妄想小説
同窓会
十六
(素晴らしいわ。琢也が言ってた通りだわ。)
塔の頂上の出口から360度広がる絶景の眺めに玲子は思わず息を呑む。その直後、頂上に現れたのは意外にも琢也ではなく木崎の姿だった。
「あれっ、木崎クン。木崎クンも昇ってきたの?」
「ああ・・・、まいった。完全に息が・・・、息が切れたっ。」
景色を眺める余裕もなく木崎は膝を折って、もう崩れ落ちそうにしている。そのすぐ背後から琢也と琢也に手を引かれた真帆が現れる。
「あ、樫山クン。凄い景色ね。来て良かったわ。感激したわ。」
「ああ、本当に凄い景色だね。ここまで凄いとは僕も思わなかったよ。」
しかし、塔の上に居られる時間はもう殆ど無かった。
「残念だけど、もう戻らなくっちゃ。君たち、先に降りなよ。」
時計を見ながら琢也が女の子二人にそう促す。
「わかったわ。じゃ、先に行くね。行こう、真帆。」
女の子二人が先に階段を降り始めるのを見届けてから琢也はまだぜいぜい息をしている木崎にも声を掛ける。
「大丈夫かい? もう、行くぞ。」
「ああ、何とかな。でもいいものが見れたよ。」
「な、日御碕の夕陽だって捨てたもんじゃなかったろ?」
「いや、そっちのほうじゃなくて・・・。白だったよ、あいつの。宮地はブルマだったけどな。」
やっとの息をしながらも、階段を昇る際に覗き上げた女子のスカートの中の事を木崎は感慨深い気に言うのだった。
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