妄想小説
超力戦隊 オーレンジャー 樹里の危機
十五
兵士たちは拘束された樹里の両腕を捉えて、パラノイアの秘密基地の入り口ロビーへ引き立てて行く。そして、その場へ樹里一人を残すと、兵士たちは立ち去って姿を消してしまう。
残された樹里はどうしていいのか判らずにその場に立ち尽くす。するとそこへオーピンク、桃がいきなり現れたのだった。
「うう。むふふふ・・・。」
(駄目だわ。声にならない。)
必死で桃に向かって言葉を発しようとする樹里だったが、舌が痺れていて声にならない。
「樹里っ、そこに居たのね。もう騙されないわ。私は貴方を倒して、一人で隊長を助けに行くわ。」
「ぐふふふっ。ほへは、わははほほ。はへっ。ひへてっ。」
「何を言ってるの、樹里。言葉までパラノイア語になってしまったの。さあ、いくわよ。」
ファイティングポーズを取っている桃に何とか罠だと伝えたいのだが、全く通じないようだった。
いきなり桃の回し蹴りが樹里に向かってきた。慌てて横に飛びのいて辛うじてそれを交す樹里だった。しかし、両手を後ろ手に拘束されている為に重心のバランスがとりにくい。
左右、次々と出される正拳突きを後ずさりしながら避けて行く樹里だったが、とうとう洞窟の壁際まで追い詰められてしまう。
「わはっへ、ほほ。わははほほ・・・。」
「何を言ってるの。もう逃げさないわよ。それっ。」
桃が樹里の顔面に向けて正拳突きを出す。しかしそれはフェイクで、同時に足蹴りを掛けていた。それが樹里の下腹をもろに直撃する。その痛みに樹里は膝を折ってその場に崩れる。
「とどめよ。」
桃が両手を合わせて樹里の後頭部へ振り下ろした直前に、樹里も最後の力を振り絞って身体を回転させて一撃を避け、同時に自由な両脚で桃の首を後ろから挟み込む。
「くくくっ・・・。」
首を絞められ、桃も息が出来なくなる。
(あと一歩だわ。桃を気絶させてしまわねば・・・。)
しかし、息絶え絶えに苦しそうにしている桃の顔をみると、つい最後の力を篭めきれない。
突然、桃が首をがくっと曲げた。
(あっ、桃っ。大丈夫?)
慌てて腿の力を緩め、桃の身体を振り解いて寄り添おうとしていた樹里だったが、桃は気を失った振りをしただけだった。逆に桃から下腹部に二度目の強烈なキックを受け、もんどりうって倒れてしまう。その樹里に飛び付いて首からパワーブレスを引き千切った桃は勝ち誇ったようにパワーブレスを腕に嵌めて立上る。
「もうお終いよ、樹里。パワーブレスをした私には勝てるわけないわ。」
「あふふへほ・・・。はへふっ。」
桃の強烈な回し蹴りが樹里の顔面を襲い、一発で仕留められてしまう。
気を喪った樹里の手枷を掴むと、桃はその手枷を洞窟の岩場から伸びている鎖に繋いでしまう。
「貴方には私が隊長を助けに行っている間、そこでじっとしてて貰うわ。いいこと。」
そう言うと桃はたった一人で、隊長が繋がれているという奇岩城を目指してパラノイアの基地である洞窟を出ていったのだった。
隊長の姿を追い求めて森へ出た桃は、待ち構えていたかのようにパラノイアの兵士軍団に取り囲まれる。しかし、パワーブレスを身に着けて力を回復した桃はオーレンジャー本来の力を取り戻していた。襲いかかってくるパラノイアの兵士たちを次から次へと倒していく。兵士たちが行く手を阻もうとしている先にどうやら隊長は捕えられているらしかった。桃は兵士を一人一人倒しながら突き進んでゆくのだった。
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