鉢合わせ

妄想小説

麗華に仕掛けられた罠



 十六

 それは洗ってまだ乾いていないショーツを手に女子トイレから出てきたばかりの麗華だった。
 「お、お前・・・。じゃ、邪魔だ。そこ、どけっ。」
 しかし麗華は朱美の方をキツと睨んだままその場に立ちはだかっている。
 「何だい、お前。アタイとタイマン張ろうってのかい?」
 「タイマンっていうのは貴方達スケバンが使う決闘のことよね。いいわよ。相手になってあげるわ。でも、人質もなければ助けてくれる手下もいない。手錠で拘束されている訳でもない私と戦って貴方、勝ち目があると思って?」
 麗華の言う通りであることは朱美にもすぐに理解出来た。素手同士の戦いでは男も負かしてしまう武道の使い手だということは朱美もよく知っていた。
 「ちっ・・・。」
 麗華の横を通り抜けることは無理だと判断した朱美はすぐに踵を返すと、今走ってきた廊下を急いで逆戻りする。外へ向かう扉のある階下のほうへ向けて階段を駆け下りていく朱美は一階まで降りたところで待ち構えていた三人に取り押さえられる。
 「何しやがんだ、てめえら。は、放せっ。」
 「おい、好男。こいつの腕を背中に捩じ上げるんだ。そしてあの二人を繋いだ場所までこいつも連行していくんだ。」
 「よっしゃあ。」
 朱美の片腕を背中で捩じ上げると、もう片方の手首は将太が捕える。さすがに喧嘩慣れしている朱美でも男三人を相手には手も足も出ないのだった。

 手錠でスタンドの観客席の鉄の柵に手錠で繋がれている悦子と吟子のところへ朱美も連行されると、二人の片手を繋いでいた手錠の片側を一旦外すと桟に通した格好でそれぞれの片側を朱美の両方の手首に掛けてしまい三人共が鉄の柵に繋がれた格好になる。
 「悦子と吟子のもう片方の手首もこの縄で鉄柵に縛り付けてしまうんだ。」
 「おう。合点だ、睦男。」
 睦男が好男と将太にそれぞれ渡した縄を受け取った二人は、悦子と吟子の自由な方の手首に縄を掛ける。悦子も吟子も何とか逃れようともがくが、所詮男たちの力に敵う筈もなかった。



reika

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