三重手錠

妄想小説

牝豚狩り



第一章 女捜査官の危機

  その12


 暫く、空振りが続いたが、まだ攻込む隙も見せていなかった。しかし、着実に相手の息が切れてきていることにも冴子は気づいていた。
 (もう少しだ。)
 しかし、男はそこで戦法を変えた。片手に竹刀を振りかざしたまま、背にしたリュックを下ろし、自由なほうの手で中を探る。男が取り出したのは、投網だった。
 (まずい。)
 冴子の血の気が引いた。振り回す竹刀を避けるぐらいは鋭い身動きで対処が出来た。が、足元が危ない沢の一部だ。少し広い場所といってもたかがしれている。網を投げられたら、逃げおおせる自信はなかった。
 男は竹刀は捨てて、両手で網を構えている。扱いは慣れているようだ。しかも男は広い方、広い方へとじわりじわりと足を進め、冴子を狭いほうへと追い詰めている。両手さえ自由なら、打たれた網を素早く手に取って横へ逃れることも出来たかもしれない。しかし、後ろ手に拘束された身では、四肢で這い回る獣物ぐらいの動きしか出来ないのだ。冴子は自分が本当に牝豚になったような気さえするのを感じた。
 男の網がぱあっと目の前に広がった時、素早く身を屈めてその外へ身を投げ出そうと飛んだ。
 しかし、男の網は確実に冴子の脚を捕えていた。引こうとしたがブーツの先が網に絡んでしまった。男はもがいている冴子に更に畳み掛けるように網を絡ませてくる。もがけばもがくほど網は絡みついていった。冴子は完全な敗北を悟った。
 脚の自由さえ奪ってしまえば、両手を拘束された女を捕えるのも訳はなかった。冴子の身体に馬乗りになり、腰に下げていた縄を取って網の下の冴子の足首を探る。冴子の両足首を縛ってしまうのに、そんなに時間は掛からなかった。
 冴子を逃げられなくしてしまってから、男は丹念に網を引き剥がしていった。冴子は男に背を向けないようにして、男を睨みつけていた。男は明らかに獲物を捕えた網技の首尾のよさに酔っていた。脚の自由さえ奪ってしまえば、もう怖いものは何もない。幾らでも好きなようにし放題なのだ。慌てることもない。たっぷり虐めて愉しんでから、逃げる力を失わせるだけ痛めつけて、鎖で引いていけばいいのだ。男は鼻歌まじりだった。
 すっかり網を引き剥がしてしまうと、改めて男は冴子の前に立って、目の前の捕えたばかりの獲物を検分する。剥き出しの乳房と付け根までが見えてしまいそうな太腿が刺激的だった。思わず、ごくりと喉が鳴る。
 冴子は両脚をぴっちり揃えて斜め横にくの字に折るようにして、短いスカートから股間が覗いてしまわないようにしていた。下着を覗かれてしまうのが恥ずかしかったからではない。むしろ男の注意をスカートの下に惹き付けておくためだ。男が欲情すればするほど、注意力は散漫になってくることを戦闘の経験から学んでいた。女にだけ与えられた特権としての武器である。
 見えそうでいて、見えない脚の付け根を目の前に晒されて、男は明らかに欲情が昂ぶっていくのを抑えきれないでいた。直ぐにも、のしかかってこないのは、それだけ寄る年波には勝てず、思いほどには下半身が俄かに言うことを聞いてくれないのを嫌というほど知っているからだろう。
 「待ってな。まずたっぷり可愛がってから、いたぶってやるからな。そうだ。」
 男は再びリュックのところに戻り、中からもう一束ロープを取り出してきた。その端を片方の足首に結わえ付ける。そして反対の端を手近な樹の枝に括りつけた。そうしておいて、両脚をまとめて縛っていたもう一方のロープを一旦解き、もう片方の足首にだけ結わえた状態でさきほどの枝と反対側にある樹の幹をくぐらせた。そうしておいてから、冴子の足元に立って、樹の幹に通したほうのロープをじわり、じわりと手繰り寄せ始めたのだ。
 「い、嫌っ。」
 ロープが引かれる度に、否が応でも冴子は脚を開かざるを得ない。脚が開くに従って、股間の下穿きが顕わになってくる。パンツが丸見えになっても男は手を緩めない。それを少しでも避けようと冴子は身をよじっているが、男の手の力には叶わない。男はロープの端を取り落としてしまわないように掌にぐるぐる巻きつけ、とうとう冴子が人の字の形に脚を大きく広げて、股間を丸見えにしてしまうまでロープを手繰ってしまった。大きく脚を開かせられてしまうと、冴子は観念した。それを確認してから、男は冴子の剥きだしにされた白い内腿の際にうつ伏せにしゃがみこんで、股からすぐ下の腿に口を付けた。すぐに舌が冴子の内股を舐め始めた。
 「どうだ、気持ちいいか。すぐにしたくて堪らなくさせてやるよ。」
 男はそういいながら、自分のズボンのチャックに手を伸ばした。冴子は肩を少しだけ上げるようにして、男の股間を盗み見る。下ろしたチャックの隙間から引き出された陰茎は、まだ挿入出来るほどには勃起しておらず、だらしなく、しかし、着実に少しずつ膨らみ始めていた。
 男の舌がぺろっと舐めあげる度に、冴子は身をのけぞらせた。男は冴子の反応に、益々欲情の度合いを高めていった。
 その時、興奮して反応している振りをしている裏で冴子の指につままれたヘアピンが最後の手錠の鍵孔を探り当てていた。冴子が男に背を向けないようにしながら、股間をちらつかせてそちらにばかり注意がいくようにしていたのは、背中の手錠が二つまで外れているのを気づかれない為だった。恥ずかしさに覗かれないように脚をぴたりと閉じているほうが、男の欲情を誘うであろうことは冴子の計算のうちだった。
 男の舌が横に滑っていき、潤いを持ち始めている下穿きの縁に触れた時に、冴子の背中で微かな音をたてて、最後の手錠が外れた。
 冴子は慎重にタイミングを見計らっていたが、熟れるような冴子の剥きだしの下半身に夢中になっていた男のほうはタイミングを取る必要もないほど無防備だった。
 手錠を片手にまだ付けたまま振り下ろされた冴子の両手は確実に男の後頭部を捉えた。脚の自由は奪われているので、二度、三度と念をいれて男の後頭部を殴った。
 男がぐったり倒れたのを確認して男の手に巻いたロープを解き、足首から縄を外した。

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