妄想小説
麗華に仕掛けられた罠
一
「ふふふ。やって来たわね、真行寺麗華。いい、悦子? 手筈どおり上手くやるのよ。」
「大丈夫よ、吟子。まだ、手錠は隠しておいてね。」
吟子と悦子が待ち構えるマンションの一室にたった一人で現れた真行寺麗華はそれがスケバンたちが仕掛けた罠だとは思いもしなかった。
ピン・ポーン。
「真行寺麗華ね、入って頂戴。」
麗華が指示されたマンションの一室のドアノブに手を掛けると、鍵は掛けてなくてそのまますうっと扉は開いた。
「貴方達なの、美桜の居場所を知っているっていうのは?」
麗華の前に現れたいかにもスケバン風の丈の長いセーラー服を着た二人を観て、見覚えがあるのを麗華は咄嗟に気づく。
「入ってっ。」
吟子が麗華に中に入るように促す。麗華がそれに応じてマンションの中へ入ると吟子は奥に麗華を導く。その間に悦子はマンションの扉を内側からロックするのだった。
「で、何処なの。美桜が居るのは?」
朝から学校には来て居らず、家に連絡をしたものの学校に向かったということしか判らず不安を感じて探し回っていた麗華に美桜の居場所を教えるから来るようにと知らない女の子からの電話で呼び出された麗華だった。
「美桜って奴なら、この電話の向こうに居るわよ。」
吟子は手にしていた携帯電話をスピーカーホンに切り替えると、麗華の方に向かってそれを翳す。
<いやーっ。止めてっ。>
突然、若い女の子の悲鳴が携帯のスピーカーから響いてくる。
(あれは間違いなく美桜の声だわ・・・。)
吟子が翳している携帯のスピーカーからは悲鳴に引き続いてピシーッと何かを強く叩くような音が響いて来る。
<や、やめてぇっ・・・。もう、赦してっ。>
「そ、その声は美桜じゃないの・・・? 美桜は何処に居るの? 貴方たち、知っているの?」
「ふふふ。よく声だけで分かったわね。さすがに自分の大事な後輩の声は聞き分けられるようね。」
「貴方達、美桜に何をしてるの? 美桜は何処っ?」
「あの今泉美桜ってヤツは、アンタの身代わりで今、折檻を受けているところさ。」
「折檻ですって・・・? 私の身代わりって・・・どういう事?」
「そうよ。アンタの代わりにヤキを入れられているの。早く助けに行ってやらないと、ボコボコにされちゃうわよ、ふふふ。」
「貴方たち、美桜が居る場所を知っているのね。だったらそこを教えてっ。」
「ふふふ、そうね。アンタがおとなしく私達の言うことを聞けばね。」
「貴方たちの言うことを聞くですって。どういう意味?」
「まずは、その制服を脱いでこっちの服に着替えて貰うわ。誰かにその制服を観られて、何処の学校の生徒か勘づかれちゃ困るからね。」
吟子は麗華に向かって投げつけるようにして黒い衣服を放って寄越す。
「こ、これって・・・?」
咄嗟に手を出して着衣を受け取った麗華は、それが極端に丈の短いニットのスェットと襞スカートであるのに気づく。
麗華が躊躇しているのを見て、吟子はスピーカーホンの音量を少し上げる。
<ヒィーッ。や、やめてぇっ・・・。>
携帯からは美桜の悲鳴が相変わらず送られてくる。
「わ、わかったわ。すぐ着替えるからそこへ案内してっ。」
麗華が観念しておとなしく言う通りに着替え始めるのを確認すると、麗華がそれまで着ていた制服を取り上げてロッカーに投げ込んでしまう。

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