見下していた。それでいて、秘密を知られたことを無意識のうちに弱みに思っているのだった。
李のほうは、あの日、夏美がノーパンで居るように命じられているのは知っていた。実際、夏美の席まで赴いて、夏美が命じられた通り、机の上にショーツを丸めてではあるが剥き出しで置いているのも自分の目で確認したのだった。そればかりか、夏美が居なくなった一瞬をついて、そのクロッチの内側の汚れている部分まで確かめたのだった。だから、影山から夏美が事業部長とやってくると告げられた時、薄々ノーパンのまま来るのではと思っていたのだ。しかし、脱いだショーツを手の中に持っているとまでは思いもしなかった。李が差し出した書類ファイルを受け取るのに伸ばした夏美の手の中に、何やら白いものがちらっとだけ見えた時に、李はすぐに全てを理解したのだった。おそらくは何処かで穿こうと持って出たところを事業部長に呼ばれてしまったのに違いないと推理したのだ。だから、夏美はそのショーツを皆に気づかれないように隠すだろうと確信していた。案の定、夏美は、皆の目が自分に注がれていない一瞬を突いて、掌の中のショーツをスカートのウェスト部に挟み込んで隠すのを後ろからしっかり見ていたのだ。自分の代わりに夏美が脚立に昇らされて、書棚の最上段に手を伸ばさざるを得ない状態の時に、ベストがずり上がって、ショーツを挟み込んだ位置をしっかり確認した李だったが、わざとよろけた振りをして、そのショーツを弾き飛ばすのにあんなにも上手く成功するとは自分でも思ってもみなかった。そうしようと思い立ったのは今になって思えば何故だったのか李自身でもよく判らない。発作的なアイデアだったのだ。窮地に立たされている夏美を更に困らせてやりたいという衝動にかられたとしか言いようがなかった。恥ずかしい思いをさせられている夏美の困った表情を観てみたかったのかもしれなかった。
二人きりになった時、夏美の股間に手を伸ばしたのは衝動的なものだった。何故か夏美は抗えないと確信していた気がするのだ。その確信どおり、夏美はスカートを捲り上げられて、無毛のその部分を指で蹂躙されても身動きひとつ出来ないでいた。李には、夏美の恥かしい秘密を黙っていてやる代わりに、どんなことをしかけても夏美は隷従せざるを得ないだろうと確信し始めていたのだ。
影山の元へ一人戻ってきた李は、影山が全てを見透かしたような目付きで自分を見つめているのにすぐに気づいた。
「上手く夏美を手懐けたみたいだな。」
「とういう事てすか・・・。」
とぼけた李だったが、自分たちのことをずっと見張られていたような思いにかられた。
「夏美の知られたくない秘密を握った訳だ。あの女に何をしたって、し放題だろ。」
(まさか、アタシが夏美さんの股間に手を伸ばしたのを見ていたのでは・・・。)
「まあ、いいさ。それを今度試させてやる。」
その影山の言葉が現実になったのは、それから一週間後のことだった。このところ、李は毎週のように影山に呼び出された。会社には営業に出ていることにして、命令に従って出向いていたのだった。会社の方からは、何か新たな受注が得られそうな気配で、猛烈にアタックを仕掛けているのだろうぐらいに思われていたようだった。
あの日と同じ様に、李は物音を立てないようにそおっと秘書室の夏美の方へ近づいていった。秘書室に夏美は一人だった。困ったことを思い悩んでいるかのように俯いていた。
「ナツミさん。」
李の声に夏美は飛び上がらんばかりに驚いた様子だった。咄嗟に何かを隠すように李の前に立ちはだかる。それが何を示しているのか李には想像が付いていた。ちょっとだけ身体をずらすことで、夏美の背後の机の隅に、丸められた白い布切れが置かれているのがすぐに観て取れたのだ。
「今もパンティ、穿いていないのてすね。」
射竦めるような鋭い視線を夏美に投げかける。
「あ、あの・・・。お願い。このことは、誰にも言わないって約束してっ。」
夏美は目を潤ませながら許しを請うような表情で李の手を取って言うのだった。その手を振り払うように突き放すと、李はその手を真っ直ぐ夏美のスカートの股間の部分に伸ばしたのだ。恥丘を包みこむようにしてスカートの上から夏美の股間を掌の中に掴む。
「うっ・・・。」
李の動きには有無を言わせないような強引さがあった。夏美は両手を横に垂らして、李の蹂躙を受容れる。それはそうしなければ秘密を守って貰えないからという空気を醸していた。
李の指先がスカートをするするとたくし上げる。すぐにその指先は裾の端を手繰り寄せ、更には裸の太腿の内側へ滑り込んでくる。李の指が陰毛を失ったすべすべの陰唇に辿り着くのはあっと言う間だった。人差し指と中指の二本が、二つのこんもり膨らんだ陰唇の間の割れ目をなぞり上げてゆく。
「ああ、駄目っ。ゆるしてっ・・・。」
そう言いながらも夏美は息を荒くし始めていた。
「ここを、こうして、つるつるに、剃っていなさいと命令されているのてすね。」
李は一言を発する度に、陰唇を撫で上げながら、ゆっくりと詰るように話した。
「ああ、何も訊かないで。お願い。そして誰にも言わないで。」
「いいてす。その代わり、そこ、見せて。ちぶんでスカート、捲って、見せて。」
李が命じていることが理不尽であることも考えられないほど、夏美は気が動転していた。早く窮地から脱したいとの思いから、李の言う通りにスカートの前に両手を掛けるとそのまま上へ引き上げた。恥かしさに目を開けていられなかった。李がしゃがみ込んで陰唇に顔を近づけてきているのが気配で感じられた。しかし、夏美には身動きすることも出来なかった。
その陰唇に生温かい感触が走った。
(ま、まさか、そんなこと・・・。)
夏美には目を開けて見る勇気がなかった。その感触は目の前の李が唇を押し付けているとしか思えなかったのだ。その一瞬の後には、ぬるっとしたものがつるつるの割れ目に忍び込んできた。少しざらっとした感触で、舌を差し入れられているのだと気づいた。その不思議な感触は初めての経験だったが、驚くほど甘美なものだった。
「ああ、どうにかなっちゃう・・・。」
思わず大声を挙げそうになって、手の甲で自分の口を蔽う夏美だったが、無意識のうちに両膝を外側に大きく広げてしまっているのだった。
夏美は、定時の一時間後にあの建屋に来るよう李に言われていた。忌まわしい記憶しかない、夏美の職場のある建屋だ。その二階の奥の部屋と指定されていた。嘗てはこの会社の子会社が営業マンの支所として事務所を置いていたのだが、リストラの嵐の中でその事務所も閉鎖され、今は空き部屋になっている筈だった。空き部屋なのは、その部屋どころかフロア全体が空きになっていて、使われているのは李や影山が居る四階の事務所と1階の書庫のみなのだった。
定時の1時間後は既に日が落ち始めていて、薄暗くなり掛けていた。ひと気のないフロアは静まり返っていて、怖いようだ。空き部屋が続く廊下の奥にその指定された部屋はあった。会議室だった他の部屋より若干広めの、事務所として使われていた場所だ。夏美はまだ人が居る大分前に一度、訪れたことがあるが、その後ずっと来ていない。
ドアノブをゆっくり廻すと、キーっと鈍い音がしてドアが開く。施錠はされていないようだった。机などの什器は全て持ち出されていて、何も無いガランとした絨毯張りのフロアにところどころ、通信用の配線だけがとぐろを巻いて置かれている殺風景な場所だった。灯りは点いてなくて、非常口を示す非常灯しかない。その薄暗い部屋の中にゆっくりと踏み込んでいった。
突然、夏美は後ろから何かで目を塞がれた。幅の広い布のような物の様だった。
「李・・・ちゃん、なの?」
「シッ・・・。」
おそらく李は部屋の中に何本かある柱の裏に隠れていたのだと思われた。夏美は頭の後ろで目隠しがしっかりと結わえ付けられるのを感じた。
「じっとしていてくたさい。」
妙な抑揚の特徴ある李の言葉が背後から響いた。その李が後ろから手を伸ばしてきて、夏美の胸元でブラウスのボタンをひとつひとつ外してゆく。制服の上着とブラウスが一緒に肩からするりと抜かれるとそのまま床へ落ちていった。李の手が夏美の裸の肩から二の腕を滑ってゆき、両方の手首まで降りてゆくと、両腕が背中のほうへ引っ張られ交差させられる。
「そのままて、うごかないて。」
夏美は命じられた通りにじっとしている。その夏美の手首に何やら太い紐のようなものが巻かれていった。そしてあっと言う間に夏美は後ろ手に縛り上げられていた。
夏美はこれからされることへの不安に、思わず唾を呑みこむ。
夏美の両手の自由を奪うと、李は真正面へ回ったようだった。ブラジャーのストラップがカップから外され、次に背中のホックが外されると、するっとブラジャーが剥ぎ取られてしまう。身体つきの割りには豊満なほうの夏美の乳房がぶるんと揺れた。李の手がするすると背中から腰へ滑ってゆき、スカートのホックを捉える。指先でそれが外されると、腰廻りがすっと緩くなる。李が夏美の身体を押しながら後ろへ促すので、夏美は後ずさりをする格好で後退してゆく。夏美が足を動かす度に、腰からスカートがずるり、ずるりとずり下がってゆく。あるところで、ストンと床まで落ちてしまい、夏美は足を上げてスカートから足を抜く。ショーツは元から穿いていないので、最早全裸状態だった。脹脛の後ろ側が何か柔らかいものに触れた。ビニルレザーを張った長椅子の様だった。そのままその上に縛られた両手を下にして背中から倒れこまされる。
無防備な乳房の中心がいきなり強く吸われた。その感触から、夏美は自分の乳首が硬く勃起してしまっていることを悟った。
「ああ、いいっ・・・。もっと・・・、もっと強く吸って・・・。」
両手を縛られて抵抗出来ないことが、却って夏美を大胆にさせていた。
李の片方の手が夏美の無毛の陰唇に添えられた。割れ目に沿って人差し指が当てられ、今にも割り込んでこようとしていた。
「ああっ・・・。」
夏美は声にならない呻き声を上げる。くの字に折り曲げられた李の人差し指が、貝をこじ開けるかのように内陰唇を探り当てると、ピチャッと卑猥な音が静まり返った空き部屋に響き渡る。その音を合図にしたかのように、コリッと尖った夏美の乳首を吸っていた唇がそこを離れて、裸の腹の上を滑ってゆき、潤みをもち始めた谷間へと這ってゆくのが夏美にも感じられた。
「ああ、駄目よ。そこは・・・。」
しかし、明らかにその声は裏腹な思いを伝えていた。
ジュルッ。
李の唇が割れ目に到達すると、その内側をいきなり吸い上げた。
「ああっ。」
夏美は思わず声を挙げ、両方の太腿を大きく広げて李の舌を向かい入れてしまう。
「いやっ、駄目っ、だめえええ・・・・。」
夏美は誰も居なくなった暗い部屋の中で、李が緩めてくれた手首の縄を少しずつ自分で何とか解きながら、ぼんやりと余韻に浸っていた。
(手を縛ってくれた意味がやっと判ったわ。抵抗出来ないからこそ、あんなにまでのめりこめたんだわ。出なければ、羞恥心であんなこと、受容れられた筈はないもの。)
目隠しをして、両手を縛った上で責めるという李の心理的な技巧は、生来のものである筈はないのだが、まさか影山に仕込まれてのものとは思いもしない夏美だった。
目隠しをしたままの自分を一人置いて、先に去ってしまったのも、恥かしさから立ち直る為には夏美には必要なことだった。そこにも夏美は李の優しさを感じ取っていた。
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