41ナプキン調べ

妄想小説

キャバ嬢 サチ



 十一

 「生理になって、何日目だ。」
 「そんな事、言えません。」
 目の前で嫌らしそうな視線を送ってくる正雄を、マリコは鋭い目で睨み返す。が、両手の自由を奪われて、縄で本棚の端の柱に括り付けられている身では睨むこと以外には何も出来ない。マリコは口惜しさに毅然としていたいのだが、今にもされようとしている辱めに、どうしても卑屈になってうなだれてしまうのだ。
 「さ、そろそろ見せて貰おうか。どれだけ今日は汚したのかをね。」
 そう言うと正雄は、無抵抗で立たされているマリコのショーツを両腰骨のところで摘み上げる。すっかり捲り上げられてベルトにたくしこまれたスカートはその下に薄手の白いビキニショーツを露わにしてしまっている。その下着の頂点であるクロッチの部分は盛り上がって、下にナプキンを当てていることがはっきり判る。
 「や、やめてぇ。」
 「ふふふ。さあ、ご開帳だ。」
 「やめてぇ。お願い、脱がさないで。」
 マリコの哀願も無視して、正雄はするするとマリコのショーツを下ろしてゆく。薄い陰毛がまず現れ、更にショーツの内側に貼り付けられたナプキンの端の部分が見えてきた。
 「さ、よく見せてごらん。」
 「いやあっ・・・、見ないでえっ。」
 泣き叫ぶマリコを無視して、当てていたナプキンの内側が良く見えるように、正雄はマリコのショーツを前に引っ張る。真っ白なナプキンの内張りの真中に赤黒い沁みがべっとりとついている。微かだが、動物的な淫靡な匂いが立ち込める。正雄は更にショーツを引き下げると、裏返すようにしてマリコの腿のところで止める。
 「は、恥ずかしい・・・。」
 マリコはうなだれて、目にはいっぱい涙を溜めている。
 正雄は尻のポケットからデジカメを取り出す。
 「さあ、証拠の記念写真を撮るよ。いい顔してね。」
 写真を撮ると言われて、はっとなって顔を上げたマリコにストロボの鋭い閃光が瞬いた。
 「いや、いやだってば・・・。写真なんか撮らないでえ・・・。」
 泣きじゃくるマリコを尻目に、ショーツを露わにした姿態から、顔のアップ、汚したナプキンの内側まで、執拗に正雄は撮り巻くっていく。
 「いいか。この写真を公表されたくなかったら、おまえは俺の奴隷になるんだ。俺様にいつも奉仕をするんだ。さ、奴隷になった証として、このびんびんになったペニスを口に咥えろ。」
 正雄はズボンのチャックを下ろして、既に硬く膨れ上がった自分の一物を取り出し、目の前のマリコに対峙する。マリコは正雄の股間のものをちらっと見て、きゃっと声を上げて顔を背ける。にやっとした正雄は縛られて抵抗できないマリコの頭を髪で掴んで、自分の股間のほうへ強引に引き寄せる。
 「い、嫌っ。絶対、嫌です・・・。」
 必死で抵抗するマリコだったが、正雄の次の言葉がマリコを屈服させた。
 「そんなに嫌がっているのなら、罰として、お前が汚した血のついたナプキンをお前の口の中に捻じ込んでやるぞ。」
 本当にやりかねないとマリコは上目遣いに正雄のほうを覗き上げてみて遂に観念した。
 「待って。そんな酷いこと・・・、しないで。」
 涙目になりながら、マリコは唇を正雄の怒張したペニスの先につけた。甘酸っぱい匂いがマリコの鼻を突く。しかし、自分から唇を開くことは出来ないでいた。正雄は両手でマリコの髪を掴んだまま、ぐいと引き寄せ、自分のペニスをマリコの唇の間に割り入れさせた。

42フェラ強要

 「あうう・・・、うぐうぐっ・・。」
 「そりゃ、しゃぶるんだ。思いっきり、吸い上げて、ちゅぱちゅぱしゃぶれ。・・・、そうだ、もっと。もっときつく口をすぼめてっ。ああ、ああ、ああ、いい。ああ、いいっ。いくぞ、いってしまうぞ。ちゃんと呑み込めよ。ううっ、ああっ。ああっ・・・。」

 その朝、正雄はペニスの先がきりきり鈍く疼くので目覚めてしまった。
 (ああ、また夢想でイっちゃったんだ。)
 正雄は前の晩は眠る前に下半身素っ裸になって、タオルを褌のように巻いて寝ていた。このところ、オナニーをした後すぐに寝ると、夢の中でも夢想で射精してしまうことが多かった。下着を汚してしまうので、タオルで代用しているのだ。そのタオルを手探りで触ってみると、ペニスの先が当たっていた部分がすでに乾いて強張っている。つうんと栗の花の香りがする。マリコが汚したナプキンを手に入れてからもう何度目の射精をしただろうか。頭の中はマリコのことでいっぱいだった。ペニスがきりきり痛むのは明らかにオナニーのし過ぎだと判っていた。それでもマリコのナプキンのことを思い返すと、直にズボンの下は膨らんできてしまうのだった。

 次の日、正雄は久々にすっきりした気分で出社した。いつもの通り、真直ぐ事務所に向わないで、工場側にある二階の女子更衣室への階段の脇を通り抜けるが、ミニスカートの女性が昇降するのに遭遇しなくても残念に思わない。(もっといいものを俺が手にしているんだ。)そんな気持ちが正雄の心を軽くはずませるのだ。

 午前中、正雄はマリコの立ち振る舞いが気になって仕方なく、しょっちゅう横目を使ってはマリコのほうを盗み見ていた。その日もまだ生理で、ショーツの下にはナプキンを当てているのは間違いなかった。その汚れたものの実物を見ているだけに、想像されるものは生々しかった。マリコの何気ない歩き方さえ、股間のものが邪魔して心持ち、がに股気味になっているようにさえ思われて仕方なかった。

 「な、何か、臭いませんか。いつもと違う・・・。」
 とうとう正雄は、何度も、何度も心の中で繰り返し練習し続けてきたその言葉をマリコにぶつけた。二人居る女性のうちのもう一人の庶務嬢、奈美が席を外しているいいチャンスだった。
 「えっ、・・・。」
 思わぬ正雄の言葉にマリコがびくっと反応したのを正雄は見逃さなかった。
 「いやさ、・・・な、な、なんかさ、い、い、いつもと違うっていうか・・・。」
 ちらっとだけ正雄のほうを見てから、態と視線を合わさないようにして何気なくマリコは立ち上がる。
 「さあ、・・・。」
 マリコも答えたんだか、無視したんだかどちらとも取れるような声をそっと発しただけですぐ後ろの窓に向かい、閉めきってあった窓を大きく開く。暑いのでそうしたかのように、いつも制服のベストのポケットに突っ込んでいるプチタオルを取って、顔を仰ぎながら、すうっと事務所から出ていった。
 正雄も何か書類を取りに行く用を思い出したかのように、すっと席を立つと、マリコが出ていった事務所の出入り口の扉の小窓を確認する。その中に、女子トイレへ消えてゆくマリコの姿を認めた。
 正雄は腕時計の秒針と分針の位置を確認する。
 (午前中だから、まだ化粧直しには早い筈だな。)
 席に戻った正雄はマリコが出ていった時刻を小さくノートにメモしてから、目を瞑ってマリコの姿を想像する。
 (誰もいないのを見計らって、抽斗ロッカーの自分のところを探って、ナプキンを一包み取り出す。そしてそっと個室の戸を押し開ける。鍵をロックしてから、スカートの裾を持ち上げストッキングとショーツを膝上まで降ろす。ショーツに絡まって貼りついているナプキンが見える。おそらくはまだそれほどは汚れていないのだろう。しかし、正雄が放った言葉がぐさっときている筈だから、念の為に替えておこうとするだろう。ショーツから使用済みのナプキンを外す。くるくるっと丸めて汚物入れに落とす。新しいナプキンの包装を剥しショーツのクロッチに当てる。それをストッキングごと腰まで引上げ、スカートを降ろして裾を直す。さ、出来上がりだ。扉を開けて、何事も無かったかのようにトイレを出てくる。あれ、まだだ。ついでにおしっこもしてるのかな。だとするともう少し時間が掛かるか。)
 そんなことを考えながら時間を計っていた正雄の耳に事務所の外でドアの軋む音がする。マリコだった。何も気づかぬ顔をしながらマリコが事務所に入ってくるのを俯きながら横目で確認する。マリコがすっと席に着いた時、微かな柑橘系のコロンの香りがしたような気がした。
 (そうか、コロンをあてて、臭いを誤魔化していたんだな。)
 正雄は今度は子供の悪さを発見した母親の目のような顔をして、じろっとマリコのほうを睨んでみせる。が、何も知らないマリコは、正雄の視線にも気づかず、鼻歌交じりで、パソコンのメールを開き始めていた。

 正雄は自分が仕掛けた罠にまんまとマリコが嵌るのを見届けて、自信を持ち始めていた。マリコは確実に生理の臭いにコンプレックスを持っていると確信した。

 正雄は続いてある策略を練っていた。夢の中では散々にマリコを辱め弄んでいた正雄だったが、現実の世界ではそんな事が叶う筈もなかった。しかし、正雄は何とかマリコを自分のものにしたかった。せめて、陰ながらでも自分の意のままに操りたいと考えたのだ。正雄は匿名の手紙でマリコを脅してみることを思いついた。自分が「何か臭う」と言っただけで敏感に反応するマリコをみつけたのがきっかけだ。しかし急いてはならないと正雄は考えた。何よりも拙いのは自分の仕業とばれてしまうことだ。正雄は何度も何度も計画を思案した。

 正雄はマリコに対して攻め込む前にじっくり準備をすることにした。中でも重要だったのはマリコの生理の状態を見張ること。そしてその証拠の品をしっかりと手にすることだった。その為に以降の数ヶ月の間、誰も居なくなった事務所のある建屋の女子トイレに忍び込んでは、汚物入れの中身とマリコの私物を入れたトイレ内の抽斗をチェックし、未使用のナプキンの減り具合を数え、使われた使用済ナプキンを逐一回収したのだった。何時もいつも夜遅くまで残ってやっているとさすがにばれる心配があるので、早朝誰もがまだ出社していない時間帯にいち早く出社して事務所の鍵を開け、そのついでに女子トイレに忍び込むというのを交代に繰り返した。その結果、マリコの生理日を完全に把握すると共に、マリコが使用したナプキンを数十個に渡って手に入れたのだった。

 正雄はじっくり攻めていくことにした。最初に正雄は女子トイレのロッカーから盗んできたマリコの真新しい新品のナプキンのパックをデジカメで撮影し、一枚の紙にプリントアウトした。何かコメントを付けようとして敢えて止めることにした。一枚のA4の紙の半分弱にナプキンのパックが写された画像が載っているだけの紙が出来た。ぱっと観ると何が写っているのかすぐには判らない。しかし特徴あるデザインは使っているものならすぐに識別出来る筈だった。それを丁寧に四つ折に畳むと、社内郵便の封筒に入れて封をする。宛先は「特許課 篠原様」と苗字だけにして、差出人は「第二庶務課風紀係」とした。正雄たちの居る会社に第二庶務課なるものは存在しないし、風紀係というのも架空のものだ。それを深夜の残業時間帯に作ると、それを持って、正雄たちの居る建屋から少し離れた事務本館へ向った。事務本館には色んな部署が入っていて、正雄たちの居る建屋より人数が圧倒的に多い。その中でも一階の総務はそれほど人が多くなく、色んな人が色んな用で出入りするので用がなく行っても怪しまれにくいのだ。今の特許課に配転される前に総務課に居た正雄はその辺の事情をよく承知していた。

 その日マリコが特許課宛の社内郵便の束を持って郵便物を配って廻っているのを、正雄は自分の席に座ったまま、こっそり横目で窺がっていた。そして、マリコの目が自分宛の封筒の上に止まった時、軽やかに動いていたマリコの足が一瞬止まったのを正雄は見逃さなかった。マリコは不審そうに眉をちょっと吊上げたが、すぐに再び何も無かったかのように残りの封筒を配り続ける。
 最後に自分宛の封筒だけを持って席に戻り、何気なく封を開いて中に入っている紙を一枚取り出したマリコの表情が、狐につままれたようなポカンとした顔から次第に曇って青褪めていくのを、正雄は覗きこんでいるとばれないように気をつけながら注視していた。正雄には、マリコがつとめて平静を保っている振りをしているのが手に取るように判った。軽くコホンと空咳をしてから、封筒に紙を戻し、さり気なく手に持って黙って事務所を出ていくのを正雄は見てとると、自分も後を付けていると悟られない程度の距離を置いてついていった。正雄が事務所の扉を開いて廊下へ出ようとするのと、目の前でマリコが女子トイレに入っていくのがほぼ同時だった。正雄は女子トイレの前の廊下に立ち止まってじっと耳を澄ます。キーッと軽い音で個室の扉が開いたのが感じられ、その後バタンという音で個室の扉が閉められ、ガチャッと中からロックされる音まで正雄は感じ取っていた。

 個室に入ったマリコは、便座の蓋だけを上げてスカートを穿いたまま便器に腰を下ろすと、おもむろに再度封筒の中の紙を引っ張りあげる。曝け出してはならないものを隠し見るかのように、封筒から半分だけを引き上げるが、そこに写っているものははっきり確認出来る。最初何が写っているのか全く意識しないで眺めた時と、それが何であるのかを気づいた今とでは、気持ちははっきり異なっている。個室のドアを開けて、すぐ傍にある私物用ロッカーの抽斗の奥から本物を持ってきてみるまでも無かった。ネット上を探し回り、通販で漸く手に居た外国製のその物は、見間違える筈もなかった。洩れ防止のギャザーのすぐ内側にある薄緑色のラインがそのデザインの特徴だった。問題は滅多に見ることの無い筈の特定デザインの生理用ナプキンの写真が、それを愛用している自分の元へ届けられたのかということだった。明らかに送り主は自分がこれを愛用していることを知っているという証に他ならない。しかも封筒の送り主は聞いたこともない部署なのだった。
 (第二庶務課、風紀係か・・・。)
 マリコは何とはなしに、「風紀」という言葉遣いに何某かの悪意を感じてしまうのだった。それは何かのことを懲らしめるぞという脅しのようにも取れるからだ。
 (こんな封筒を送りつけてきた者は、一体自分に何が言いたいのか。何を知っているというのだろうか・・・。)
 思案を巡らしても一向に何も思い浮かばない。根っからの楽天家のマリコは、単なる悪戯で、何かの偶然が重なっただけなのだと思うことにして、意を決するとすくっと便器から立ち上がり、女子トイレを出ると真っ直ぐに給湯室に据えられている大型シュレッダーに向かい、一気に封筒の中身を裁断してしまった。

01サチ

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