恭順

若妻のたしなみ



 十七

 理恵が二本目のビールを男のグラスに注いでやった時には既に男は一人前の鮨を平らげてしまっていた。一方の理恵のほうは自分の寿司桶を半分も食べ終えていなかった。
 「あの、今日はこちらに泊っていくお積りなんでしょうか?」
 理恵はおそるおそる訊いてみたのだった。
 「泊まる? まさか。お前に寝首を掻かれないとも限らないような家でおちおち泊まっていける訳がないだろ。」
 「寝首を掻くだなんて・・・。私はもう、こんな事されてしまって、夫にも合わせる顔がないし、どうせ離婚されるだけなんでしょうから、幾らでも好きなだけ私のことを犯していいですよ。」
 「ふん、何を自暴自棄になっているんだ。お前の方だろ。もっと抱いて欲しくて、俺に泊って欲しいって思っているのは。」
 「そ、そんな事・・・。」
 「悪いがな、こっちはお前にうつつを抜かすほど女には困っていないんでね。お前みたいな欲求不満女にしてやってるのは、慈善事業みたいなもんなんだ。」
 「慈善事業だなんて・・・。」
 「だってそうだろ。夫が居ない間に、夫が持っていた手錠と首輪を持出して、オナニーをしてたんだろ。普段夫にして貰えてない鬱屈した欲情が溜まっていたとしか思えないぜ。」
 「ああ、そんな酷い言い方・・・。」
 「夫のほうも駄目ダメだな。その様子じゃ、セックスも普段からうまく出来なくて、自分の妻に手錠を掛けて犯してみたいけど、その準備はしてみたものの、結局は言い出せなくて悶々としてたんじゃないのか?」
 「えっ、そんな事・・・。」
 理恵はあらためて、夫が何故手錠や首輪を密かに持っていたのかを怪しんでみる。
 (私にそんな事をしてみたいと思ったのだろうか・・・。)
 「さっき、こんな事されてもう夫に顔向け出来ないとか言ってたよな。」
 「だって、夫以外の男にあそこの毛を剃られて犯されてしまったんですよ。」
 「だったら夫に向かって、貴方の為におマンコの毛を自分で剃ったんだと言ってやればいいだけだろ。そして夫に縛って私を犯してくださいって頼み込んでみるんだな。縛られてしてみたいんですって言ったら、夫は自分から手錠を出してきてお前に掛けて犯してみるんじゃないのか?」
 「え、そんな事・・・?」
 「何故、お前の夫が密かに手錠とか首輪とかを用意していたのか、ようく考えてみるんだな。それじゃあ、そろそろ俺はお暇させて貰うぜ。奥さんのおマンコ、悪くはなかったぜ。御馳走さん。」
 そう言うと、男は理恵を置いて、玄関から出て行ってしまったのだった。

若妻

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