京子生贄

妄想小説

訪問者



第二十章 京子 生贄


 朱美にバッグを奪われたまま、京子は朱美に教えられたホテルへ向かわされたのだった。朱美は仕事が終わるまでそのホテルの傍の喫茶店で待っているとの事だった。
 仕事が何かは明かされなかった。ホテルの部屋を教えられ(朱美姐さんの代わりに来ました)って言えばいいというのだった。
 とにかく今は言うことを聞いているしかなかった。そして隙をみて携帯の画像を何とかして消すしかないのだ。
 朱美に教えられたホテルというのは、繁華街からちょっと外れたところにあるものだった。いわゆるラブホテルというものに違いなかった。西洋のお城を模ったような安っぽい造りの四階建てだった。京子は指定された最上階の一室に向かうしかなかった。フロントらしき所は窓が薄く開いているだけでガラス部分は布で覆われていてその向こうに居る人は見えないようになっている。そのままフロントを通り過ぎても何も咎められなさそうだった。京子はフロントを通り過ぎてその奥の小さなエレベータの中に入る。
 (とにかく事情を説明して理解して貰うしかない。朱美の代りになるなんて出来ないのだ。)そう心に決めて部屋へ向かったのだった。

 ピンポーン。
 「あ、あの・・・。」
 「今、開けるから。」
 男の声がしてドアに近づいてくる気配がした。内側から鍵が開いてドアが開く。中年の眼鏡を掛けた生真面目そうな男がそこに居た。痩せぎすのちょっと神経質そうな感じがあった。
 「さ、早く入って。」
 「あの、でも・・・。私は・・・。」
 「朱美の代りなんだろ。聞いてるよ。それより、早く入れよ。誰かに見られるといけないから。」
 「あの、でも。私は・・・。」
 京子がドアのところで躊躇っていると、男は京子の肩を乱暴に掴むと部屋の中へ引き摺りこむ。誰も見ていなかったか、廊下のほうをちらっと確かめるように見てからドアを慎重に閉じ、内側からしっかり施錠する。
 力ずくで部屋へ引き摺りこまれてしまった京子は辺りを見回す。ラブホテルという場所に入ったのは初めての事だった。薄いピンクのカーテンがあちこちに掛かっているのは窓を塞ぐ為らしかった。幾つかある間接照明も淡い色のものだった。奥に少し大き目のダブルベッドがあるが、ベッド以外のスペースもかなり取られている。天井に大きな鉄製のフックが取り付けてあって、そこから鎖が垂れ下がっているのが、この部屋が単なるラブホテルの一室ではないことを示していた。
 「私、朱美さんの代理ってことになっているようなんですが、実は違うんです。」
 「そりゃあ違うだろうさ。だから何時もの倍払うようになったんだからな。」
 「倍って・・・?」
 男は奥のベッドの方に歩いていって腰掛けると、京子の身なりから顔立ちまで嘗めるように眺め尽くす。
 「なるほど。確かに素人っぽいな。なかなかいい感じだ。でも本当は演じてるだけなんだろ。それっぽく見せてるだけで・・・。」
 「えっ、何を仰っているのか・・・あの・・・。」
 「いいから、こっちへ来いよ。ほらっ。」
 ベッドから立ち上がった男は、さっと京子の背後に回り込むと両肩を押して京子をベッドのほうへ押し倒す。そのまま電光石火のごとく京子の身体に馬乗りになると手首を掴んで捩じ上げ、ベッドに俯せにさせてしまう。その掴まれた手首にガチャリという音がして手錠が嵌められ、もう片方の手首も取られてあっと言う間に後ろ手に拘束されてしまう。
 「さあ、これでもう逃げられないぜ。」
 「待ってください。違うんです。私がここに来るようになったのには訳があるんです。そ、それを説明・・・させてください。」
 「お前と朱美の関係なんか興味ないんだ、俺は。それより払った代金だけの仕事はきちっとして貰うからな。」
 「そ、そんな・・・。困ります・・・。私は違うんです。」
 「うーん、なかなかいいな。リアルな感じがあって・・・。」
 男の手が京子の顎をしゃくりあげる。その手を肩で振り切って、京子はドアに向かって走った。しかし内側から施錠されている。それを開くのに京子は後ろ手て手探りしなければならない。その間にあっと言う間に男に首を掴まれベッドに引き戻されてしまう。
 「目隠しをしたほうがいいようだな。その方がお前もより感じられるだろう。」
 そう言うと、予め用意されていたような真紅の帯をポケットから取り出すと、さっと京子の顔に後ろから巻付ける。手錠で両手の自由を奪われた京子には抗う術がなかった。視界が遮られてしまうと、もっと自由に動けなくなる。
 「そうだな。後ろ手錠よりも小手縛りで吊ったほうがより楽しめそうだな。」
 そう言うと、手錠を掛けた手首に更に別の縄を片方ずつ括り付けているようだった。京子は目隠しされているので、何をされているのかはっきり判らない。
 ガチャリという音がして手錠が外されたようだったが、逃げようとしても手首に巻きつけられた縄が京子の自由を奪っていたそのまま両手を縄で引き上げられ、万歳の格好で吊られていく。どんどん縄が引かれるので、京子はとうとう爪先立ちでようやく立っていられるぐらいまで縄で吊られてしまう。京子の脳裏に、影野家で辱められた時の記憶がよぎる。
 一旦、京子は両手で吊られた格好にさせられると、男の手から自由になる。全くの無防備な状態だった。男が何処に居るのかも京子には判らない。
 突然、耳元にふうっと息を吹きかけられて、男がすぐ傍に立っているのがわかった。
 「どうだい。何も出来ない格好になった気分は。これからたっぷり楽しませて貰うぜ。お前も愉しむがいい。」
 何をされるのか判らない京子は不安におののくことしか出来ない。
 京子はお尻の下あたりに違和感を覚えた。手の甲が微かに押し付けられている気がしたのだ。
 (触られている・・・?)
 はっきり確証が持てないのだが、スカートの上から触られているような気がするのだ。そしてそれがゆっくりと尻たぶに向かって動き始めた。
 「あっ・・・。」
 思わず出てしまう声を京子は抑えきれなかった。
 今度は脇腹の辺りに違和感を覚える。押し付けてくるのではなく、触れるか触れないかぐらいの感触だ。それがゆっくり脇腹を這い上がってくる。乳房のすぐ下辺りで一旦とまる。
 「うっ・・・。」
 京子は声を呑み込む。声を出せば、もっと蹂躙されるような気がして、黙っていればこのまま赦してもらえるかもしれない、そんな風に思ったのかもしれなかった。
 違和感はまたお尻に戻る。感触はさっきより広い範囲だ。指先ではなく、手の平全体をそっと当てられている気がした。やがてそれはゆっくりと這いあがってくる。その感触が尻たぶに感じられたところで、今度は指先の動きを感じる。手の平は微かに押し当てられたまま、指の一本か二本だけが曲げられたのだ。その指先が何かを絡め取ろうとしているかのようだった。
 (スカートが捲られている・・・?)
 今度ははっきりとわかった。男は京子のお尻に手をあてたまま、スカートの裾をたくし上げようとしているのだ。
 (いや、やめて・・・)
 心の中でそう思っただけで声にならない。喉の奥が乾ききって声が出せないような気がした。
 スカートを手繰る指の動きが少し早くなった。そのすぐ後で、指先が腿の内側に触れたのがはっきり判った。
 男の息遣いが少しだけ荒くなってきた気がした。指が京子の内腿を伝って這い上がってくる。
 (あ、駄目・・・。それ以上は。)
 しかし、指先は情け容赦なくどんどん這い上がってくる。それと同時にスカートの裾も持ち上がってきているに違いなかった。
 「うっ・・・。」
 指先が京子のショーツの下端に触れた瞬間に、京子が喘ぎ声を洩らしてしまった。その声に反応するかのように男の指先が更にスカートの奥に侵入してきた。最早男の手の平をお尻の割れ目のあたりにはっきり感じるようになった。しかも中指だけがくの字に曲げられて、クロッチの辺りをなぞっている。
 (あっ、駄目っ・・・。)
 今度は京子は自分自身の身体に異変を感じる。身体の中心が急に熱くなった気がした。
 (まさか・・・。濡れてきた?)
 京子は男の指先でそれを悟られるのではないかと怖れた。
 「ふううううっ・・・。」
 男が横で大きく息を吐いた。その直後、京子の身体のすぐ横でもぞもぞ動く気配がした。
 「あああああっ・・・。」
 男が再び大きく喘ぎ声を挙げたのがはっきり判った。その瞬間に何か硬いものが京子の太腿に押し付けられた。と思ったすぐ後、生温かいものが太腿を伝って流れ落ちるのを京子ははっきりと感じとっていた。

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