若妻のたしなみ
四
「あ、これかあ。そうか。ふうむ。なんか棒か何かないかな。」
そう言って戻ってきた男ばキッチンを物色していて菜箸を見つける。
「まあ、これでいいだろ。」
「あ、それは・・・。」
(食べ物を扱うものをそんな所に入れられたら・・・)
そう言おうとして言葉を呑み込んだ理恵だった。手錠を外して貰えるのなら、菜箸ぐらい捨ててしまっても構わない、そう思い返したのだ。
男が洗面台で水を流している音が聞こえてきた。拾い上げた鍵を水で洗っているのだろうと理恵は思った。
「済みませんでした。お手数をお掛けして。」
男がキッチンに戻ってくると、外して貰おうと背中の両手を男のほうに向けようとして理恵は男の手に鍵が握られていないのに気づく。
「あの、鍵は・・・・?」
「ああ、大丈夫さ。ちゃんとしまってある。お愉しみが終わるまで大事に預かっておいてやるからさ。安心しな。」
「えっ、お愉しみって・・・。ま、まさか。」
「俺だって男だからな。手錠掛けられて身動きできない女を前にして、何もしないって訳にはゆかないだろ。」
「そ、そんな・・・。こ、困ります。大声挙げますよ。」
「そんな事出来る状況かい? アンタが声を挙げて大勢、この家に乗り込んできたら、恥掻くのは誰だろうね。」
「うっ・・・。わ、私をどうしようっていうの。」
「アンタがしようとしていた事を俺が手伝ってやろうっていうのさ。どうせ、自分で手錠を掛けて妄想してオナニーしようとしてたんだろ。」
「そんな・・・。」
男の言うのは殆ど図星だった。手錠を掛けられた自分を妄想しながらどんな気持ちになるか確かめてみようとしていたのだから。
「おや、この首輪には鎖が付いているのか。」
男はそう言うと鎖の端を持って、ぐいぐい理恵を引き始めた。
「や、やめてください。引っ張らないで。」
「ほう、この先っぽには茄子環が付いているのか。するってえと、ひょっとしてこうやって使うんじゃないのかい。」
男はそういうと、背中に垂れていた鎖の端を理恵の両手首に嵌っている手錠の間を繋ぐ鎖に繋いでしまったのだ。首輪と手錠が背中で繋がれることで、理恵は両手を下にさげることが出来なくなってしまう。ちょうどお尻の辺りが無防備になってしまうのだ。
男は理恵の首輪と手錠を繋ぐ鎖を手に取ると、理恵を引っ張り回す。理恵はそれに何の抵抗も出来ず、只牽かれるままについてゆくしかない。
「見知らぬ男が若妻一人の家に入り込んでいるんじゃ、世間体が悪いから玄関の戸は開いたまま話をしようじゃないか。」
そう言って、理恵をどんどん玄関前まで引っ張ってゆく。男の手が玄関扉のノブに掛かる。
「や、やめてっ。開けないで。いいわ、閉じておいてっ。」
「ほう、そうかい。奥さんの希望じゃしょうがない。鍵は開いたままでいいのかい。」
「くっ・・・。か、鍵は締めておいて・・・、ください。」
「奥さんの希望で鍵を締めるんだね。邪魔されたくないって訳だ。」
「そ、そうじゃありません・・・。」
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