妄想小説
キャバ嬢 サチ
十四
その日、正雄はアダルトグッズの店に居た。マリコを陥れるのに使ったボイスチェンジャーや望遠カメラを仕入れるのに、電気街で有名なこの街までやってきて偶然見つけた店だ。マリコを拘束するのに使った手錠や首輪、鎖なども全部この店で仕入れたものだ。正雄は前回この店に来た時に見かけた気がしたあるものを捜していた。その時捜し求めていた拘束具とは違ったので、さほど気に留めなかったのだが、確かにそんな風なものを見たような気がしたのだ。そしてとうとうそれを性感を高めるローションやゼリーの並んだ奥に見つけたのだ。
(これだ・・・。)
それは、半透明でゴムのような柔らかさを持ったプラスチックのようなもので出来ていた。丸いビーズのような玉が鎖のように数珠繋ぎ状に繋がっている。先のほうは少し小さめで、もう片方の端に向って、徐々に珠の大きさは大きくなっている。そして最後の端は急に大きくなってJの字型に反り返っている。反り返った部分は傘の柄のような取っ手になっている。が、ただ握る為だけのものではない。曲がったその先はあるモノを模した形になっているのだ。それは怒張した陰茎の形に他ならなかった。
正雄が手にした箱には「アナルビーズ」と書いてあった。どのように使うのかは、説明書を見るまでもなかった。これを使えば、陰唇と菊座の両方を一気に責めることが出来るのだ。正雄はそれを装着された相手の表情を思い浮かべてみる。思わず出た笑みに唇が醜く歪んでいることにも気づいていなかった。
正雄は張型と一体になったアナルビーズのほかに、ビーズの部分だけで取り出し用の紐のついたものもあるのに気づいた。
(こっちのほうが調教の手始めにはいいかな。これも買ってゆこう。)
二種類のアナルビーズを手にすると、今度はそれを装着させた後、外すことを出来なくさせる錠前の付いた貞操帯を探しにゆく。こちらのほうは何処に陳列されていたかはっきり憶えていた。
正雄がアダルトグッズへこれを探しにくるのを思いついたのは、マリコを陥れて、自らはとても正視出来ないような恥ずかしい映像を首尾よく手に入れた、その夜のことだ。正雄はその画像を何度も繰り返し厭きることなく観返していた。その映像に、募り来る尿意に堪えながらも我慢の限界にお悶え苦しむ顔を観て、びんびんに屹立したペニスから既に何度も放出させ、とうとう最後まで行かずに観終えることは出来ないほどだった。
その映像を撮影する際には、正雄は正体を知られない為にマリコの背後のキャビネットの裏に隠れていた。だからその破廉恥な姿をまともに観るのは、ビデオで再生されたものが初めてだったのだ。表情をはっきり撮る為に目隠しは外さねばならなかった。そうなるとマリコの真正面で観ているという訳にはゆかなかったのだ。しかし、もしそうしていたなら、マリコの前でペニスから暴発させてしまっていたに違いないと思った。
もうこれ以上出ないというほど、繰り返し再生させてその度に大量のスペルマを放出させた後、ぐったりしたペニスを労わりながら正雄は次にマリコを責めるとしたらどんな道具がいいか思案を巡らしたのだった。そして思いついたのが、アダルトグッズの店を見回っていた際にふと目に留めたアナルグッズだったのだ。
(これを送りつけて、装着するよう命じたらどんな顔をするだろうか。)
正雄はマリコが困惑して打ち震えるそんな姿を想像すると、また股間の一物が徐々に膨らみを増してくるのを感じてしまうのだった。
マリコを鎖で拘束し、失禁するという粗相を強いてそれを撮影した後、すぐにやってきた週末休みの中で、存分にその映像を楽しんだ後、アダルトグッズの店へ出掛けて新たな責めの道具を仕入れてそれを鞄の奥に忍ばせて出勤した週明けの月曜朝、正雄は思わず鼻歌でも唄ってしまいそうになるほど有頂天で、平静を保つのに努力しなければならないほどだった。いつもより少し遅れた時間にやってきたマリコは、事情を知っている正雄でなくても何かあったのではと思わせずにはいられないほど憔悴してやつれた表情をしていた。正雄がわざと威勢良く「おっはよう。」と声を掛けても、「あっ」と声にもならないような応答で、目を伏せて挨拶めいた応答を返しただけだった。
その日の午前中もずっと、マリコは俯き加減で机に向ったままで居た。仕事に打ち込んでいるように見えなくも無いが、時々手が止まったままになり、視線はずっと虚ろなままなのは、すぐ隣にいる正雄にはしっかりと見えていた。時折なる電話や事務所の出入り口の扉の音がする度に、びくっと肩を震わせるのを見て見ぬ振りをしながら正雄はずっと観察を続けていた。
(あの仕打ちは相当こたえたのだな。)
あまりにもうな垂れているマリコの様子をすぐ傍で見ていて、正雄は次第にマリコが哀れに思えてきた。
(そうだ。こんな時は誰かに優しく慰めて貰いたいんじゃないかな。相談に乗ってくれる頼もしい男性を待っているのではないだろうか・・・。も、もしかすると・・・、これがきっかけで付き合いだして、果ては結婚ということもあるんじゃないだろうか。)
一旦、そう思い出すと、正雄は居てもたってもいられなくなってきた。
「あっ、どうしよう。」
突然、正雄の背後でマリコが素っ頓狂な声で呟いたのを正雄は聞き逃さなかった。こっそりと振り返ってみると、マリコがコピー機から出てきた大量の枚数の紙面をみて、顔を顰めている。手にした紙束を横にしたり縦にしたりしていることで、プリント用紙の縦横を間違えたのだなと咄嗟に見抜いた。
ふうと大きな溜息を吐くと、マリコは手にした紙束を胸に当てるように抱えて持つと、そのまま事務所を出てゆく。失敗したコピーをシュレッダーに掛けに行くのだなと見当をつけた正雄は、今がチャンスとそっとマリコの後を追って、シュレッダー機の置いてある給湯室へ急いだ。
「わっ、吃驚した。ち、近いです。」
正雄が背後から近づいて、自分ではかなりそっと「篠原さん。」と声を掛けたつもりだったが、マリコが正雄が驚くほど大きな声を挙げて身を仰け反らせていた。
「ご、ご、ご、ごめん・・・。び、び、吃驚させちゃった?」
話しかけるのに、マリコのほうに首を延ばすようにして顔を近づけたのを明らかにマリコは嫌がっているようだったが、正雄は気づいていない。
「な、何ですか。いきなりっ・・・。」
マリコにも正雄の吃りが移りかけていた。
「い、いやさ・・・。あ、あのさ・・・。な、何だか、困ったような顔をずっとしてたからさ・・・。あ、あの、あのさ、何か、そ、そ、そ、相談、そ、相談にでも乗れないかなって・・・ってさ。」
最後のほうは頭を掻きながらやっと言った正雄だった。
「貴方に、相談することなんか、何もありません。どうもしてませんから。そんな顔近づけて話、しないでください。」
しつこいセールスマンを断るみたいに、きっぱり言ったマリコだった。
「で、で、でもさ。あ、あ、朝から、何か、ち、調子悪そうだよ。」
「だから何でもないって言ってるでしょ。何なんですか、相談に乗るって。貴方に何が出来るって言うんですか。自分の事だって、まともに出来ていないのに・・・。」
(じ、自分の事も・・・って。)
正雄はマリコのきつい言い方に目を丸くして呆然と立ち尽くす。その正雄の様子を見てマリコも口が滑ったと気づいた。
「ごめんなさい。言い過ぎました。ちょっと、ちょととムシャクシャすることがあって。気が立っていたんです。そんなつもりじゃありませんから。」
言い方は丁寧だったが、正雄には取り付く島もなかった。
「あの、仕事、忙しいんでごめんなさい。」
ぴしゃっとそう言い切って、踵を返すと、手にしていたコピーもシュレッダーに掛けないままで事務所のほうへ一人戻っていってしまった。後に残された正雄は、自分が頼りにされていない現実を思い知って、肩を落としていた。
(ち、畜生・・・。そんなに俺のこと、見下してたのか・・・。ようし。そ、そんなら、俺のこと、頼る気持ちになるように、もっと酷い目に遭わせてやるだけだ。)
最後は自分のやるせなさをマリコに対する憤りに転化させて、密かに復讐心を燃やし始めるのだった。
正雄は地方の工場へ移転して誰も居なくなってしまって殺風景にガランとした空き事務所に目を凝らす。常夜灯だけの暗い室内に四角い柱だけがぼおっと白く浮かんで見える。が、その中に白い脚が投げ出されているのを目聡く見つけ出す。正雄が手にした携帯ランプの光を当てると、闇の中にその脚がくっきりと浮かびあがった。短いスカートから投げ出された脚の奥には、本人は気づいていないのか、真白の下着が三角形に覗いてしまっている。スカートの奥をたっぷり愉しんだ後、光のビームを少しだけ上へあげると、女の目隠しした顔が闇に浮かぶ。向こうも光に気づいたのか、はっとして顔を背ける。
(どうやら、言いつけどおりにしているようだな。)
女は脚を折るようにして床に座り込んでいて、両手は背中の後ろに回している。正雄はしかし、女が本当に後ろ手に手錠を嵌めているか確かめるまでは、何時でも逃げれるように構えながら一歩ずつゆっくり近づいてゆく。少し横に廻りこむようにして後ろ手の様子を確認出来る位置に来てから、携帯ランプのビームを女の背後の手首に当てる。銀色の鉄の輪がきらっと鈍く光る。その手錠は柱をぐるっと巻いている鎖と南京錠で繋いである。女は文字通り柱に繋がれているのだ。
正雄は女の下着が覗く真正面に再び戻り、ゆっくりと女に近づいていった。
「誰っ。貴方、誰なの。」
女は気配を感じて、身を竦める。しかし、背中で両手を繋がれた状態では、所詮何も抵抗出来ないのだ。
「フフフ・・・。」
正雄は声にならないように、しかし相手には威圧を与えるように鼻声を出す。それから一歩踏み込んで、女の投げ出された脚の間に自分の足先を割り入れる。
「きゃっ、嫌っ。」
女は、脚を広げさせられるのを拒むように折り曲げた脚を交差させようとするが、それよりいち早く、正雄は腿の深くまで足を割りいれてしまう。女は折った脚を引き寄せるので、スカートが更に大きく捲れ上がってしまったのに気づいていない。最早下着は丸見え状態になっている。
そのまま正雄はそこにしゃがみこんで露わになっているその下穿きを左右の腰骨のと所でがっしり掴むと一気に引き下げた。
「あ、嫌よ・・・・。」
しかし、見えない上に両手の自由を奪われていては、為す術もなくショーツはあっと言う間に剥ぎ取られてしまった。
股間の草叢が恥ずかしそうに揺れる。女は唇を噛んで恥ずかしさに耐えている。正雄は女が抵抗出来ないでいることを確認してからは俄然動きがてきぱきと早くなった。腰にぶら下げていた縄の束を取ると、女の膝のところにその端を括りつける。素早く立ち上がると女を括りつけている柱の後ろに廻りこむ。柱の天井部分には空調用の配管が通っているので、その管の上に縄を通すと更に一周して女のもう一方の膝にも縄を掛け同じ様に柱の裏側の配管に縄を通す。そうしておいて、それぞれの縄の端を力いっぱい引き下ろしたのだ。女は膝の部分で後ろ上方に引かれるので、大きく股を割ったM字の形で脚を上げざるを得なくなる。ちょうど赤ん坊におしっこをさせる時の格好に無理やりされてしまったのだ。しかも大きく股を広げたまま上に引っ張られているので、陰唇を丸見えにさせているだけでなく、尻の穴までが露わになってしまっていた。正雄は縄を固定させると、女の真正面に立ち、用意してきた張型付きのアナルビーズにたっぷりとローションを塗りたくる。
女は犯されることを予感しているようだった。しかし次の瞬間、女は予想外の場所に異物を感じることになるのだ。
「きゃああああ・・・。」
尻の穴に何やら突然突き立てられた物の気持ち悪さに、女は大声を挙げた。正雄がアナルビーズの先を露わになった女の菊座に捻じ込んだのだ。
「やめてえええ。」
女の挙げる悲鳴にも構わず、ビーズを一つ、また一つと捻じ込んでいく。女は既に目隠しの下で涙をぼろぼろ溢していた。
充分にビーズが菊の座の中に埋まると、今度は取っ手のようにして持っていた張型部分を陰唇に向ける。たっぷり塗られたローションのお陰で、ぬるっと滑るようにそれは女の中心に埋め込まれてゆく。
「いやあああ・・・。」
女は身を捩るようにして、挿入されたものを何とか外そうとするのだが、正雄の手がそれをさせまいとしっかり添えられている。そしてポケットから縄とは別の細い紐を取り出すと張型部にしっかり結わえ付け、それからその紐を女の腰の周りに回し、最後に股間を通して褌のようにして結わえ付ける。それでもう正雄が手を放しても股間に埋め込まれたものがずり落ちることがなくなる。
「や、やめて。何なの。お願い、抜いて・・・。嫌よ、こんなの。お願い。外してっ。」
女は首を大きく振って、請願するが、正雄は冷たく見下ろしているだけだ。あらためて、じっくりと女の割れ目と菊の座に埋め込まれた卑猥な異物を眺め下す。
「それを嵌めたまま、朝まで過ごすんだ。これは罰なんだから。」
女に諭すように正雄は言い下す。その声にふと、女は目隠しをされたままの顔をあげた。
「そ、その声・・・。貴方、高木正雄ね。」
(し、しまった・・・。)
正雄は女から指摘されて初めて、ボイスチェンジャー越しでなくては出してはならない声を出してしまったことに気づいたのだ。ここまで首尾よく進んだことでいい気になって、つい油断してしまったことを悟ったのだが、後の祭りだった。
(に、逃げなくっちゃ・・・。)
慌てふためいて、その場を立ち去ろうとして、女をそのままの格好で放置していていいか迷ってしまう。
「高木正雄ね。絶対許さないわ。」
自分の名前を再び呼ばれたことで、正雄はパニックになった。
(とにかく逃げよう。)
女は放っておいたまま、踵を返して逃げることにした。何かが足元に絡んだ。それで足を取られて前につんのめる。ドスンという鈍い音がした気がした。
ふと気づくと正雄はベッドから転げ落ちている自分をやっと認識した。肩から落ちたのかずきんと鈍い痛みを感じている。
(あれ・・・。ゆ、ゆめ?夢だったのか・・・。)
背中に汗をびっしょりかいている。そして力強く握り締めていた手には、アナルビーズのペニスを模った取っ手が握られている。その掌にも、じとっと脂汗が浮かんでいたのだった。
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