エプロン

若妻のたしなみ



 十六

 「片付は終わりました。」
 「そうか。それじゃあ夕飯の準備をして貰おうか。と言っても、買い物にも行ってないんで冷蔵庫には碌なものがないようだったな。出前で鮨でも注文して貰おうかな。特上の鮨を二人前、届けて呉れるように電話するんだ。」
 「特上の・・・、鮨ですか。わかりました。」
 もうすっかり男には従順になってしまう理恵だった。
 電話をし終えた理恵に男が言う。
 「お前が持っているエプロンを全部持って来い。」
 理恵は言われるがままに、二階の自分の寝室のクローゼットから持っていた全部のエプロンを持ってくる。男はその中から結婚直後によく使っていたかなり短めの刺繍とフリルが付いたエプロンを選んでそれを着けるように命じる。なんとかぎりぎりで無毛の股間が隠れるものの、お尻は丸出しなのだった。
 「寿司屋が出前を持ってきた時に下半身丸出しって訳にもいかないだろ。」
 「でも、これではお尻が丸出しです。」
 「寿司屋には背中を見せないようにすればばれない筈だろ。」
 「でも、こんな短い丈では・・・。」
 「寿司屋にも少しぐらいはサービスして露出してやれよ。」
 「・・・。わ、わかりました。」
 最早、何を言っても無駄だと悟りきった理恵は、おとなしく男の言う通りにすることにした。

 ピン・ポーン。
 15分後ぐらいにドアチャイムが鳴る。下半身にはエプロンしか着けてない理恵が恐る恐る玄関ドアの覗き窓から外を観ると出前を頼んだ寿司屋の若い男性店員だった。
 「お寿司屋さんです。」
 キッチン奥に座っている男に向かってそう告げると、男は出てやれとばかりに顎で合図する。
 「はーい。どうぞ。」
 玄関のドアロックを解除して寿司屋の男を招じ入れる。
 「特上鮨、二人前。お届けにあがりました。」
 「ご苦労さん。今、お代を。」と言って財布を取りに振り向こうとして理恵ははっとなって凍りつく。男に背中を見せる訳にはゆかないのだった。
 「あの・・・、お代は・・・。」
 「あ、寿司桶を取りに伺う時でいいですよ。これ、請求書です。何かお祝いですか。特上鮨なんて最近は頼んでくれる人も少ないんで。」
 そう言いながらも配達人の目は、理恵の短いエプロンから見えている生脚に釘づけになっているのがはっきり見て取れた。理恵は配達人が生唾を呑み込んだのも見逃さなかった。
 「ああ、・・・。主人の誕生日なんです。」
 「なるほど。お幸せそうでいいですね。じゃ、私はこれで。」
 寿司屋の配達人は奥に居た男には気づかずに去って行く。決して自分の背後を見せないようにずっと真正面を向き通して、配達人が去っていってからしっかりと玄関ドアに錠を下してやっと男の方を振り返る。
 「あの、お鮨が届きましたけど・・・。」
 「ふん、そうか。じゃ、そのエプロンはもう要らないから外しておけ。」
 理恵はそう言われると、逆らうこともなくエプロンを外して再び無毛の股間を露わにするのだった。

若妻

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