妄想小説
同窓会
三
「なんかね。彼、突然うちの大学のキャンパスにオープンカーでやってきて、乗ってみないかって言うの。私もオープンカーに乗せて貰うなんて初めてだったから、つい乗っちゃったんだ。」
しかし、続きがありそうなその話は、そこでぷつんと玲子によって打ち切られてしまう。
「ねえ。少し、窓・・・開けていいかしら。」
暫く沈黙があったのち、突然玲子が言い出した。
「ああ、勿論。あ、・・・。どうした? 気分でも悪い?」
横を向いて玲子の顔を見た琢也は、少し玲子の顔が蒼褪めているのに気づいた。
「ううん、大丈夫・・・だと思う。」
「あ、やっぱり気分、悪いんだね。困ったな。ここは高速だから簡単に停めれないし・・・。あ、ちょっとここで一旦高速、降りるから。」
琢也は直後に見つけた高速の降り口で一旦高速から降りることにする。琢也自身は一度も降り立ったことのないインターだった。
「うわっ。降りてはみたものの、何にも無いところだなあ・・・。」
土地勘の無い場所だけに、どちらに向かえばいいのか見当もつかない。ちらっと隣の様子をみやると、玲子は目を伏せてぐったりしている。
(どっか、すぐに停めなくちゃ・・・。)
そんな琢也の眼にちらっと『休憩』の文字がよぎった。町外れの郊外によくある所謂ラブホテルだった。琢也自身、ラブホテルというものを使った経験はない。しかし、休憩と記されているぐらいだから、ちょっと休む事ぐらい出来るだろうと咄嗟に判断する。
ゆっくり減速して、車を半地下のような駐車場に乗り入れる。
「ちょっと休めそうな場所があるか見てくる。」
助手席でぐったりしている玲子は返事もしなかった。
初めての経験だが、あまり悠長にやっている余裕はないと思った琢也はさっと休憩の料金を前払いすると、キーを受け取って車に戻る。最初、自分は車で待ってるからと言うつもりだったが、流石に女の子をラブホテルの部屋に独りで行かせる訳にはいかないと考え直した。
玲子の肩をそっと抱くようにして何とか部屋まで導いた琢也だった。
「横になっていたら、多分治まってくると思うから。」
玲子の背中を抱えながらゆっくりとベッドに横たえさせると、靴を脱がしてやる。裸足になった足を持ち上げてベッドに載せる時に、玲子のスカートの奥が覗きそうになって琢也はハッとする。
「僕は車の中で待ってるから、少し休んでいて。休めばすぐに元に戻るから。」
そう言って立ち上がろうとする琢也の手を素早く玲子の手が掴んだのだった。
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