痴漢まさぐり

妄想小説

監禁された女巡査



 第十一章 マサの欲情


 マサはこのところ欲求不満を募らせて苛々していた。若に言われて、真穂を首尾よく捕えてきてから、どうしても真穂の身体を思いっきり犯してみたかったのだ。いつか、若が思いを遂げたら、自分たちにあの女の身体を払い下げてくれるものと思っていた。その思いがあったから、女の身体にちょっかいをかけたいのをじっと我慢してきたのだった。だからこそ、若がそのままあの女を解放し、マサには身体にさえ触れさせないと言い放った時、言葉を失ったほどだった。マサの未練がましい目付きを見て、若も、真穂を解放させるのに連れ出す役を、マサには任さず、次郎と朱美だけにやらせたのだった。
 昨夜も、両手の自由を奪われて吊るされている真穂に近寄り、嫌がる真穂をさんざんに嬲った後、犯し捲る自分の姿を夢想しながらオナニーに耽ったが、想像力の乏しいマサには、夢想だけでは、充分に思いを果たすことが出来なかった。それだけに苛々が余計に募るのだった。
 マサが普段乗りなれない朝の満員通勤電車に乗り込んだのは、もしかしたら、真穂の姿を再び見出すことが出来るのではないかと思ったからだった。
 元々、暴力団の下っ端で、会長の息子の用心棒の手伝いぐらいしかやらせて貰っていないマサは、会長の息子が何か用を命じてない限りは暇だったのだ。それで、若が立てた計略のことを思い出し、自分も電車で獲物を探してみようなどと思い立ったのだった。
 マサには、元々痴漢行為なんかは興味なかった。そんなちまちましたことで性の衝動が満足されるとは到底思えなかった。しかし、若から聞かされた女警官を拉致して監禁するという話には激しい興奮を憶えた。嫌がる女、それも屈強な女警官を羽交い締めにして無理やり犯すというのを想像すると、嗜虐心を抑えきれないほどだった。
 マサが満員電車に乗ったのは、痴漢行為をする為ではなく、真穂をもう一度見つけ出して、無理やり言う事を聞かせるのが究極的な目的だった。しかし、だからといって、若のように用意周到な作戦があるわけではない。行き当たりばったりで、とにかく真穂にもう一度出遭うには、同じ路線の同じ時間帯に電車に乗ってみるしかないかと思っただけなのだった。

 その少女がマサの居る車両に乗ってきたのはほんの偶然だった。都心に向う快速電車が終点前の最後の駅で、ホームで待つ長蛇の列が一斉にマサの居る車両目掛けて雪崩れ込んで来た時に、偶々その少女は先頭に居て、後ろから乗り込んでくる乗客たちに押されて、成り行きでマサのほうへ押し付けられるように入ってきたのだった。マサのほうもそれを待ち構えていた訳ではなかった。が、満員電車に乗りなれていないマサは、雪崩れ込んでくる乗客たちに対し真正面を向いていたせいで、少女と身体を真正面から合わせる格好になってしまっていた。押されるのを防ごうとしたマサの手が少女の真正面の下腹部にすっぽり嵌ってしまったのだ。少女は学生鞄と、手提げ袋で両手が塞がっていた。普段はその二つを自分の身体の正面に抱えて自分を防御していたのだが、その日は押し合う乗客に手提げ袋が引っ掛かり、それを戻そうともがいているうちに両手が身体から離れてしまったのだ。ちょうどその時にマサの身体とまともに真正面でぶつかることになってしまった。少女は鞄と手提げ袋をもぎ取られないように、必死で掴んでいるのがやっとだった。しかしそれは自分の身体は全くの無防備になることを意味していた。電車が走り始めた時、しっかり掴んだ手提げ袋と学生鞄は最早自分の身体のほうへ引き戻すことも叶わない状態で周りの乗客たちの間に挟み込まれてしまっていた。

 最初、マサがふにゃっとした生温かくて柔らかい感触を手に感じた時には、何が起きているのか理解していなかった。しかし、その感触と目の前の少女の恥かしそうに俯いた顔の位置からして、自分の手が触れているのが少女の下腹部に違いないと気づくのにそうは時間は掛からなかった。マサはそれほど背が高いほうではない。発育ざかりの女子高生とそう上背は変わらなかった。だから、ちょっと手を伸ばすだけで、その先は下腹部から両足の付け根まで難なく届くことを知った。試しにマサは手の先を伸ばして少女の身体に垂直に立ててみる。周り中からぐいぐい押されているので、マサの手は、どんどん少女の脚の間に食い込んでいった。親指の甲の辺りが少女の股間に当たっているのが判る。少女が恥かしそうに俯いてじっと堪えているのは、触られている場所に気づいているからなのだとやっとマサは理解した。だが、少女には身体の向きを変えることも、手で防ぐことも出来なさそうだった。身体の向きを変えられないのはマサも同じだった。が、偶然とはいえ、絶好の場所にマサが今居ることで、無理に向きを変える必要はさらさら無いのだった。マサには少女の下腹部の上で、指を動かすことは出来た。股に食い込むように伸ばした手の先を丸めようとすると、少女のスカートの襞が絡みついてくるようだった。何度か伸ばしたり丸めたりを繰り返していると、スカートの裾を手繰り上げることに成功した。そこからマサの手が少女の裸の内股を捉えるのは訳はなかった。マサの手が少女の裸の肌に触れた時、少女が身体をびくっと奮わせたのにマサ自身も気づいていた。しかし、少女には何も出来ない様子だった。
 マサは初めて、痴漢とはこういうものなのかと知り始めていた。思っていた以上にスリルがあり、刺激的なのを知って驚いていた。そう思い始めると、もう身体が止まらなかった。じわりじわりとスカートの裾をたくし上げていき、ぴったりと閉じようとする少女の内股の間に割り込ませた手を次第に持ち上げていく。やがて、マサの手は少女の薄手の布切れに包まれた柔らかな肉の丘へ達してしまう。マサが親指を持ち上げると、少女の股間の割れ目をちょうど掴むような位置に片手を押し当てる格好になった。少女の股間を蔽う布切れは微かに湿り気を帯びているようだった。マサはその感触に思わず、股間の一物が充血して硬くなっていくのを感じていた。少女の方は俯いてはいるが、恥かしさに顔を真っ赤にしているのが時々吐く吐息で判る。それほど、マサと少女は顔を付き合わせるようにしてぴったりと身体を合わせているのだった。
 マサは少女の股座の中で、指を小刻みに動かして少女の反応を見る。親指は恥骨の上あたりに押し当て、人差し指と中指を揃えて、会陰部から陰唇部を揉み上げるように愛撫する。少女はもう抗うのを諦めて、身を任すように力を抜いてただじっと堪えていた。
 初めての痴漢の経験とその快感に酔いしれていたマサは、電車が次第に減速を始めていることにも、周りの様子にも一切の注意が払われていないことに気づいていなかった。マサが考えていたのは、今まさぐっている少女の股間を包む下穿きの中に指を差し入れようかどうしようかということだけだった。だから、その少女の股間に差し入れた手首を誰かが急にがっしり掴んだ時には、マサには何が起こったのか全く理解していなかったのだ。

 プッシューという音がすぐ傍でしたことで、電車が駅に到着し、ドアが開き始めたことに初めて気がついた。自分の手首は以前誰かにがっしり掴まれたままだった。そのまま押されるように電車の外に人の流れで出ていきながら、体勢を立て直そうとしたマサだったが、電車の外に出るや、いきなり腕を捩じ上げられた。
 「い、痛てててっ。誰だ。」
 腕を捩じ上げられながら、必死で肩口から振り向くと、物凄い形相の女がマサを睨みつけていた。
 「痴漢の現行犯で逮捕します。」
 そう女はマサに告げたのだった。

由紀敬礼


 マサは港南署の取調室で神妙に、次郎が身請けに来てくれるのを待っていた。取り調べは既に済んでいて、初犯だということと、被害者が事を荒立てたくないということから、「以後一切この様なことを致しません。」という誓約書を書かされて、釈放されることになったのだった。
 マサは駅のホームで大立ち回りの末、取り押さえられて手錠を掛けられ、後から駆けつけてきた数人の鉄道公安官等とともに、連行されたのだ。マサは女一人ぐらい、自分の腕で何とでも出来ると自信を持っていた。が、電車の中でマサの腕を捕えた内田由紀巡査は、真穂と合気道警察庁全国大会で、優勝を争ったこともある、屈指の腕前を持っていた。格闘の末、後ろ手に捩じ上げられて手錠を掛けられた時、マサは最初に真穂を拉致しようとした日に、同じように真穂にもあっという間に腕を取られて手錠を掛けられたことを思い出したのだった。
 反抗して大立ち回りをした為に、周りにいた行きすがりの乗客たちには格好の見世物になってしまった。しかも小男だが腕力のありそうなマサが、凛とした若い女性にあっと言う間に捻じ伏せられるのを見ると、観衆となった乗客たちはやんやの喝采を上げ、無様に捕えられたマサのほうは、いい笑い者だった。
 最初はふてぶてしく連行されたマサだったが、次第に警察官たちが増えてくるにつれ、これは逃げられないと大人しく反省している振りをすることにしていたのだ。

 迎えにやってきたのは、次郎ではなく、朱美のほうだった。相変わらず濃い化粧に娼婦のような短いミニスカートだ。それでも、明らかにヤクザ風の次郎を警察にやるよりは、女のほうが、警察での受けもいいだろうと、急遽身請け人を朱美に替えたようだった。
 「それじゃあ、今回のことを大いに反省して、二度とこんな真似はしないようにね。いいわね。」
 そう言って、マサと朱美を警察署の正面玄関まで送り出したのは、マサを捕らえた女巡査、内田由紀だった。
 マサは、首をすくめて神妙に俯いていたが、ちらちらと、内田由紀の制服の胸に付けられた名札の名前と、由紀の顔を頭の中に刻み込もうとしていた。
 (このままじゃあ、済まさないからな。)
 マサは密かに復讐の炎を心の底にたぎらせていたのだった。

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