若妻のたしなみ
十四
(騙されたのだ・・・。)
漸く理恵は気づいたのだ。
「それを返してっ。」
男に背を向けて鍵を奪い取ろうとするが、首輪と鎖で繋がれた手錠の手では男の手元に届かせることすら出来ないのだった。逆に男に手にしていた鍵のほうを奪い取られてしまう。
「こっちは俺の鍵だから返して貰うぜ。」
「私の鍵を返して頂戴っ。」
「いやだね。そこで旦那の帰りを待ったらどうだい。旦那は鍵を持ってるんだろ?」
理恵は夫が出張に出掛けたことを思い出していた。少なくとも今夜は帰っては来ない。
「困るんです。夫はすぐには帰って来ないかもしれないんです。そ、それに・・・。」
「それに? それに何なんだ。」
「あ、あの・・・。お、おトイレにまた行きたいんです。もうずっと我慢しているので・・・。」
「ははあ、そういう事か。お前の夫はちなみに何時帰って来るんだ?」
理恵はもう嘘を吐いても仕方ないと観念した。
「夫は出張に出たので、今晩は帰ってきません。だから鍵を返してくれないと困るのです。」
「そういう事なら尚更、すぐに返してやる訳にはいかないな。」
「どうしたら返してくれるのですか?」
男は少し思案してから妙案を思いついたかのようにニコリとする。
「おしっこがしたいのだろう。今、ここでしてみせたら鍵は返してやってもいいぞ。」
「え、何ですって?」
理恵は男の非情な思いつきに思わず睨み返す。
「そうだな。何かいいものがないかな、その辺に。」
男は辺りを見回していて、玄関の隅にアロエの鉢が置いてあるのを見つける。園芸をやっている実家の父親が持ってきてくれたものだった。男はアロエの鉢が入れてある受け皿を鉢の下から取り出してくる。
「いいものがあった。これだ。これにするんだ。俺の目の前で今すぐにな。そしたら鍵を返してやってもいい。」
「そ、そんな・・・。」
往来ではないものの、家の前を何時、誰が通らないとも限らない。今は誰も居ないものの、何時誰がやってくるかも分からないのだ。
「俺はいつまでもは待てないからな。嫌なら俺はもう行くぜ。」
そう言うと男は踵を返して出て行こうとする。
「ま、待って。わかりました。言う通りにします。」
理恵はもう何もかも仕方ないのだと観念して男の方に向いたまま脚を広げてアロエ用の鉢の受け皿の前にしゃがみ込む。男のほうからはスカートの奥の裸の陰唇が丸見えなのは承知していた。今更隠しても仕方ないと観念したのだった。すぐにゆばりが迸りでてきた。男の目はずっと放尿をし続ける恥毛を失ったすべすべの割れ目を観続けていた。
最後の滴がやっと垂れ終わるのを下を向いて目を伏せながら理恵は待った。
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