桃8

妄想小説

超力戦隊 オーレンジャー 樹里の危機






 十七

 パラノイアの兵士を一人ひとり倒しながら進んでいたオーピンクこと丸尾桃は、いよいよ奇岩城が見える場所まで到達していた。山の頂きの近くにデクスターに率いられたパラノイアの親衛隊が居るのが分かった。そしてその一軍から少し離れた岩山の中腹に磔にされたオーレンジャー隊長、星野吾郎の姿があった。下半身はオーレンジャーの制服を剥ぎ取られ、力なく萎えた陰茎を晒している。その遥か上方には奇怪な姿の大きな鳥が獲物を捜して舞い飛んでいるのがみえる。
 「ああ、隊長っ。桃が今、助けに行きます。」
 桃は、隊長の居る中腹目掛けてどんどん岩山をよじ登っていく。隊長の哀れな晒し者にされた姿を見た桃は、逆上して冷静さを失っていた。それまでさんざん自分の行く手を阻止しようと現れていたパラノイアの兵士たちが隊長に近づくにつれ、誰も傍に寄って来なくなったことに気づいてもいなかった。
 隊長がすぐ目の前の場所までやってきた桃は、岩肌に鋼鉄の鎖と鉄輪の手枷で繋がれた隊長の両手に目をやる。
 「すぐ外してあげます。パワーブレスを装着した今なら、そんな鎖は簡単に引き千切れますから。」
 そう言うと隊長の手首に手を伸ばした桃だったが、それは空を掴んだに過ぎなかった。
 「あれっ・・・。」
 いつの間にか目の前に居た筈の隊長の姿は何処にもなかったのだ。

 「ふっふっふっ。引っ掛かったな、オーピンク。」
 「ど、どういう事?」
 突然背後から聞こえてきたデクスター総統の声に振り返ると、岩肌に括り付けられた隊長の姿がデクスターの背後に宙に浮かんで見えたのだ。
 「お前が見ていたのは特殊ホログラムで投射された幻影だったのだ。」
 「何ですって。そ、それじゃあ・・・。」
 「オーレッドはお前の手の届かないところに捕えているのだ。」
 「く、くそう・・・。デクスターっ。騙したのね。」
 「それより、このオーレッドの下半身をよく見るがいい。何が嵌っているのかな。」
 「何ですって?」
 言われて桃が隊長の裸にされた下半身をよくみると、露わにされた陰茎の根元に何やら銀色の輪っかのようなものが嵌められている。
 「分かるか。あれは電磁リングなのだ。このリモコンを操作すれば、幾らでも締め上げることが出来る。それどころか、このダイヤルを最大に廻しきれば、あのペニスをちょん切ってしまうことだって可能なのだ。」
 「な、何て事を・・・。」
 「ちょっと試してみるかな。それっ。」
 桃の眼の前でデクスターがリモコンのダイヤルをちょっと動かす。
 「あぎゃああああ。や、やめてくれぇ・・・。」
 宙に浮かんだホログラム映像の中で、隊長が顔を歪めながら苦しそうに呻く姿が映し出される。
 「や、止めなさい。デクスター。卑怯よっ。」
 「どうだ、オーピンク。オーレッドを助けたいか?」
 「お願い。やめてっ。隊長のリングを元に戻してっ。」
 「だったら降参するんだな、オーピンク。」
 「降参ですって?誰が・・・。」
 「じゃ、オーレッドのペニスはどうなってもいいんだな。それっ、もう一度っ。」
 「あぎゃああああ。い、痛いっ。ペニスがちぎれそうだ・・・。」
 「やめて。わ、わかったわ。降参するわ。だから、そのリングを弱めてっ。」
 桃はがっくり項垂れる。
 「オーピンク。まずはそのパワーブレスとやらを外して貰おうか。」
 「こ、これは・・・。これを外してしまったら・・・。」
 「どうする? オーピンク。」
 (パワーブレス無しでは勝ち目はないわ。でも、今は隊長を助けるしかないのだわ。)
 「わかった。パワーブレスを外すわ。」
 桃が腕に嵌めたパワーブレスを取り外すと、何時の間にか近くにやってきていたパラノイアの兵士が乱暴にそれを取り上げる。
 「そしたら兵士たちのパンチを受けるんだ。何も抵抗することは許さんぞ。両手はだらんと下げたままでいるんだ。さもないと、わかってるよな。」
 「くっ、卑怯ね・・・。さ、いいわ。幾らでも殴るがいいわ。」
 「いい覚悟だ。さ、兵士ども。やれっ。」
 パシーン。
 いきなり兵士の一人が桃の顔面に平手打ちを食わせる。生身の人間の身体に戻った桃には強烈な一撃だった。
 「ううっ・・・。」
 「もっとやってやれっ。」
 「はっ。総統さま。」
 パシーン。パシーン。パシーン。
 「今度は鳩尾を突いてやれっ。手で防ぐんじゃないぜ。やれっ。」
 ドスッ。
 「ううう・・・。」
 正拳突きをまともに喰らって、桃は思わず膝をついてしまう。
 「ふふふっ。バカな奴だ。オーイエローと同じ手でやられるとはな。」
 (オーイエローですって? それじゃあ、樹里も隊長を囮に使われて降参したっていうの・・・。もしかして、樹里が総統にかしずいていたのも、隊長が虜になっていたからだったの・・・? ああ、樹里っ。私、誤解していたのだわ。)
 「ふっふっふっ。取りあえず、そのくらいでいいだろう。もう手出しできないように両手を手枷で後ろ手に繋いでしまえ。そして首輪を嵌めて引っ張ってゆくんだ。」
 「うっ、いやっ。何するの。」
 兵士たちに必死で抵抗しようとする桃だったが、もはや戦うだけの力は残っていなかった。簡単に両手を背中で繋がれ、首輪を嵌められて鎖で牽かれてゆくのだった。

tbc
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