玲子キャンパス

妄想小説

同窓会



 八

 「君は僕らが高校生だった三年間、僕にとっては親友の恋人、いや違うな。憧れの人だったんだ。」
 「それって、もしかして木崎雄介クンの事?」
 「ああ、そうだよ。僕らが一緒のクラスになったのは二年生の時からだったよね。彼とは電車が同方向だったから、ほぼ毎日のように一緒に帰っていて毎日のように君のことを聞かされていたんだ。」
 「でも、私は彼のこと、なんとも思ってなかったわよ、ずっと。」
 「まあ、そうかもしれないってずっと経ってからは僕も思い始めるようにはなったけどね。だけどそれはもう卒業間近になってからかな。」
 「え、そんな時まで・・・。それじゃ、あの最後の文化祭の時も?」
 「そうだよ。親友の憧れの人と思って誘ったんだ。少なくとも自分自身の表面上はね。」
 「樫山クン自身は、私の事なんとも思ってなくて誘ってくれたんだ。」
 「ううむ。そう思い込もうとはしてたかな・・・。あの時、文化祭の直前になって木崎の奴、君を誘わないって言い出したんだ。しかも他校に付き合い出した女の子が居て、そっちとデートするんだって言ってた。それを聞いたら、君が高校最後の文化祭を誰からも誘われることなく逃してしまうような気がして。何とかしなくちゃって思って・・・。」
 「私の事、可哀想って思ったということ?」
 「そう思おうとしてたのは事実かな。でも、後でよくよく考えると、だから僕が誘わなくちゃって事にはならないよね。君が最後の文化祭という貴重な思い出を逃すことになるっていうのは本当は言い訳だったんだと思う。木崎が居るって事が、僕が君を誘わない理由にしていたんだなってその時気づいたんだ。」
 「じゃ、やっぱり私のこと、誘いたいとは思ってはいたってことね。良かった。それが聞けて。」
 「ずっと複雑な気持で居たんだけどね。でもあの時、君の事を誘うことが出来て。そして君も応じてくれて。やっと僕も何かから解放されたって感じていた。」
 「ああ、それを最初から知っていたら・・・。じゃ、その一年前の修学旅行の時も木崎クンに遠慮してたの?」
 「そりゃ、そうだよ。だって、旅行前からずっと修学旅行中に告白するんだって、木崎の奴、ずっと言ってたからね。」
 「ああ、何てことかしら・・・。」
 「え、何てことって?」
 玲子は琢也の口から初めて聴いたことで、もう取り戻せない青春の日々を懐かしく、そして名残惜しく思い返すのだった。
 「あの修学旅行の時、わたしたち女子の間でも同じようなことはあったのよ・・・。」
 ぽつりぽつりと玲子は思い出を噛みしめるように話し出したのだった。

玲子

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