ベッドルーム躊躇い

騙された新人女優とマネージャー



 第一部



 五

 「え、素敵なお部屋っ・・・。」
 思わず感嘆の声が口に出てしまったものの、今から寝室に違いないその部屋に共演者の男性と二人だけになるのだと我に返ってそこから先の言葉を繋げないでいる由里なのだった。
 「じゃ、ここに腰掛けて。」
 剛は由里の肩に手を掛けて寝室中央のベッドに腰掛けさせる。
 「あ、あの・・・。」
 由里は思わず声が上ずって掠れてしまう。剛が掴んでいる由里の二の腕も微かに震えているのが感じられる。

bed room

 「由里ちゃん。もしかして・・・。もしかしてだけど、まだしたこと・・・ないの?」
 「えっ? したことって・・・。」
 「つまり、その・・・。処女って・・・こと?」
 由里は剛が突然発したその言葉に恥ずかしくなって俯いてしまう。
 「やっぱり、そうなんだね。それじゃ、演技がぎこちなくなるのも無理はないよ。」
 「ご、ごめんなさい。私、あのう・・・。」
 「いいよ、由里ちゃん。謝らなくって。・・・・。でもさ、僕ら・・・。あ、監督も含めてだけど、もう僕らにはあんまり時間が残っていないんだ。仕方ない。監督のアドバイスに従うことにしよう。由里ちゃん。これを着けてくれないか。これを目に当てて頭の後ろで縛るんだ。」
 剛が予め監督から渡されていたらしいものをポケットから取り出すのを見る。それは黒いビロードで出来たような細い帯だった。由里はすぐにそれが何だかを悟る。
 おそるおそるそれを剛から受け取ると目に当ててみる。そして言われた通り両端を後ろに回すと頭の裏側で縛って固定する。
 「怖い・・・かい?」
 「え? え、ええっ。少しだけ・・・。」
 そう答えたものの、何も見えないほうが却って心が落ち着いてくるような気もしてくるのだった。
 ベッドが少し揺れて、すぐ隣に腰掛けていた剛が立ち上がったのが気配で感じられる。
 「じゃ、今度は両手を背中の方に回してっ。」
 「えっ? こ、こう・・・ですか?」
 由里が両手を背中側に回すと手首を剛に掴まれたのを感じる。次の瞬間、自分の手首に何かが巻かれるのを感じた。
 (縛られるの?)
 そう思った時には既に手首には片側だけでなくもう片方の手首にも何かが巻かれてそれらが結び合わされたようだった。振りほどいてみようと力を篭めてみるが重ねられた両手首はびくともしなかった。



yuri

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