若妻のたしなみ
五
「それじゃあ、家の中を案内して貰おうか。」
「・・・。」
「まずは、奥さんの寝室だ。二階なんだろ。この間取りからいうと・・・。」
「こ、困ります。」
理恵が逡巡していると男の手が理恵のスカートに伸びてきて服の上から理恵の尻たぶをぎゅっと掴む。
「きゃっ。やめてっ。」
理恵はなんとか払いのけようとするが、首輪と手錠を繋いでいる鎖が邪魔をして手が届かない。理恵は逃げるようにして二階へ向かう階段を先に立って登り始める。かなり短いスカートなので下から覗かれてしまうかもしれないと思うが、手錠の鎖がスカートの裾を押さえることすら許してくれないのだ。
「ほう、この部屋か。ダブルベッドじゃないか。ふふふ。後が楽しみだな。おや、その掃出し窓の向こうはベランダだな。そうだ、暫くベランダに出ていて貰おうか。」
「え、何ですって。そんな、嫌です。」
しかし男は理恵の背中の鎖をしっかり掴むとぐいぐい理恵を押してベランダへ出る窓の前まで押しやる。さっと内側のロックを開けると窓を開いて理恵を外に追い出してしまう。再び窓が閉められロックが掛けられてしまうまであっと言う間だった。
「お願い、開けてっ。中に入れてっ。」
ベランダといっても奥行は人がやっと一人立っていられるぐらいしかない。普段は洗濯物を干すのにしか使っていない。
「奥さん。外の通りを歩いている連中に目の保養をたっぷりさせてやりなよ。」
そう言われて、理恵はかなり短いスカートで高いところに立たされていることに気づいた。すぐ傍に路地が通っていて、家側の近いところから見上げると、スカートの奥まで覗いてしまうのだ。
「いやっ、こんな所で恥ずかしいわ。」
「奥さん、手錠を嵌められているのを見られちゃってもいいのかい?」
理恵は男の言葉にはっとする。
(そうだ。手錠を嵌めていたのだった。)
慌ててその背中を家の内側に向けて、背中の手錠と鎖を通りからは見えないように隠す。しかし今度は短いスカートの奥を正面から晒すようになってしまうのだ。
(どうしよう・・・。)
スカートの奥を隠そうとするとしゃがみこむしかない。しかし、背中を向ける訳にはゆかないのでかなりきわどい格好になってしまう。理恵は下着が丸見えにはならないように片膝を折るようにしてしゃがみこむ。それでも下着は少し覗いてしまっているかもしれなかった。
「しばらくそこで頭を冷やしてな。俺はその間、家ん中を物色してくるからな。」
そう言うと男は理恵の寝室を後にしたらしく姿が見えなくなってしまう。
男の言葉どおり外は冷たい風が吹き抜けていた。そしてその風が冷すのは頭だけでなく、理恵の薄手の室内着しか着ていない身体をも確実に冷していくのだった。
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