
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第三部
六十
「リ・ジウさんですね。もしかして、あの例のプライベートマッチのことですか?」
「ええ、そうよ。マネージャーの鮫津という人から聞いているわよね。ストリップ・ゴルフでやるって件。」
「あ、あの・・・。ストリップ・ゴルフってどうやるのかご存じなのですか?」
「勿論知ってるわ。昔、アメリカのお金持ちの間で流行ったことがあるっていうゴルフプレイでしょ? さすがに自分ではやったことはないけど。面白い企画じゃないの。私と貴女の試合としてはうってつけだわ。敗けたほうがデセックスの専属契約から退くの。勿論、受けて立つわよね、貴女。」
「社長の意向ですから、私の方から断る訳にはゆきません。貴女がやるというのなら。」
「じゃ、決まりね。ゴルフ場は私の方で選ばせて貰うわ。変な事前工作とかされるといけないから。それからキャディーは私的な内密の試合なので口の固い女を私の方で選ばせて貰うわ。」
あっと言う間にデセックスの専属契約権を賭けてリ・ジウとの間でストリップ・ゴルフでのプライベートマッチをやる事が決まってしまったのだった。
「ねえ、鮫津さん。大丈夫かしら・・・?」
「え? 何がですか?」
「だって、ゴルフ場はリ・ジウが選んだところでしょ? キャディだってリ・ジウが指名した人だって言うし・・・。完全なアウェイじゃないのかしら?」
「自信が無いのですか、ヨンさん?」
「いえ、そう言う訳じゃないのだけれど・・・。何か、変な工作とかされていないか不安なんです。」
ヨンは社長の古いゴルフ仲間たちとストリップ・ゴルフをやらせられた際に、絶対間違いない距離でグリーンに運んだ筈の球が池ポチャだったことがまだ納得出来ていないのだった。
「まあ、社長を信頼して貴女は自分のプレイに専念することです。」
「そ、そうですか・・・。そう、ですよね。」
ヨンは改めて正々堂々とプレイに専念することを決意する。
「ルールは事前にお知らせした通りです。宜しいですね。一打差まではそのままプレイを続けて頂きます。もし二打差が付いた場合には勝者は一枚脱がせるものを指定出来ます。最終的な勝敗はどちらかがもうこれ以上プレイは出来ないと降参した場合か、敗けた方がもうこれ以上脱ぐものが無くなってしまった場合です。それでも勝敗が付かなければ通常通り最終スコアが勝敗を決めることになります。」
「いいわよ、そんな説明はもう。どうせ、この人がもう脱げませんって泣きついて敗けを認めることになるだけなんだから。」
そう言い切るリ・ジウは最初から絶対勝利の自信を持っているようだった。

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