妄想小説
牝豚狩り
第一章 女捜査官の危機
その6
暮れてゆく人里離れた山中に取り残された冴子に、すぐには恐怖感は湧かなかった。一昼夜ぐらい徹夜で立ち尽くすような訓練は何度も経験している。苛酷な条件が特殊任務には要求されることもあるのだ。一晩ぐらいなら少々窮屈な姿勢でも堪え忍ぶことが出来る自信は持っていたのだ。
自由を奪われた格好で居るところに誰かが遭遇して、犯されるということも考えられなくはない。しかし、犯しに来るのは、あの連中ぐらいしか居ないだろう。誰かが通りかかるような山道ではないことは、充分に予想出来た。それだからこそ、彼等が選んだ場所なのだろう。
この時期なら、このぐらいの山中だと、熊が出没する可能性もあった。が、威嚇さえしなければ、襲ってくるような動物ではない。しかし猿ぐらいだと悪戯を仕掛けてくるかもしれない。猿にいたぶられるのは、あまりに惨過ぎる。冴子は雄猿に陰部をまさぐられる姿を一瞬想像して、情けなくなった。が、すぐに心配しなければならないのは、次の日に彼等が何を企んでいるのかということのほうであることを思い出した。
(牝豚、お客、狩り、商品、お務め・・・。男達が口にした謎の言葉は、何を意味しているのだろう。そして、わざわざお化粧までされて連れてこられたり、こんなSMプレイのような格好をされたり、一晩オムツまで当てられてこんな格好で立たされたりすることに、どんな意味があるというのだろう。)
睡魔と戦いながら、晒している肌に襲ってくる寒気とも戦いながら、冴子の思考は一向にまとまらなかった。まだ凍えるという季節ではないが、山の中の夜の風は晒している生身の肌には堪えた。吊るされた首輪が身を縮めることも許してはくれなかった。寒さは尿意に繋がっていく。身体の中でエネルギーを消費しているのだから、仕方ない。立ったままおしめの中に排泄しなければならないのは、勝気な冴子にとって許しがたい屈辱だった。
あの嗜虐的な小男の顔が浮かんでくる。明日の朝、どんな顔をしながら、冴子からこの紙オムツを外すつもりなのかと考えると、想像するだけで、おぞましさに身震いが起きてくる。
両手を拘束されて、男三人にこの山中に連れ込まれたのは、当然犯されるのを意図してのことだと覚悟していた。しかし、小男が陰唇を辱めたぐらいで、中背の男はそれを窘めようとさえして小男は我慢せざるを得なかったのだ。
(お客・・・、彼等は明日、ここで強制的なセックスをお客に饗応しようとしているのだろうか。それはSM趣味のプレイなのだろうか。・・・それならば、何故あの地下牢のようなところではなく、こんな山奥なのだろうか。今晩ひとばん、こんな格好で立たせていることにどんな意味が・・・。)
冴子がどう自問自答してみても答えは見つからなかった。
次へ 先頭へ