妄想小説
キャバ嬢 サチ
四
「おおい、幸っちゃん。ちょっと手伝ってくれないか。」
声を掛けてきたのは、隣の部の部長、橋本拓哉だった。幸江が所属する部ではないのだが、同じ製品を扱う兄弟分とも言える部署で、お互い助け合うことも多い。ぱっと見渡してみて、橋本の部の女の子連中は皆出払っているらしかった。
「いいですよ、拓さん。」
橋本は、部長の中では気さくな性格で、女の子達の受けも良かった。幸江の直属の上司である亀成部長のような陰険な雰囲気が全くなかった。気さくなこともあって、皆からは「拓ちゃん」と呼ばれている。幸江はさすがに「拓ちゃん」とは呼べないので「拓さん」にしていた。幸江にしてみれば、自分の上司の亀成について仕事をするより、高木のほうの仕事のほうがよっぽど嬉しく、暇さえあればむしろ自分から進んで仕事の手伝いをするのが常だった。
「これと、これと、このファイルを持って一緒に着いてきて欲しいんだ。急に重役から説明を求められちゃってね。今、予算の仕事でみんな出払っちゃってるから。」
重役から直接電話が掛かってきて、今すぐ説明に来て欲しいということらしかった。資料がいっぱい必要なようで、橋本自身が何やら重そうな部品を抱えている。それで手が塞がっているので、幸江には書類の入った分厚いファイルのほうを持って欲しいということらしかった。
「大丈夫ですよ。今、空いてますから。これですね。はい。」
そう言って、幸江は橋本の机から率先して分厚いファイルを両手で抱え持つ。結構な重さだったが、それでも橋本部長の持つ大きな部品よりは見るからに軽そうで、橋本も女の子が持つのに遠慮して軽いほうにしてくれたようだった。こういう気の使い方が女の子達に人気がある原因のひとつだった。
小走りにエレベータのほうへ向かう高木の後を追うように、幸江もファイルを抱えて小走りになって後につく。
橋本と幸江の待つエレベータの扉が開くと、中から出て来たのは何と杉山哲太だった。
「あら、哲太くうん。」
「おう、幸っちゃん。部長と何処いくの。」
橋本は哲太の上司の部長なのだった。
「ちょっと物運びのお手伝い。」
そう言って、哲太に向かってウィンクしてみせる。
「あ、じゃあ僕、代わろうか。」
「あ、いいのよ。大丈夫よ。私で十分出来るから。」
「そうだな、哲太。お前、あのこの間頼んでおいたレポート、まだだろ。そっちを急げよ。こっちは運んで貰うだけだから、お前はあっちの方の仕事を優先で頼むぞ。」
すぐ横にいた橋本も部下に仕事のほうを進めるように指示をする。
「じゃ、一階でいいですか。」
そう言うと、両手の塞がっている橋本と幸江の代わりに行き先のボタンを押してやり、続いて「閉じる」のボタンを押してからさっと身を引く哲太だった。
幸江たちは、自分達の事務所のある設計本館の5階から、役員たちが居る事務本館の最上階へ向かっていった。事務本館は隣のビルだった。緑の芝生を囲うように設けられているロータリーの舗装路を二人して事務本館の裏にある通用口へ向かう。その二人を見かけて、そちらへ急ぎ足で近づいてくる人影があるのを、幸江も橋本も気づいていなかった。
通用口を抜けてエレベータホールまで来て、エレベータを呼ぶボタンを押すのに塞がった手を空けようと、橋本が膝を上げて手にした部品を支えようとしているところを後ろから手が伸びてきてボタンを押した。
「どちらまで。重そうな部品を持って。」
「あっ、松浪室長。今、不具合の説明に、松本重役のところへ説明に行くところなんです。どうも済みません。」
幸江はエレベータのボタンを押してくれたのが松浪だと気づいてさっと顔をこわばらせる。一瞬、嫌な予感が幸江の脳裏を掠める。
「じゃあ、5階でいいんだな。俺も上へあがるところだから。」
そう言うと、ボタンを押したまま二人を先に庫内に促すと、後から松浪も入ってきたのだった。
幸江は、松浪がお尻に手を伸ばしてくることを懼れて、庫内の壁を背にするようにして奥の隅に引っ込む。橋本がドア近くの位置に立つ。橋本と松浪は同じ部長待遇の立場だが、松浪のほうが上という先輩、後輩関係にある。会社では目下の方がエレベータではドアの傍に立つというのを忠実に守っているようだった。松浪のほうは行き先の最上階のボタンを押すと、悠然と奥のほうへ入る。そこは必然的に幸江の立つ位置のすぐ横だった。
エレベータの扉が閉まって、上へ向かって動き出した直後、幸江は自分の考えが甘かったことを思い知らされた。松浪の手が幸江のスカートの裾の方へ伸びてきたのだ。お尻を触るどころか、幸江の股間を堂々と前のほうからまさぐろうとしていたのだ。両手が抱えている三冊の分厚いファイルの為に完全に塞がっている。声を挙げて橋本に振り返られることも出来なかった。それが判っているからなのか、松浪は大胆、且つ図々しく幸江の制服のスカートをたくし上げると、剥き出しになったショーツに包まれた恥丘の膨らみを鷲掴みにしたのだった。
(うっ・・・。)
思わず挙げそうになる悲鳴を喉元でなんとか呑み込んだ幸江だった。詰るような目つきで松浪の方を睨むように見上げる幸江だったが、そんなことでひるむ男でないことは既に幸江はよおく身に沁みて判っていた。幸江は口惜しさに唇を噛んで堪えるしかなかった。松浪のほうは、幸江が何も抵抗出来ないことをみてとると、恥丘の膨らみの真ん中の割れ目にあたる部分に人差指と中指を合わせて当てると、くの字に折ったり伸ばしたりしながら、ショーツのクロッチの上から幸江の陰唇をやりたい放題揉みしごくのだった。
突然、松浪の指の動きが単純な擦り方から変わった。ショーツのすぐ横に指を立てて押し付けてきた。その動きから幸江は松浪が幸江のストッキングを破ろうとしていることを悟った。既にキャバクラの席で一度ストッキングを破られている。その次にはショーツの中に指を突っ込んでくるのに間違いなかった。
(駄目っ。)
そう叫びたいのをなんとか堪えた幸江だった。両手に抱えた三冊の大きなファイルを取り落とさないように気をつけながら、幸江は腰を回すようにしながら松浪の指から逃げようとする。松浪のほうも、動きを橋本に悟られないように気をつけながらも執拗に幸江の股間を追い掛け回す。追い掛け回しても埒が明かないと思った松浪はスカートの奥深く腰の部分まで手を伸ばし、ストッキングとショーツを一気に引き下げようとし始めた。
(な、なんてことをするつもりなの・・・。)
幸江が松浪のあまりの暴挙に、顔を蒼くしたその瞬間、チーンという音がして、エレベータが最上階に着いたことを報せた。松浪の手がさっと遠のくのと、エレベータの扉が開くのが同時だった。ほっと安堵の息を吐いた幸江のほうに漸く橋本が振り向いた。
「幸っちゃん、じゃ行くよ。それじゃ、松浪さん。」
部品を抱えた橋本は、ファイルを抱えた幸江に目配せし、同乗してきた松浪にも軽く会釈して、エレベータホールの奥に続く深い絨毯の廊下を先に立って重役室に向かう。その後を追うように続いていく幸江は、後に残された松浪のほうをちらっと振り返ると、鋭い目つきで睨みつけてから、足早に橋本に付いてゆく。
「じゃあ、15分ぐらいで済むから外で待ってて呉れる?」
「判りました。エレベータホールの前のソファのところで待ってますから、声を掛けてください。」
幸江は深々とお辞儀をすると、役員室を一人で出てゆく。役員室からエレベータホールへ通じる分厚い絨毯の敷かれた廊下を音を立てずに歩いていく幸江は、廊下がT字路の真ん中に当たるところでエレベータホールに繋がる角に置かれているソファを目指していた。役員に応対する者が時間待ちをするのに設けてあるものだ。そこへ腰を下ろそうとした時、いきなり角の向こうから伸びてきた手で、手首を強く掴まれた。
「誰っ、何するの・・・。」
大声を立てそうになって、すぐに声を潜めた幸江だった。エレベータホールの目の前はガラス張りの秘書室があるが、今は誰も席には居なかった。はっとして見上げる幸江の目に血走ったような形相の松浪が映った。松浪は振りほどこうとする幸江を、更に強い握り方で幸江の手首を捻るように引き寄せると、ぐいぐいホールの奥へ幸江を引っ張っていく。
「や、やめて・・・。」
周りを気にして、小さな声でしか抗議出来ない幸江だった。松浪が幸江を引っ張り込んだのは、秘書室の反対側にある男性用トイレの中だった。秘書室に誰も居なかったことから、今同じフロア内には橋本部長が入っていった部屋以外には、役員は在室していないことを幸江は悟った。おそらく松浪もそれを見越しての狼藉なのだろう。
「大声を挙げたって、いいんだぜ。な、サチ。」
松浪はわざと幸江を源氏名で呼ぶ。それが意味しているものは明白だった。
「誰か来たら、俺はお前に呼び出されたんだって言うのさ。夜のバイトのことをどうか見逃して欲しいって頼まれたってさ。」
「何ですって。ま、まさか・・・そんなこと・・・。」
「実際、キャバクラで働いていた事が明るみに出たら、どっちの言うことを皆んな信じるかなあ。へっへっへ。」
「汚いわ。卑怯者・・・。」
松浪は捩じ上げた幸江の片腕を後ろに押して、幸江の身体を男性小便器のアサガオに押し付けようとする。幸江のお尻が小便器の下側の受け皿の部分に当たると、幸江の脚を開かせようと、松浪は片膝を上げて、幸江の両腿の間に割り込ませようとする。幸江は自由なほうの片手で必死で松浪の膝を食い止めようとする。松浪は幸江の両手が塞がったのを見て、空いているもう片方の手を幸江の胸元に伸ばして、制服の下に来ているブラウスのボタンを外し始めた。
「や、止めてっ。」
所詮、男の松浪の力に幸江の抵抗が敵う筈もなかった。幸江は両脚の間に松浪の膝をすっかり食い込まされていた。それでも猶、松浪の膝がぐいぐい押してくるものだから、幸江はお尻を便器の中に押し込められようとしていた。それに何とか抗おうと自由なほうの腕で便器側の壁に手を突いていなければならなかった。ブラウスのボタンはどんどん外されていくのを目の当たりにしながら、どうすることも出来ないのだった。
制服の上着のベストと、その下のブラウスのボタンをすっかり外してしまうと、松浪の手は、幸江のスカートを留めているホックに伸びてきた。スカートのホックを外し、ファスナを下げてしまうと、松浪は漸く幸江の身体を便器に向けて押し付けていた膝を下ろした。幸江はスカートがずり落ちてしまわないように慌ててスカートを上から抑える。松浪は今度は幸江の背中に手を伸ばして、ブラジャーのホックを外そうとする。幸江はブラジャーを外されるのを判っていて、どうすることも出来なかった。ブラジャーのホックが外れたところで、松浪は小便器に幸江の身体を押し付けていた膝を外し、今度は捩じ上げていた手首を引き寄せ、ブラウスとベストを引き剥がしに掛かった。幸江はスカートがずり落ちないように抑えているので精一杯で、ベスト、ブラウス、ブラジャーと次々に衣服を引き剥がされていくのをどうすることも出来なかった。幸江の上半身を裸にしてしまうと、松浪は片腕を捩じ上げたまま幸江の背後に廻り、スカートを抑えている手首も掴んで両手とも後ろ手に捩じ上げてしまう。松浪が幸江の両手を捉えたまま身体を振り回すので、スカートは徐々に膝までずり落ちてゆき、とうとうポトンと床まで落ちてしまった。幸江が薄いストッキングと、その下に透けて見える白いショーツのみになってしまったところで、松浪は再び幸江を便器のほうへ突き飛ばすようにして、床に散らかっていた幸江の衣服を素早く拾い上げた。
「いや、返してっ。」
両手を前に交差させて、裸の乳房を隠すようにしながら、幸江は小声で叫んだ。
「見逃して呉れるなら、この身体を差し上げますって言って、服を脱ぎ出したんだ。俺はよせって止めようとするのに、どんどん自分から裸になってさ。」
松浪は幸江に誰かが来た時の台詞を言い含めるように話す。幸江は松浪の卑劣さに怒りを篭めて睨みつけるのだが、悪辣な松浪の暴挙から逃れる手立てを思いつけないでいた。
「ほれっ。」
松浪は三つある個室の一番奥へ幸江の衣服を放り投げてしまう。その個室に入らせないぞとばかりに扉の前に立ちはだかる。
「さ、逃げてしまってもいいんだぜ。もっとも男子トイレからそんな格好で走り出してきたのを見つけたら、誰でも事情を聞かない訳にはいかないだろうけどね。」
「ひ、卑怯よ。私にどうしろっていうの。」
「この女が俺をトイレに連れ込んで、どんどん服を脱いでゆくんだ。俺はやめろと止めたんだが、言うことをきかず、とうとう自分からストッキングとパンティも脱いじまって素っ裸になったんだ。」
松浪は幸江が逃げ出した時に言うであろう自分の台詞を再び語り出す。それはまさしく幸江に目の前でストッキングとショーツを取れという命令を下したのと同じだった。
「さ、どうするんだ。サチ。」
松浪は勝ち誇ったかのように腕を組んで、悠然と立ちはだかる。幸江は口惜しさに唇を噛みしめる。首をうな垂れたまま、幸江は観念して腰に手を掛けた。ストッキングとショーツをまとめて膝まで引き摺り下ろす。幸江の薄い恥毛が松浪の目の前に露わになる。幸江は恥ずかしさに顔を上げられず、下を向いたままサンダルのバックルを手で外して、ストッキングとショーツを脚から抜き取った。
「さ、こっちへ寄越せ。」
松浪は泣きそうな顔で差し出す幸江からひったくるように下着を奪い取ると、ストッキングだけ手の中へ残して、ショーツも後ろの個室の中へ放り投げてしまう。
「こっちへ入るんだ。」
松浪は幸江の髪の毛をいきなり掴むと、幸江の服を放り投げた所ではない隣の個室へ幸江の身体を押しやった。
「この女は、あろうことか俺のズボンのベルトを緩めて、チャックを下ろすとペニスに手を伸ばしてきやがった。そしてどうしたと思う・・・。」
松浪は幸江に向かって、第三者に語りかけるようにストーリーを話す。幸江は松浪の姦計に憤りが込み上げてくるのをやっとのことで抑えながら、松浪の前に跪き、ベルトを緩めズボンのチャックを下ろす。最早逃れる術はないと観念した幸江は、下ろしたチャックの間に手を突っ込んで、トランクスから松浪のペニスを引き出した。それはまだ膨らみかけてもおらず、醜く松浪の股間にぶら下がっていた。
「ほれっ、どうした。」
急かす様に松浪は目の前に跪く幸江の髪を掴んで自分の股間に引き寄せた。
「うぐっ・・・。」
いきなり唇に押し付けられた柔らかい肉の塊を、幸江は咥えざるを得なかった。生温かい肉棒の感触と、ツンと鼻を突く臭気に、思わず吐きそうになる幸江だったが、両手でしっかりと幸江の髪を掴んだ松浪がそうはさせてくれなかった。
「ほれ、しっかり咥えろ。舌で転がして、早く大きく、硬くしてくれよ。」
幸江は口いっぱいに広がる嘔吐感にたまらなくなって、松浪の両腿を手で押しやろうとする。その手首を松浪は再び掴んで引き上げた。
「その手は邪魔だな。」
そう言うと、さっき残しておいた幸江のストッキングを手首に巻きつけもう一方の手首も引き上げて、幸江の頭の上で小手縛りに括りつけてしまう。それから余ったストッキングのもう一方の端を幸江の首に回して、両手首を後頭部から動かせないように首に廻して括りつけてしまう。両手の自由を奪われてしまった幸江には、最早抵抗する術を失ってしまい、松浪が腰を動かすのに併せて、ペニスをしゃぶり続けるしかなかった。しかし、松浪の陰茎はなかなか勃起してこなかった。それを松浪自身も気づいて焦り始めたようだった。
その時、個室の外でキーッと物音がした。一瞬、凍りついたように松浪も幸江も動きを止める。誰かがトイレに入ってきたようだった。松浪は幸江がペニスを口から外さないようにしっかり幸江の頭を抑えたまま様子を見ていた。
(個室に入って来られちゃったら、どうしよう。こっちでなくても、隣を開けたとしても脱がされた服を見られてしまう。)
自分が連れ込まれた個室も、服を投げ込まれた個室も鍵は掛かっていないことを幸江は思い返していた。しかし、最早どうすることも出来ない。目を閉じてただじっと松浪の陰茎を咥えたままでいるしかなかった。幸江の口の中で、松浪のペニスは更に勢いを失って縮こまっているようだった。
不安な面持ちでじっと待つ中、ごそごそという物音の後、放尿を始めたらしい水音がしてきた。
(どうか、このまま行ってしまいますように。)
幸江には、はなから男子トイレにやってきた誰かに今の窮状を救って貰うなどということは考えていなかった。松浪にこうした状況にさせられていることが発覚してしまうことは即ち自分の身の破滅を意味しているからだった。
やがて、ジャーっと洗浄水の流れる音がして、男の(ふうっ)という溜息を洩らす声と共に、ドアが再び開く音がして、トイレの中に静寂が戻った。
幸江は自分の頭を抑えている松浪の手の力が弱くなったことを感じて、さっと首を横に動かした。
「もう、許して。誰かがまた来てしまうわ。」
ペニスを吐き出したばかりの幸江の唇の端から涎が垂れるのを留めることも出来ないまま、幸江は押し殺したような声で松浪に懇願した。
松浪は幸江にフェラチオを強要しながらも直ぐに勃起出来ず、突然の闖入者に驚いてすっかり萎えてしまったペニスを見て、それ以上続けるのを諦めた。しかし、このままでは気が収まらないのだった。
「いいか、サチっ。俺に逆らったらどんな目に遭うか今思い知らせてやる。」
そう言うと、再び幸江の髪を鷲掴みにして、幸江の頭を直ぐ横の便器の中に突っ込ませようとする。
「い、嫌っ。何するの、止めて。」
しかし、両手を後頭部に括りつけられた不自由な身体では抵抗する力も出せない。便器の中に頬をくっつかせるようにして押し込まれてしまう。
「いいか、頭を冷やしてようく考えることだ。俺の命令に逆らえばどんなことになるのかなっ。」
そう言い放つと、松浪は水栓のコックを捻った。ジョバーッという音と共に勢いよく奔流が幸江の頭を直撃する。
(ううっ、ゴホゴホっ。く、苦しいっ。)
幸江は水を飲み込んでしまわないように目を閉じて口をきっちり閉じて堪えているしかなかった。奔流はやがて止まり、便器の中から漸く頭を出すことを許された幸江だったが、ずぶ濡れになった髪や顎からいつまでも雫が滴り落ちていた。幸江は目にいっぱい涙を溜めていたが、それも判らないほど顔じゅうがずぶ濡れにされていた。
「どうだ、思い知ったか。じゃあ、暫くそこで反省していろ。」
そう言うと、松浪は幸江の両手を括りつけているストッキングの端を掴んで引っ張って水栓コックにしっかりと結わえ付けてしまった。幸江は便器の中に顔を向けたような格好で括りつけられてしまったのだった。
「ううう・・・、こ、こんな酷い事・・・。」
幸江は小声で呻くように呟いた。そんな幸江を無視するかのように松浪は個室のロックを掛ける。それから便器に脚を掛けて個室の壁をよじ登るようにして個室の外に出てしまう。松浪が出てしまってすぐ、幸江の服が上から落ちてくるのを背中に感じた。松浪が隣の個室から拾い上げて投げて寄越したようだった。そして幸江は全裸で便器に括りつけられたまま放置されたのだった。
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