添い寝

妄想小説

同窓会



 六

 玲子が我に返った時、それまでの記憶が完全に飛んでいることに驚愕を覚えた。気を喪っていたような気もするし、逆に目覚めたというはっきりした覚えもなかったのだ。
 そっと隣に目をやって、確かに琢也が横に居ることで、今までの事は夢では無かったのだと確信したのだが、大変な事をしてしまったとか罪悪感や後悔のようなものを一切感じなかったのは玲子にもよくわからないことだった。胸元まで掛けているシーツの下でそっと自分の身体を触ってみる。縛られていた筈の手首にはすでに何も巻かれていないのは確かだが、いつ解いて貰ったのかは全く覚えがない。胸元には下着のキャミソールがちらっと見えるのだが、お尻の感触からは下着を着けていないのは明らかだった。
 もう一度、横に居る琢己のほうを見てみる。目は閉じているが眠っているようには思えなかった。それで、そっと手を伸ばして琢也の胸元に手を伸ばしてみる。裸の胸に触れると、そこは微かに汗ばんでいるようにも感じられた。その手の上に琢也の手が重ねられた。
 「起きたのかい?」
 「私、寝てた?」
 「さあ。でも暫くじっとしてた。」
 「私、変な事口走ってなかったかしら。」
 「憶えてない・・・。」
 (上手い答え方だわ)玲子はそう思った。
 (何か口にしたかもしれないし、口にしてないとも言ってない。しかし憶えてないことでなかったことに出来るのだ。)
 「縛られてしたの、初めて・・・。想像もしてなかった。貴方は良かった?」
 「君を縛ったから? 興奮してたのは分かった。だから僕も興奮はしたかな。」
 「何だか恥ずかしいわ。」
 「興奮したから? 興奮しないでセックスするほうが恥ずかしいよ。」
 「いやっ、もう・・・。」
 玲子は胸から顔にシーツを引き上げて顔を一旦隠す。それからシーツの下で両手を琢己の胸元に回して抱きつく。

玲子

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る