妄想小説
同窓会
二十二
「へえーっ。私たち、そんな風に妄想されていたのね。それで、最後はどうなっちゃうの?」
「さあ、話に居た堪れなくなって部屋から出て外に散歩に行ったからね。でも犯されちゃうって終りじゃないだろうね。なんせ、高校生の妄想だから。」
「そういう話は嫌いだったのね。」
「若かったからね。現実の人物を性的妄想の中に入れるのが許せなかったんだと思う。性的妄想はしなかった訳じゃないけどね。」
「そうよね。そんな話、私。当時聞いていたら絶対許せなくて、軽蔑してたと思う。」
「してた…? 今なら受け入れられる?」
「ううん・・・。でも、ちょっと興奮するかな。そういう話の主人公になってると思うと。」
「それだけ大人になったっていう事だね。」
「そうね。ちょっと違うかな。私ね。実は、ピアニストになるの諦めたのは貴方と同じ大学に行きたかったからなの。」
「え、そうなの?」
「うん。優ちゃんと修学旅行で誰に告白するかとか話してた時、優ちゃんにきっぱり言ったの。ピアノの道は捨てて、樫山クンと同じ大学を目指すほうを選ぶって。」
「樋口さんは何て?」
「道を選べるっていいなあって。自分はピアノしか選ぶ道がないからって。そんな事もあったんじゃないかな。優ちゃんが怒って時任クンを振ったのは・・・。」
「君が先に大学に入って、僕は浪人してあとから同じ大学になったんだよね。」
「そうよ。私はあの大学に入る為に一番入れそうな学科を選んだけど、樫山クンは一番難しい学科を目指したからね。」
「大学に入ってももう逢うことはなかったよね。」
「樫山クンと同じ大学に行きたいからってピアノへの道も諦めたのに、先に大学に入っちゃったら、そんな事すっと忘れちゃった・・・。」
「まあ、そんなもんじゃないかな。」
「高校の時はすっごく抑圧されていたの、私。ちょっとだけ勉強が出来たものだから、男子たちには結構敬遠されてるの、私自身も感じてたわ。だから、最後の文化祭で樫山クンに誘われた時、すっごく救われた気持ちになった。」
「へえ。手も繋がなかったのにね。」
「あら、繋いだわよ。展示とか廻ってるときは手も繋がなかったけど。ほら。最後に夜、暗くなってキャンプファイヤにも行ったじゃない。あの時よ。樫山クンが手を繋いでくれたの。私、ずっと離したくないって思ってた。」
「そうだったかな? 最後はどう別れたのだっけ?」
「電車で私が先に降りるんで、もうここでいいからって言って私が電車を降りたのよ。」
「ううむ、そうだったかなあ・・・。」
「あのね。本当は樫山クンに家の傍まで送って貰って、家に入る前に暗がりでキスしようってずっと考えてたの。私の妄想だけど。でも降りる駅に着いたら、ついもうここでって言っちゃった。」
「それじゃ、悪かったね。気づきもしないで・・・。」
「ううん、いいの。今日、そのリベンジが出来たから。」
急に甘えたような表情になって玲子がシーツの下で琢也の股間に手を伸ばしてくる。
「あ、もうこんなになってる。」
「さっきの猥談の話をしてたせいかな。」
「ねえ、お願いっ。もう一度、私を縛って。もう一度、私を縛って犯してっ。我慢出来ないの。」
琢也はその言葉に傍らの玲子の裸の肩を引き寄せ、唇に口づけすると玲子の両手首をしっかりと掴むのだった。
完
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