
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第三部
六十一
リ・ジウの手配で完全に関係者以外はシャットアウトされた形で双方の承認となる二人ずつの男性ギャラリーと、基本的にアドバイスは出来ずカートでゴルフクラブを運ぶだけの役目の高齢の女性キャディの他は審判役の鮫津の他はプレイヤーであるリ・ジウとヨン・クネしか居ないコースの中で試合は開始されたのだった。
前半は、片方がバーディを奪えばもう片方は何とかパーで凌ぐという一進一退でほぼイーブンな成績のまま終えることになる。

後半に入って、リ・ジウはそろそろ仕掛け時だと判断して予め金をつぎ込んで言い含めておいた老齢のキャディにシグナルを送る。一礼したキャディはカートを動かして次のショートホールのグリーンへ向けてカートを走らせていく。
アプローチに立とうとしたヨンをリ・ジウがすかさず止める。
「待って、ヨン。キャディが邪魔だわ。下手すると当たってしまう可能性がある。キャディがあの丘の向こうに行ってしまってからにして。」
ショートホールのグリーンは少し高台になったちいさな丘の向こう側だった。その丘のせいでグリーン自体はティーグランドからは直接は見ることが出来ない。
「あ、もういいわ。打って。」
そうリ・ジウが言うのを聞いてヨンはティーグランドに立つ。打ったショットは距離を正確に読んだ上のショットだった。落ちた場所はティーグランドからは見えないが、狙い通りの場所へボールを落としたと確信したヨンだった。続いてリ・ジウがティーショットを放つ。落ちたのはヨンのより少し手前のようだった。
ヨンが小高い丘を越えてグリーンを見下ろすと、キャディの姿が見えてきた。
「ボールは何処かしら?」
ヨンが大声を挙げてキャディに訊ねると、老婆は両手を裏返して肩を竦めて見せる。
「池ポチャですよ、ヨンさん。」
ヨンが降りていって確かめるとボールはグリーンを越えた小さな池の中にあった。水深はそれほどでもないが、打ち出せるような深さではなかった。
「アンプレヤブルにするしかないね。」
キャディは首を竦めてヨンに教える。一方のリの球はピン傍ではないもののしっかりグリーン上にあった。
(変だわ。距離を間違えたってことはない筈なのに・・・。)
ヨンはふっと既視感を覚える。
(あの時と同じだわ。あの社長連中とストリップゴルフをさせられてグリーンに乗った筈のボールが池ポチャだった時と。まさか・・・。)
結局そのホールは池ポチャからの一打罰が響いてヨンはボギーを叩き、先にグリーンを捉えていたリがバーディを取った。初めての二打差だった。
「あら、大事なところで池ポチャとは運がないわね。」
そう言いながらもリは鼻高々だった。
(これで勝ったも同然だわ。思いっきり辱めて調子を崩させてやるわ。)
「約束どおり脱いで貰うわよ。」
「そうね。仕方ないわ。何から取ればいい?」
「ふふふ。その短いスカートよ。」
リはヨンがアンスコを着けさせて貰えていないことを知っていた。いきなり下半身ショーツ一枚になってその後のプレイをさせようと言うのだった。しかもリが連れてきた証人用のギャラリーの二人にはヨンが下半身パンツ一枚になったら思いっきり恥ずかしがるように色々と詰るような言葉を教え込んでいたのだった。

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