妄想小説
超力戦隊 オーレンジャー 樹里の危機
十四
パラノイア帝国の基地を飛び出して森に逃げ込んだ桃は、追っ手が近づいていない事を確認してからようやく息を吐く。手枷は後ろ手に嵌められたままだったが、手にしていた鍵の束の中から漸く手枷の鍵を見つけ出し、やっとのことで両手の自由を取り戻すことが出来た。
今の丸腰では到底パラノイアの兵士たちとは戦えないことを充分理解していた桃は、とにかくオーレンジャーの秘密基地へ戻って自分のパワーブレスを取り戻すことが先決だと考えた。
しかしオーレンジャーの秘密基地へ辿り着いた桃は、その惨状に途方に呉れざるを得なかった。ありとあらゆるものが破壊しつくされていたのだ。通信機器も滅茶苦茶に壊されて役に立たなかった。もちろん桃のパワーブレスもある筈もなかった。桃は再び自らパラノイアの基地へ忍び込んで、そこにある筈のパワーブレスを取り返し、その上で隊長を救いださねばならないと心に誓うのだった。
そんな桃の姿はオーレンジャーの基地周辺に既に張り巡らされていたパラノイア軍団の監視カメラに捉えられているとは桃も気づいていなかった。パラノイアの総統、デクスターは桃の動きを監視カメラのモニタで逐一把握していたのだ。そして桃がパワーブレスを取り返しに再びパラノイアの基地へ戻ってくる事も計算のうちだった。
パラノイアの基地へ徐々に近づいてくる桃の姿を確認した上で、デクスターは磔にしている樹里の元へ戻ってくる。
「デクスター。オーピンクはきっと私達を救い出しにここへやって来るわ。」
「そうだろうな。それが儂の狙いなのだ。再びオーピンクを捕えるためのな。」
「何ですって?」
「あのおっちょこちょいは最早、お前の事は仲間だと思っていないからな。」
「それっ、どういう意味よ?」
「あいつが来れば分かるさ。これが何だか分かるか?」
「あっ、それはオーピンク用のパワーブレスじゃないの。何時の間に・・・。」
「お前たちの秘密基地を滅茶苦茶に壊した時に奪い取ってきたのさ。これはあいつを捕まえる為の餌なのだ。」
「餌? どういう事?」
「こいつをまずお前の首に掛けてやる。」
デクスターは兵士に命じて、樹里を十字架から降ろさせ再び手枷で後ろ手に繋ぐ。そうしておいてから鎖に繋いだ桃のパワーブレスを樹里の首に掛けさせるのだった。後ろ手に両手を拘束された樹里にはそのパワーブレスに触れることも出来ない。
「さ、今度はオーイエローの頭を抑えて口を開けさせろ。」
デクスターの命令に従って兵士が二人掛かりで両手を拘束された樹里の頭と肩を抑えて跪かせ、鼻をつまんで息が出来なくさせて無理やり口を開かせる。
「お前には、もう一度喋れなくなって貰わなくてはならないからな。」
そうデクスターが言うと兵士の一人が口を開いた樹里の舌に注射針を刺しこむ。
「あううううっ。何をするの・・・。おまへたひ。あへっ。ことははひゃんとはへへなひ。」
「ふふふ。これでもうお前はオーピンクと意思疎通は出来ないのだ。お前にはオーピンクと闘って貰うことにする。」
「ほふいふほほ?」
(デクスターは何を企んでいるの?私と桃に何をさせようと言うの・・・?)
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