騙された新人女優とマネージャー
第一部
十九
由里はとうとう男に屈して誰も居ない早朝の屋上で、自らスカートを脱いでもう後へは引けない立場に自分を追い込むことに従う他はないと覚悟を決めたのだった。
「さ、脱いだらそのスカートをこっちへ寄越しな。」
「スカートを渡したら写真のこと、ちゃんと話してくれるのよね。それとスカートを取り上げたまま私をここに放置したりはしないわよね。」
「それは今後の交渉次第さ。俺だって危ない橋は渡りたくはないんだ。お前をスカート無しのままでここに放置したりしたら、こっちの身も危なくなることは充分理解した上でなんだぜ。」
「そう。じゃ、話が終わったらスカートは返してくれるのね。」
由里は自分が覚悟を決めたことが相手にも分かるように脱ぎ取ったスカートを男の方に差し出すのだった。
「で、どこまで写真は撮ってあるの?」
「ふふふ。ま、そんなに慌てるなよ。取引はこれから充分に時間を掛けてやりたいんでね。まずはお前の携帯を出して貰おうか。」
「携帯をどうしようっていうの?」
「お前の携帯を奪おうって訳じゃないんだ。交渉事には連絡手段ってものが必要だからな。さ、携帯を取り出したらこの番号に掛けて貰おうじゃないか。」
男は由里がバッグの中から携帯を取り出そうとしているところへ一枚の小さな紙きれを差し出す。
「何なの、これは?」
渡された紙には9桁の番号が記されてあって、何処かに繋がる電話番号のようだった。由里は訝しく思いながらもその番号を自分の携帯に打ち込んでいく。打ち終わって発信ボタンを押すと暫くして男の背広のポケットで着信音が鳴り始める。男はポケットから自分のスマホを取り出すと着信番号を確認すると受信取り消しボタンを押す。
「さてと。これでお前の携帯への番号はゲットさせて貰った。次からはこの携帯番号で連絡させて貰うぜ。呼出しが掛かったらすぐに応答するんだぜ。いいな。」
「え? で、でも・・・。」
「今日のところはここまでで終わりさ。お前だって何の準備もしていないんだろ。」
「じゅ、準備って・・・。」
「そんなに時間は掛からないうちに次の交渉の連絡を入れてやるからさ。楽しみに待っているんだな。」
「え、そんな・・・。ね、お願い。せめてどんな写真まで持っているのかぐらい教えてっ。」
「そいつは一番の切り札だからな。そんな簡単に教える訳にはいかないんだよ。ま、ただのキスシーンぐらいまでしかないってことはないから、せいぜい期待しておくんだな。じゃあな。」
「え、待って。スカートは返して頂戴っ。こんな格好じゃ、下に降りていくことも出来ないわ。」
「ああ、そうだったな。しかし、只でって訳にはゆかないな。」
「只でって訳には・・・ゆかない?」
「ああ、そうだな。お前が今穿いているそのストッキングとショーツとの交換ならスカートは返してやってもいいぜ。」
「え、何ですって? 私にノーパンになれっているの?」
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