美剣士、凛
その7
一刻ほどが経過しようとしていた。道場の真ん中で地獄の痒みの
責めに耐えている凛のこめかみからは、脂汗が滴り落ち続けていた。
凛の心を支えていたのは、不覚にも敵の責め苦に耐え切れずに陥落
してしまったおのれを恥じる武士としての矜持だった。禅を組む時
の無我の境地に自分を追いやって、必死に耐えていた。
「弥太郎、そこに居るのか。」
漸く凛から声が掛った。
「はっ、ここに控えておりまする。」
すぐさま弥太郎は応える。もう正座した脚が痺れようとしていた。
「こちらに来るのだ。手桶に水を持ってきておろう。」
何でも見透かされているのを弥太郎は嫌というほど感じている。
凛の元へ手桶を抱えて走り寄る。凛から命じられる前に傍にしゃ
がみ込むと天狗の面に手を掛ける。
「ご免つかまつりまする。」
弥太郎が面を引くと、すぽんという音を立てて、天狗の鼻が抜け
る。鼻からはまだ汁が滴っている。しかし、その甘い香りから、弥
太郎はそれが先に塗りこめておいたずいきの汁だけではないことを
悟る。
「失礼を致しまする。」
そう言うと、弥太郎は手桶に手拭いを落とし、きつく絞ると、責
め苦に耐えた凛の菊の座にあてがって、そこを優しく拭うのだった。
「弥太郎、首と足首の縄だけ解くのだ。」
「は、只今。」
弥太郎は額を床にして伏せっていた凛の身体を起こすと足元に跪
いて、凛の縄をするすると解いてゆく。
「弥太郎、出してはおらぬな。」
「はっ、凛様。左様にて。」
「そうか、ならば褒美をやろう。そこに仰向けに横になるのだ。」
足首から縄を外した弥太郎は、凛に言われるまま傍に横たわる。
両手と胸に縄の戒めを受けたままの凛は、後ろ向きになって弥太郎
の身体を跨ぎ、腰を落として不自由な背中の手を弥太郎の褌に伸ば
す。横から手を入れて摩羅を掴みだす。凛の手に触れられただけで
弥太郎のモノは急に鎌首を擡げ始める。
凛は一旦立ち上がって向き直ると、そのまま脚を開いて身体を沈
めこむ。硬くなったばかりの弥太郎のモノは熱く滾るような凛の女
陰に吸い込まれていった。
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