修学旅行夜

妄想小説

同窓会



 十二

 結局お互いが牽制し合って誰も男女二人きりになることがないまま散歩を終えて宿に戻ってきたのだったが、リーダー格の班長、木崎が提案する。
 「この後、消灯までまだ少し時間があるから、俺たちの部屋でトランプしようぜ。」
 その一言にそれぞれが顔を見あわせながら宿に入っていく。
 「なあ、深町。お前はここ、来いよ。」
 皆がぞろぞろ男子部屋に入って行く際に、すかさず木崎は玲子を呼び止め自分の隣に座らせる。その少し後について行た琢也は、(今夜こそ、深町玲子に告白するから)と木崎から言い含められていたので、二人からは少し離れて座る席を探す。
 「あ、樫山クン。ここ、空いてるわよ。」
 声を掛けてきたのは樋口優子だった。優子が座っていたのは、木崎と玲子が一緒に座るすぐ隣に居た時任を避けた座敷のちょうど反対側にあたる隅だった。優子に薦められるまま、隣に胡坐をかいた琢也は、その時玲子と優子が一瞬だけ交わした鋭い目線に気づいていなかった。そして同じ様な視線が時任の方からも優子と琢也に向けられたのにも気づかないのだった。
 「あ、ちょっと人数が多いな。じゃ、二人ずつのペアになろうぜ。」
 木崎雄作の咄嗟のアイデアに、木崎は玲子と、琢也は優子と自然にペアになる。時任には偶々傍にいた優子の親友である宮地真帆がペアを組むことになる。

 「あ、いや。そっちじゃないな。こっち。こっちの方だよ。」
 「え、いいの? 大丈夫かしら。」
 「大丈夫。信じてっ。」
 「はい。じゃ、これっ。」
 優子が思い切って琢也の指示通りに出した札は勝負の切り札だった。
 「うわっ、やったわ。あがりよ。凄いわ、樫山クン。」

玲子

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る