妄想小説
訪問者
第二十一章 最後の救いの手
京子は犯されることもなく、服さえ脱がされることもなく両手の戒めを解かれた。その前に太腿を伝っていた生温かいものはティッシュのようなもので拭い取られていた。それはあたかも証拠を消す作業であるかのようだった。
両手の戒めが解かれたので、京子は自分で目隠しを解いた。
男はベッドに仰向けになって、荒く息をしていた。まだズボンのチャックは降ろされたままだったが、怒張は既に収まっている様子だった。
「なかなか良かった。真に迫る演技だな。いい経験をさせて貰ったよ。実戦で試してみる訳にはいかないからな。」
男はぽつりとそう言ったのだ。
(実戦・・・?)
「また今度やらせてくれないか。今度は縛らなくてもいいからさ。」
(やらせる?何を・・・。)
「いいか。今日のことは絶対秘密だからな。朱美にも言うんじゃないぞ。」
「あ、あの・・・。」
「誰かに見つかるといけないから、俺が先に出る。30分以上経ってから出るんだぞ。ここの会計は済ませてあるから、目立たないようにただ出ていけばいい。」
そう言うと男は身づくろいを整えて部屋から出ていってしまった。
「あら、意外と早かったわね。でも、あの人。大分満足してたみたいだけど。」
京子が朱美と待合せていた喫茶店へ入っていくと、朱美のほうが声を掛けてきた。
「どう、あの変態野郎?たっぷり虐められた?」
「あ、あの・・・。」
「あいつ、いつも不満そうなのよね。こっちがいろいろサービスしてやってんのに。でも、エムの娘が居るっていったら、凄く興味深そうだったからエス・エムごっこ、してたんでしょ?」
「・・・。」
「ま、いいわ。あいつ、あれで学校の教師なのよ。またリクエストが来たら頼むわね。ほら、アンタのバッグと携帯。返すわ。携帯の中身、全部コピーさせて貰ったから。逃げようったって駄目よ。私から呼び出しの電話が掛かったらすぐに来るのよ。さもなければ・・・・。」
朱美は悪戯っぽくウィンクすると、京子を後に残して意気揚々と出ていってしまった。
(学校教師か・・・。)
独り残された京子は、その日起きたことを反芻していた。京子があの部屋でされたことは痴漢行為の真似事だと確信した。学校教師が一度してみたくてならなかった事。それを相手が何も抵抗出来ない状態で仕掛けてきたのだ。
(案外、女子高の教師あたりかもしれない。日頃してみたくて仕方のない妄想を実行したのだろう。朱美の言いっぷりからすると、通常のセックスでは満足出来ないのだろう。朱美もそれを察することが出来ずに相手をしていたようだ。)
京子は犯されずに済んだのが幸いだったような気がした。しかし、精神的には蹂躙されたも同然ではあった。朱美に握られてしまった弱味を早くなんとかしなければと思う京子だった。
「なるほど。あの公園のトイレでそんな事があったのか。それでその時の写真でリベンジポルノをすると脅されているんだな。」
「済みません。樫山さんに相談するような事じゃないかもしれないんですが、他に相談する相手が居ないのです。」
「いや、あの公園に手錠を掛けて置き去りにしたのは俺だからな。一旦の責任は俺にもある。そうだな。まあ、俺に任せておくがいいさ。ただし、手伝っては貰うからな。まずはその朱美が勤めてるってキャバクラから教えてくれ。」
京子は朱美から連絡先として渡されたピンク色の名刺を樫山に渡すのだった。
「いらっしゃいませ。ご指名ありがとうございます。あれっ、初めての方ですよね。」
指名を入れてやってくるなり、朱美が驚いたように言いながら、ピンク色の超ミニワンピースで樫山のすぐ横に腰掛ける。
「同僚に教えて貰ったんだ。裏でいい娘を紹介して貰えるってね。」
「同僚?あれ、もしかして貴方、学校の先生?」
「察しがいいな。だけど、学校の先生なんて軽々しくこういう店で口にしちゃ駄目だぜ。」
「ごめんなさい。そうでした。でも、そうするとあの人ね。」
朱美は樫山が紹介されたという同僚にもう察しがついた様子だった。
「エムの娘が居るって?」
「あの、ごめんなさい。それ、この店に内緒なの。そういうの、ばれちゃうと凄く不味いのよね。」
「なるほど。まあ、そんな事じゃないかと思ってはいたが。」
「じゃ、この店はそこそこで出てアフターって事でいいかい?」
「是非お願いするわ。今、水割り作るわね。」
そう言うと、店の黒服に酒を持ってくるように合図する朱美だった。
「ふうん。素人風のエム嬢かあ。なかなかいいな。なあ、頼みがあるんだが、いいかな。」
「なあに、先生。」
「お前も入れて3Pってのは出来ないかな。」
「えっ、3P?まあ、お金次第じゃ出来なくもないわよ。」
「それじゃあ3Pで頼むよ。こりゃあ楽しくなりそうだ。今からワクワクするな。」
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