梯子昇り

妄想小説

同窓会



 十七

 「なあんだ。それじゃ私、パンツ見られたの木崎クンだけだったのね。てっきり着いてきてるのは樫山クンだと思ってたから・・・。損しちゃったわ。」
 「損したはないだろ。自分から昇ったんだから。」
 「私、あの時、樫山クンになら見られてもいいと思ってたの。というか、塔に昇れば二人っきりになれる最後のチャンスかなって思ったの。ああ、あの時もう少し時間があれば・・・。」
 「ん、時間があれば?」
 「きっと告白してたと思う・・・。でも木崎クンが居たし、真帆までね。」
 そう玲子が言うのを聞いて、修学旅行中は意外と皆の目が四六時中あって、男女が二人きりになれるチャンスはそうは無かったのだと思い返していたのだった。

 「ねえ。あの時、貴方が私のパンツ見てたら、どうなってたかしらね。」
 「多分、次の年の最後の文化祭で君を誘うことはなかったと思う。」
 「ふうん・・・。どうして?」
 「あの頃の僕たちは、性の欲求と恋とか愛に対する感情は完全に別だったんだと思う。よく百年の恋も醒めるって言うじゃないか。」
 「じゃ、あの時、恋とか愛みたいな感情は私に対してもあったって言う事ね。よかったわ。私、樫山クンには見られなくて。」
 「木崎の方も、あの時からほんの少しだけどちょっとずつ変っていったような気がする。君に対する思い方っていうのか・・・。何が何でも君でなくちゃっていうのがね。その後も相変わらずずっと君の事ばかり喋っていたけどね。彼は結局、君に告白したんだっけ?」
 「ううん、されなかったと思うわ。チャンスはあまりなかったけど、全く無いって訳じゃなかった筈。時任クンだって優子に告白したぐらいだから。」
 「時任かあ・・・。彼もあの時から急に変わっちゃったからな。」
 「変わった? どんな風に? 振られた・・・から?」
 「時任の名誉の為に言うと、それはきっと振られた腹いせとか復讐とかいうことじゃなかったと思うんだ。彼が彼女に対して描いていた女性像っていうのが変ったんだ。恋し憧れる対象としてではなく、性の衝動の対象にも成り得る女として観れるようになったというか・・・。」
 「性の衝動の対象・・・?」
 「あの後、砂丘を廻って鳥取の宿に泊まったよね。その夜、男子の部屋では夜遅くに、そう、所謂猥談ってやつが始まったんだ。その中で、時任たちが樋口を性の餌食にした猥談を始めたんだ。」
 「性の餌食にした猥談・・・?」
 「そう。そしてそれには君も出てくるんだ。」
 「え、わたしも・・・?」

玲子

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