rin5

美剣士、凛



その12


 弥太郎の前には稽古着はおろか、腰の兵児帯まで脱ぎとり全裸に
なった凛の姿があった。その白い両腕は背中で交差されている。
 「本当によろしいのでございますか。」
 弥太郎は凛に縄を掛けるにあたって、毎度のように確かめずには
居られない。
 「くどいぞ、弥太郎。縄を掛けるのだ。」
 「し、しかし・・・。縄を掛けないでも、鍛錬は出来るのではご
ざりまするまいか。」
 「弥太郎。お前は、まだこの鍛錬の意味が判っておらぬようだな。」
 「は、はあ・・・。」
 「私は今からお前とまぐわろうとしているわけではないぞ。、お
前の摩羅を使わせて貰っておるだけだ。」
 「はあ。」
 「よいか。私はこれから、敵に捕らえられ、卑怯にも尻の穴を責
められた時に動じなく為の鍛錬の修行をしようとしているのだ。私
は、尻の穴が私の弱点であることを先の戦いの時にようく理解した。
お前も気づいたであろう。尻を責められて、あろうことか、敵の玄
斎に屈してしまい、身体を癒して欲しいと願い出てしまったのだ。
それは、敵の軍門に下るにも等しい行為だ。二度とあってはならぬ
のだ。」
 「そ、それは・・・。そうでありまするが。」
 「私はお前に尻を責められている際に、お前とまぐわっていると
は思っておらぬぞ。敵に捕らえられ、敵に辱められていると自分を
言い聞かせている。その気持ちになる為にも、縛られ自由を奪われ
る必要があるのだ。自分からは何も出来ない状態の中で、敵に責め
られていることを思い、それでも武士としての矜持を保てる為の修
行としてなしておりのだ。さ、いいから私を縛るのだ。」
 「わ、わかりまして、ござりまする。」
 弥太郎は、凛の深い決意に改めて驚嘆しながらも、凛の手首に改
めて縄を巻いてゆく。
 (お前に責められているときに、お前とまぐわっているとは思っ
ていない・・・。)
 そんなことを思いながら、自分の摩羅を受け入れていたのかと思
うと、あらためて、自分も気持ちを改めねばと弥太郎も思うのだっ
た。凛を尻で犯すことを決して悦びと思ってはならない。気持ちよ
さに負けて、安易に果ててはならないのだ、そう弥太郎は自分に言
い聞かせた。
 弥太郎は、凛の両手を後ろ手に縛り上げると、余った縄尻を胸に
も回す。
 「次にはその青竹の両端に私の足首を括りつけ、脚を閉じれなく
するのだ。」
 凛は弥太郎に、座禅転がしや、狸縛りなど様々な戒めを試させて
いる。青竹による開脚縛りは、股間を大きく曝すことになり、より
羞恥心を煽る縛り方なのだった。
 「ご免つかまつりまする。」
 弥太郎は凛の前に廻り、一礼してから、凛の足首を取り上げ、大
きく割り開かせると青竹の端に固定する。
 凛が瞳を閉じて堪えているのは、弥太郎に恥部を見せるのが恥ず
かしい訳ではなく、今しも敵の手によって辱めを受けようとしてい
ると自分を思い込ませようとしているのだと弥太郎は初めて悟った。
 「ならば、青竹の真ん中を天井の梁を通した縄を使って吊り上げ
るのだ。」
 両脚が青竹ごと天井の梁から吊り上げられてしまうと、否が応で
も凛は恥部を曝して、されたい放題の格好になってしまうのだ。
 弥太郎は青竹の真ん中に縄の端を結わえ付けると、天井の梁にも
う一方の端を投げ上げ、落ちてきた端を床の間の柱に括りつけて、
凛が脚を下ろせなくする。
 縄を固定した弥太郎が、部屋の中央に居る凛のところへ戻ってき
たところだった。凛の両の眼が大きく見開かれ、弥太郎を凝視して
いる。いや、実際に凛が観ていたのは、弥太郎の背後であった。
 「弥太郎、油断するでない。」
 凛が弥太郎に声を掛ける。背後を振り向いた弥太郎に、二人の女
忍びが組み付いてこようとしていた。


続き


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