
凋落美人ゴルファーへの落とし穴
第三部
四十九
ウェアのロゴは何とか隠せるようになったが、ジャケットの丈はミニスカートの裾ぎりぎりぐらいまでしかないので、下半身は丸出しに近い。しかし広告塔とも言える自分のブランドのウェアを晒して外を歩くのだけは避けられそうだった。
「お前の家の方へ行く前に、ちょっと寄りたい場所があるんで付き合って貰うけどいいよな。」
「え、ええ・・・。」
男に電車賃を出して貰うのなら少しぐらいの寄り道は仕方ないと思うヨンだった。
「え、地下鉄に乗るの?」
先を行く男が地下鉄の入口の方へ降りて行こうとするのを見てヨンは一瞬躊躇うが付いていくしかないのだった。男に貸して貰ったジャケットの襟を掻き合わせるようにしてウェアを隠しているヨンだが、股下ぎりぎりまでしかないジャケットから伸びる生足にホームで待つ乗客たちは思わず目を留めて二度見する。その視線を気づかない振りをしながら男についてゆくヨンだった。

「え、ここを上がるの?」
男が地下鉄を二駅ほど乗ってから地上にあがって入っていったのはデパートで、上の方の階に昇っていくエスカレータに乗ろうとしていた。
エスカレータは両側がガラス張りで透けているのだった。家に帰る為には男についていくしかないヨンは短いスカートとジャケットの裾を抑えながら男についてエスカレータに乗る。スカートの中の下着を見られるのならまだしも、何も穿いていないのに気づかれる訳にはゆかないのだった。

「じゃ、ここでちょっと待っていて貰おうかな。店に入るところは見られたくないんでな。」
男がヨンに待っているように言ったのは、デパートの最上階の階下を見下ろせる吹き抜けのホールの手摺りの脇だった。階下が見下ろせるのは、逆に下からも覗かれることを意味していた。
「え、ここで・・・? で、でも・・・。」
(スカートの中を見られてしまうわ)と抗議しようとするヨンの言葉を待たずに男はさっさと背を向けて歩き去ってしまう。男の後を追うことも出来ないし勝手に別の場所に行ってしまうことも出来ないヨンは下の方からスカートの中を覗かれないように出来るだけ壁際に張り付いてじっと男の帰りを待つしかないのだった。

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