妄想小説
同窓会
十五
「ねえ、もうそろそろ戻る時間よ。ここまでにしましょ、玲子。」
そう言って引き留めようとするのは一緒に岬の先までやってきた宮地真帆と樋口優子の二人だった。
「いや、日御碕灯台からの眺めはどうしても観てみたいの。走ってでも行くわ。」
「え、スカートであんな高い所昇るの? 男子たちにパンツ見られちゃうわよ。私、嫌だわ。止めとく。」
逸脱を宣言したのは樋口優子だ。
「平気よ。私は行くわ。」
「じゃ、私も玲子に付き合う。私、スカートの下にブルマ穿いてきてるから。」
そう言って同意したのは宮地真帆だけだった。
「じゃ、走ろう。」
玲子は宮地の手を取って灯台へ向けて走り出した。
「おい。あそこ走ってくの、深町と宮地じゃないか? 今から灯台に昇るつもりかな。おい、樫山。追っ掛けようぜ。後ろから行けば女子のパンツ、覗けるかもしれないからな。」
「止せよ、そんな事。」
そう言いながらも最初から走ってでも灯台へ昇るつもりだった琢也は先を行く木崎の後を追い掛ける。
「ねえ、玲子・・・。待ってよぉ。息が切れちゃったわ。」
「駄目よぉ。もう時間がないわ。急ぐのっ。」
途中から昇る速度が遅くなってきた真帆を置いてきぼりにして、玲子はどんどん急になって行く階段をひたすら昇り続ける。
玲子の頭の中には琢也が言っていた(走ってでも見に行く)という言葉が鳴り響いている。
(琢也クンも絶対来る筈だわ。)
それは玲子の最後の望みを託した賭けだった。
「おい、宮地じゃないか。もう疲れて昇れないのか? 先、いくぞ。」
「あ、木崎クン。あれ、樫山クンも行くの?」
「ああ、宮地さん。絶対見て置いたほうがいいよ。絶景だから。」
疲れ果てて諦めかけている宮地を勇気づけると昇るのに手を貸してやる琢也だった。
「真帆~っ。諦めちゃったの~。先、行くわよ。」
突然上から聞こえてきた玲子の声に、木崎は何とか追いつこうと階段を一段飛ばしで更にスピードを上げて追い掛ける。そして塔の上へ出てしまう直前に下から怜子の姿を覗き上げるのに成功したのだった。
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