28パンツ見え

妄想小説

キャバ嬢 サチ



 七

 「ねえ、お願い。もう解いてっ。」
 正雄の目の前で、サチは目を潤ませながら跪いて懇願していた。サチの短いミニスカートはずり上がってしまっている為に裾の奥に逆三角形に白いショーツが覗いてしまっている。正雄に覗きこまれていることで、サチもそのことに気づいているのだが、両手は後ろ手に縛り上げられている為、両腿をぴっちり閉じ合わせることしか出来ない。しかしあまりに短いスカートなので、しゃがみこむとそれでも下着は覗いてしまうのだった。
 「駄目だ。お前は俺の奴隷なんだ。奴隷にふさわしい格好でいろ。それにパンツ丸見えにさせてるのが好きなんだろ。お前は淫乱女だからな。もうそのパンツの裏側も濡らしてべっとりなんだろ。」
 「あ、嫌。言わないで・・・。」
 サチは図星を差されては恥ずかしさに俯いてしまう。
 「今、脱がして調べてやる。その前にこいつを咥えて奉仕するんだ。」
 正雄はサチに近づくと、ズボンのチャックを下ろし鎌首も擡げ始めたペニスをサチの顔面に突き出す。思わずサチが顔をそむけようとするのを、サチの金髪に染めた髪を掴んで無理やりペニスのほうに向き直らせる。
 「さ、咥えろっ。」
 正雄は自分ではないかのような強い語気に、無意識のうちに松浪の言い方を真似ているのだと気づく。
 「うううう・・・。」
 無理やりこじ開けられた唇に正雄のペニスがぐりぐりと突っ込まれていく。サチの口の中の生温かいぬめりとした感触が正雄の脳を激しく刺激する。
 「うおっ、気持ちいい・・・。ああ、ああ・・・。」

 ふと目覚めた正雄は自分が布団の中に居ることに気づいてはっとする。下半身が何となく気持ち悪い。おそるおそる腹から下着の中に手を入れてみて、夢精して発射してしまっていることに気づく。ペニスは既に萎え始めていた。
 (ああ、またやっちゃった。)
 寝ながら横を向くと、目の前の枕元に白い布切れが丸まって置かれている。今も微かな女特有の匂いを放っているのが感じられる。その匂いのせいで、夢を見たのは間違いないと思った。
 その夜はもう3度も射精してしまっていた。それもこの布切れのせいだった。

 その夜、キャバクラを出て松浪と別れてアパートに戻った正雄は、訳も判らないままキャバ嬢のサチから突然手渡されたプレゼントに何故かしらうきうきしていた。女性からプレゼントを貰うのは、母親を除いては今までに無いことだったからだ。
 アパートに入って、独り、机の前に渡された化粧箱を置いてみて、その余韻に浸っていた正雄だったが、その中を開けてみる誘惑と、開けてみてがっかりするのではないかという不安とで、どきどきしながら逡巡していたのだった。
 が、ついに誘惑に駆られて綺麗に折り畳まれた包装を丹念に剥しながら開いてみて、白い桐の化粧箱を開けた正雄は中にあったものに度肝を抜かれた。
 それは明らかに使用済みの女性の下着だったからだ。震える手で摘まんで広げてみるとクロッチの部分が汚れている。鼻に近づけてみて、正雄にとっては強烈過ぎる刺激的な匂いを嗅いだときには、既に正雄のペニスはぱんぱんに膨れていたのだった。

 サチのあられもない姿態を思い出しながらペニスをしごいて、いつになくどっぷりと大量のザーメンをティッシュの中に吐き出した後、ふうっと息を吐いてから、正雄はサチが
 自分に下着を、それも使ったばかりに違いない汚してしまったショーツをプレゼントしてくれた意味を考え始めた。
 女性と付き合った経験の無い正雄に、自分から下着を差し出す女性の気持ちが判る筈もない。それだけに、自分勝手にあれこれ想像をたくましくしてしまうのだった。
 (あの、サチって子。きっと僕に気があるに違いない。何だか、松浪さんには頭があがらない風だったけど、松浪さんにじゃなくて、僕にプレゼントを呉れたってことは、それなりの思いがあるに違いないんだ。)
 そんな風に思い込んでしまった正雄なのだった。

 次の朝も、正雄は会社の通用門を潜ると、自分の事務所のある方の道へは向かわず、まっすぐ工場の建屋がある側へ歩いていく。工場の手前にある弘済会の売店の角を曲がるとその先にある建物を目指して足取りを落としてわざとゆっくり歩いていく。その二階建ての建物には外階段がついている。昔は何か違う用途で建てられた物に違いなさそうだったが、今では一階は男性工員の更衣室とシャワールーム、二階の外階段に繋がる部分は女子工員や女子事務員の更衣室になっているのだ。女性が二階なのは、圧倒的に多い男性工員に対して、少ない人数の女性用にちょうどいい小部屋が二階にだけあるせいらしかった。
 その外階段のすぐ脇を通り抜けていくことを思いついたのは、もう随分前のことだった。
 思いおもいの私服でやってきた女性が会社の制服に着替えてそれぞれの職場へ散っていくのだが、外階段なので、下を通って降りてくる女子社員を盗み見ると、スカートの奥まで覗いて見えることがあるのを知った為だった。制服は膝丈よりちょっと短い位なのが普通だが、中には自分で勝手に丈を詰めて、ミニスカートにしている女子社員も居た。幸江もそのうちの一人だった。制服を短くしているような女性は、会社に着てくる通勤着もセクシーなものを選んでいることが多い。大胆なミニスカートや股座ぎりぎりまでのショートパンツを穿いて、太腿を露わにしている女性も何人か居た。それを盗み見る為に、わざわざ遠回りをして自分の事務所まで向かうのだった。
 そこを通るからといって、何時でもそういう光景に出喰わす訳ではない。が、毎日のようにそこを通って出勤していれば、そういう千載一遇のチャンスに出遭う確率が無いではないのだ。一度、いつもミニを穿いてくるすらっとした背の女性社員が更衣室に消える直前にその階段下をすり抜け、一瞬だけ見上げてその女性のスカートの奥に白い下着をはっきり確認してから、正雄にはそのコースを通るのが病みつきになってしまったのだ。
 (ちえっ、今日も駄目か。)
 偶々だが、正雄が通り抜けるタイミングには誰も昇っても行かず、降りてもこなかった。正雄は気を取り直して、工場脇の道を進んで自分の事務所のある側へ裏道を使って向かう。工場敷地の外れにある事務所は一段低い崖下にあって、工場の端から狭い階段を下りてゆくことになる。階段を降り切ったすぐのところに正雄の居る特許課の事務所がある建屋に出る。ここにも外階段がついていて、主に非常口として使われているが、そこからも出入り出来る。が、正雄はそのすぐの外階段は使わずに、わざわざもう少し歩いて、その建屋の真ん中にある正規の玄関口から入ることにしているのだ。それは正雄が歩いてくる道に近い外階段が非常用で正規の出入り口ではないからではなかった。実際その外階段を使って出社するものも何人か居た。正雄がわざわざ遠回りしてでも玄関から入るのは、二階にある事務所へ向かうのに、今度は内階段を使う為だ。この建屋に居る殆どの女子社員はこの内階段を使う。そこでも正雄は階段を乗降する女子社員のスカートの奥を覗くチャンスを窺がいながら通っていたのだ。特に正雄にはお目当てが居る。正雄の隣の席の、去年入った新人の女子事務員の子、マリコだ。風俗の女性しか話し相手の居ない正雄にとって、恋人を作って結婚にまで漕ぎつけるとしたら、この子をおいて他にチャンスはないのではと密かに思っているのだ。美人系の顔立ちだが、性格はちょっときつい。しかし何より、十年以上のキャリアのある正雄より仕事が出来るということが最大の難関だった。何とか先輩面を保っているが、間違いを指摘されたり、咎められたりしてしまうこともある。そんな時には「そんなことは勿論、判っているよ。」などと言って強がって見せるのだが、内心はうろたえてしまう正雄だった。そんな正雄が一度だけ、二階から内階段を下りてくるマリコの足元を覗き上げて見てしまったことがある。幸江のようにスカート丈を詰めている訳ではないので、下着まですぐに覗いて見えそうということはないのだが、階段の際にもうちょっとだけ寄っていたら、かなりきわどいところまで見えていたように思われた。それ以来、正雄はマリコの所作が気になって仕方なくなっていた。席に並んで座っている時でも、正雄はマリコの脚をちらちら斜めに覗いてしまう。コピー機が調子悪くて、マリコが用紙を入れ直すのに屈んだりしている際は、それとなく横目で盗み見て、腰を屈めた瞬間に下着を覗かせてしまわないか見張っている正雄なのだった。

 その日も工場脇の女子更衣室の外階段で女の子の脚を覗きこむ機会を逃した後、再度のチャンスと事務所のある棟の内階段をゆっくりと窺がいながら昇ろうとしていた正雄は聞きなれた声を耳にして階段下にある自販機の前で足を止めた。声はマリコのものだった。どうもこちらへ向かって降りてくるところらしかった。生唾を思いっきり呑みこんでから自販機で何か選ぶ振りをしながら、階段の際に身を寄せて上のほうを窺がっている時だった。

29内階段

 「おう、マサオっ。お前、こんなとこで何してんだい。」
 突然後ろから掛けられた声にびくっとして振り向いた正雄の目に、嘗ての上司、松浪の姿が映った。
 「あっ、あっ、あっ、あっ、と、と、と、と、松浪さ、さん・・・。」
 慌てたことで声がうわずって思わず吃ってしまう正雄に、階段から降りてきたマリコともう独りの庶務の女性、尚美は、正雄に気づいて不様な動物でも見下すかのようにカラカラと笑い声を上げる。
 女性二人が通り過ぎてしまったところで、松浪は正雄に近づいて耳打ちする。
 「お前、今、女の子のスカートを下から覗こうとしてただろ。」
 松浪の言葉に、正雄は心臓が止まりそうになるほどの衝撃を受けて思わず顔を真っ赤にする。
 「め、め、め、め、滅相もな、ない・・・。」
 慌てる正雄の様子に、図星だったことを確認する松浪だった。
 「ははん、さてはそういう意図があって、いつもわざわざ遠回りをしてたのか。すると、通用門から真っ直ぐ来ないのは、工場の女の子が使ってる女子更衣室の外階段も覗いているのか?」
 ますます図星を差されて、正雄は目をきょろきょろ泳がせてしまう。
 「は、ま、いいか。それより、この前の店の子。お前に何か渡してたろ。あれ、何だったんだ。」
 知っているくせに恍けて訊いてみた松浪だった。
 「はい、あの、その、ですね。えーっと・・・、は、は、は、ハンカチみたいなものっていうか、その・・・・。」
 返答に困って、ついその格好から連想してハンカチみたいなものと言ってしまった正雄だったが、松浪がまさか真相を知っているとは夢にも思わない正雄は何とか取り繕おうとするのだった。正雄の狼狽ぶりをみて、松浪はそのモノに相当な興奮をしているのだと知って、思わずほくそえむ。
 「ハンカチみたいなものか。ハンカチじゃないってことだな・・・。まあ、いいや。おい、マサオ。今度またあの店行って、あいつを指名しような。また奢りって訳にはいかないけどな。」
 あの日は松浪が奢ると言って誘ったので、正雄には見つからないように会社のコーポレートカードで支払いを済ませた松浪だった。
 (そうだ、今度、松浪さんと行く前に独りでこっそり行ってみよう。プレゼントのお礼も言わなくちゃならないし。)
 松浪が去って行った後、そう密かに決心した正雄なのだった。

01サチ

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