床寝

妄想小説

監禁された女巡査



 第六章 放置


 真穂への折檻という形で行なわれた鞭打ちショーは、真穂が嫌々ながら詫びを入れさせられて、何とか男達も溜飲を下げ、お開きになったのは、もう深夜を過ぎていた。男達は散会して、三々五々に引揚げていった。真穂は衝立の奥で朱美に赤く腫れた尻の手当てを受けていた。と言ってもベビーオイルを塗りたくられただけで、痛みはさほど治まってはくれなかった。朱美は何時の間にか大人用の紙オムツを用意してきていた。尻の手当てを終えると、後ろ手錠で吊られたままの真穂の股を無理やり開かせ、紙オムツをあてがう。その上から真穂が穿いていたショーツを穿かせ、更にはタイトミニのスカートを着けさせた。タイトなミニは下に紙オムツを当てているので不恰好な皺を作っていたが、裸のままで置かれるよりずっとましではあった。
 真穂は紙オムツを当てられることで、このままで夜を明かすのだと悟った。着衣を直すと、次郎とマサが呼ばれ、二人に腕を取られて再び後ろ手錠のまま、ホール中央の柱に鎖で繋がれた。今度は首輪は天井からの鎖には繋がれなかったので、不自由な格好ではあったが、床に伏せることが出来た。一日中の仕打ちに疲れ果て、真穂は床に身体をくの字に折って横たわってしまう。
 真穂が連れ込まれた妙な洋館の屋敷は、彼等の仮の事務所のようになっているらしく、それぞれが別のところへ棲んでいるらしかった。最後に残った若、次郎、朱美、マサの四人が誰が残って見張りをするか相談しているのが、微かに横たわる真穂の耳に聞こえてきていた。
 若は、最初からそこに残るつもりは無いらしく、残りの三人も若に押し付ける立場にはないらしい。朱美は最初から残されるのを嫌がって、次郎と共に帰りたがっていたが、若はマサ一人を残すと、真穂にちょっかいをかけそうなので、それは譲れないという。
 結局、マサと次郎が二人で残って、マサは真穂を見張り、次郎はマサを見張るという役目になった。次郎の情婦である朱美は若が自分の車で送っていくというと、次郎と朱美はしぶしぶ了承するのだった。
 朱美を乗せた若の物らしいスポーツカーの派手なエンジン音がした後、それが遠のいていくと、たった三人しか残っていない洋館はしいんとしてしまう。マサは真穂に手が出せないのだと分かると、居ても仕方ないとばかりに二階のほうへ行ってしまった。二階にはベッドルームがあるらしかった。
 次郎のほうは、よほど若から強く言われているらしく、マサが夜這いをしかけてくるのではないかと真穂を見張れるようにと、ホールの隅にある長椅子のソファに毛布だけ持ってきて寝そべっていた。
 真穂は毛布ひとつ掛けて貰える訳ではなかったが、空調装置が効いているらしく、寒くはなかった。床も絨毯が敷き詰められているので、冷たくはなかった。疲労から睡魔が襲ってくるのだが、拉致監禁されている不安感とそれまでに受けた様々な仕打ちの屈辱感からの興奮で、うつうつとはしてもなかなか寝入ることもままならなかった。
 真穂は朦朧とする頭の中で、自分が何の為に拉致、監禁されたのかを考えていた。凌辱目的というのが一番有り得そうな答えだったが、真穂は辱めは受けたものの、身体を犯された訳ではなかった。若という青年は、男達に逆に真穂の身体に触れることを厳しく禁じているようだった。男達の前で放尿せざるを得ない場面に追い込まれたのだが、あからさまに裸にされた訳でもない。下半身を剥かれた時も、男達には衝立で見えないようにして、真穂が苦しむ様だけを見せている。実際、真穂の裸を見ているのは、若と女の朱美だけなのだ。
 若が男等にわざとお預けを食わせて、凌辱心を煽れるだけ煽り立ててから、男達の前に放つのではないかとも思われた。そんなことになったら、真穂の身体は骨の随まで男達に貪られてしまうことになるだろう。それが若の真意なのか計りかねた。
(一晩の見張りをどうするかだけで、あんなに揉めていたのだ。わざわざそんなことをするだろうか・・・。)
 疑問は次々に湧いてくる。若には、自分に屈辱を与えることだけが目的なのではないかと思われる節があると、真穂は何気なく感じていた。しかし、そんなことに何の意味があるのかが、真穂にはさっぱり理解出来ないのだった。

 真穂は自分が捕えられた時のことを再度反芻していた。落ち着いて冷静に考えてみることが出来るようになって初めて、真穂は計画的に拉致されたという考えに確信を抱くようになっていった。真穂にとって一番納得がいかなかったのは、マサを折角確保したのに、次郎が出現して少女を人質に取られてしまったことだ。その為に圧倒的優位に立っていたのに、降伏しなければならなくなったのだった。どう考えても、最初からあそこに潜んでいたとしか思えなかった。それに気づかなかった自分が迂闊だったと思っていた。しかしそこまで考えて、はたとあることに思い至ったのだった。少女は何故、あんな陵辱者の巣窟のような所へ逃げ込んでしまったのだろうか。真穂はその時、少女が自分からあのビルに入り込んだのを目撃したのを思いだした。
 (まさか、あの少女までぐるになっていたのでは・・・。)
 そう思い至ったところで、朱美と呼ばれていた次郎の情婦のような女を、何処かで見たような気がしていたのを思い出したのだった。少女の顔はまじまじと見た訳ではない。後を追っていた時はずっと後姿だったし、マサに陵辱されかかっていた時はマサの身体の陰になっていた。はっきり見たのは、次郎から喉元にナイフの刃を当てられて怯えている表情をしていたときだ。勿論、真穂は全神経を次郎、そしてマサの動きに集中させていたので、少女の顔はちらっと見ただけに過ぎない。
(少女はソトレートの長い黒髪で、清楚な雰囲気があった。が、それが女子高生の制服姿と、意識的に控えめにした化粧のせいだとしたら・・・。)
 濃い化粧の金髪に染めた髪の下の顔の輪郭と、おぼろげな少女の顔が限りなくダブってくるのだった。
 (自分は最初から、嵌められたのではないだろうか・・・。)
 そんな疑惑を抱きながら、いつしか真穂は眠り込んでしまっていた。

 「さあ、いつまでも寝てんじゃないよ。」
 真穂は乱暴に無防備な尻たぶをスカートの上からハイヒールの先で蹴られたショックで、はっとなって目を覚ました。元より目聡い性質の真穂ではあったが、前日の疲労がいつものようには真穂を目覚めさせてくれなかったのだ。不自由な格好を強いられていたため、肩がきりきりと痛んだ。ぼやけた眼で見上げると、すぐ近くに朱美が腕組みをしながら立っていた。相変わらず短い革のスカートなので、床に蹲った真穂のほうから見上げると、パンツが見えてしまっている。同性だからなのか、普段からなのか、それを恥ずかしいとも思っていない様子だった。それどころか、更に丸見えになってしまうのも構わず、真穂の顔をほぼ上辺りで、真穂の身体を跨ぐと、そのまま腰を屈めて、顔を近づける。
 「あんたのおしめを替えにきたのさ。どう、出した。」
 普通ならとても答えられないような質問だ。しかし、真穂はそのまま中を調べられてはと思い、小さくかぶりを振った。
 「そう、じゃそのままにしとくわ。どうせ、そのうちしたくなるでしょうから。それに今日はいろいろ忙しいので、今度替えてあげるのは、夕方になるかもしれないから。溢れかえるほど出しては駄目よ。大のほうも、遠慮なく出していいのよ。私はそんな趣味じゃないけど、若に言い付かっているから仕方ないのよ。あんたのシモの世話、ちゃんとするようにってね。」
 朱美は好意的なのか、敵意を持った嗜虐心からなのか、真穂にはどちらとも判断しかねるような微妙なウィンクを真穂に投げかけた。
 「若って、誰っ。」
 真穂は(若)という言葉を聞いて、思い出したように朱美に尋ねる。
 「あら、嫌ね。あんたの尻を見事に打ち叩いたあの人よ。」
 「いえ、そうではなくて、どういう人なの。何処の誰なの。」
 真穂は相手を怒らせないように慎重に言葉を選びながら尋ねた。朱美は、答えていいものか暫く思案しているようだった。
 「昨日の連中が属してる組の会長の御曹司って言えば、大体想像が付くでしょ。本当の名前は教えられないけど。」
 (属している組・・・、会長・・・、御曹司・・・。)
 真穂は朱美の言葉を心の中で復唱していた。
 「皆は若って呼んでいるけど、あんたは、若様っていうのよ。何せあんたは今は若の大事な玩具なんだから。ご主人様でもいいわ。・・・まあ、少なくとも、組の男達に払い下げられる迄はね。」
 朱美は生身の人間である真穂を、動物か物のように言うのだった。しかも朱美の最後の言葉は、間違いなく真穂の身体の陵辱を意味していた。
 「ねえ、あなた。昨日、痴漢に襲われた女子高生の振りをして、私を誘き出したでしょう。」
 一瞬、沈黙が流れた。その沈黙を破ったのは朱美のほうだった。
 「ちぇっ、やっぱりばれちゃったか。上手く騙せたとは思ったのだけどね。なかなか迫真の演技だったでしょ。」
 朱美は気づかれたことを残念には思っているようだったが、首尾よく真穂を騙して捕獲出来たのは自分の演技のおかげだと言わんばかりに得意満面だった。真穂は予想していた通りだったことに、改めて悔しさを憶えていた。少女を何とかして救わねばと思って、おとなしく手錠を掛けられたのだ。まともに戦っていれば、マサと次郎の二人だって逮捕出来たかもしれないと思ったが、最早後の祭りだった。
 「さてと、今日は忙しいので、あんたの世話をずっとやっている訳にはゆかないの。これから又ひとつ大芝居があるので。あんたには今日はここで一人待っていて貰うことになるわ。ここに水とパンだけは置いていくから、犬みたいに食べるといいわ。」
 真穂が見ると、床の上に盆に載せられたパンとスープ皿に入った水がある。文字通り、犬のように手を使わずに口だけで啜って飲み、パン喰い競争よろしく食べろということなのだった。
 「今日はあんたを独り残すことになるんで、この後、もう一回厳重に縛らせてもらうから、食べるのは今のうちだけよ。私達が準備してる間にさっさと食べておくのよ。」
 そう言い放つと、朱美は二階のほうへ向うドアのほうへ出ていってしまった。真穂は朱美が残していった盆を見る。こぶし大のフランスパンが3つ載っている。丸一日食べていないに等しいのでお腹は空いている。それよりもまず喉のほうがからからだった。水差しでもコップでもないもので呑ませるというのは、より一層屈辱感を味わわせたいというつもりなのだろう。しかし、水分と食物を補給して体力を維持しておかねば、逃げ出せるチャンスも逃してしまうかもしれないと思った。真穂は、朱美が言った通り、膝と肩で四つん這いになると、犬のように顔をスープ皿の中に突っ込んで水を啜った。

餌食わせ

 「ほう、牝犬が餌を食べているのか。」
 真穂が口だけでなんとかパンを咥えて呑み込もうとしているところを次郎とマサの二人が入ってきて、後ろから声を掛ける。
 「どれ、おあずけと、オチンチンを仕込んでやろうか。」
 マサのほうが又、真穂に屈辱を与えようとして近寄ってこようとする。
 「おい、マサ。余計なことをしてる暇はないぞ。急いで上で準備をするんだ。」
 「ちぇっ、分かったよ。おう、女ポリ公。こんどゆっくり可愛がってやるから待ってなよ。」
 マサは名残惜しそうに次郎の後を追って、二階のほうへ向っていく。

 暫く経って、二階へ上がっていった三人が戻ってくる足音がして、真穂は身構えた。最初に入って来たのは、朱美だった。その格好を見て、真穂は唖然とする。朱美は何と婦人警官の制服を着ていたのだ。しかし、それは良く観ると、真穂等がいつも着用している本物ではなく、それに似せて作ったらしいイミテーションだった。コスプレの店などで調達してきたものらしかった。続いて入ってきた次郎、マサも警察官らしき格好をしている。真穂の目にはすぐに贋物と分かるが、一般人にはおそらく区別がつかないだろうと思われた。
 「どう、似合うかしら。」
 朱美は真穂に向ってポーズを取ってみせる。化粧もいつものケバイものではなく、真面目な女巡査っぽい、控えめなものに変えている。
 「いったい、どういうつもり。そんな格好して、何をしようとしているの。」
 真穂は嫌な予感にかられて、三人に向って叫んだ。朱美が近づいてきて、何やら真穂にかざしてみせる。真穂が身を起こしてよく観ると、警察手帳だった。真穂ははっと気づくのだった。捕えられた時に、バッグを奪われている。その中には手錠の鍵の他に、真穂自身の警察手帳もあった筈なのだ。今目にしているものは明らかに本物で、それは真穂のものでしかありえなかった。
 「ほらっ、写真もあたしのに貼り替えてあるのよ。これさえ持っていれば、万全よね。」
 朱美は、真穂の警察手帳を使って、真穂になりすますつもりのようなのだ。それで何をしようとしているのかまでは分からないが、何やら悪事を働くのは間違いなさそうだった。
 「さ、今度はあんたの署に電話して、休みを貰うのよ。2、3日は休んで貰うわ。ただし、勝手な事を言われると困るから、この紙に書いてある通りに言うのよ。勝手なこと、喋ったらマサに刺して貰うからね。」
 そういうと、手にした紙をかざしながら、もう一方の手で携帯電話のボタンを押していく。マサのほうは後ろから真穂の身体を抱き起こし、襟首を掴んで首にナイフの刃を当てる。真穂は朱美が掛けた署の生活安全課の同僚に、身内で不幸があって二、三日忌引き休暇を貰うことになったと告げなければならなかった。符牒を使って、緊急連絡をしようと思ったが、文面以外のことを言うことはとうとう出来なかったのだ。
 電話が終わると、マサは真穂の身体を念入りに縛り始めた。見張りを置かないので、手錠だけでは不安と思ったようだった。マサは真穂の身体を縛るのが嬉しいらしく、服の上からあちこち触りながら、縄をきつく締め上げていく。最後に足首に巻いたロープの先を天井の梁から伸びている鎖に繋ぐと、足首で真穂の下半身を逆さに吊り上げた。上半身は床に寝かせられたままなので、長時間放置されても、首で吊られていた昨日よりは楽な筈だが、這っていくことも出来ない。脚を持ち上げられた為に、スカートはずり上がって、脚の付け根までが露わになってしまう。ショーツの下には紙オムツを穿かされているので、露わにされてしまったスカートの奥は不様な格好だった。
 「やっぱり紙オムツ嵌めたパンツってのは、興ざめだな。まあ、帰ってきたら、すぐに取ってやるからな。」
 「駄目よ、マサっ。この女のシモの始末は私に任されてるんだから。勝手に触っちゃ駄目よ。あんたもパンツ丸見えで不恰好だけど、下手に這いまわって逃げられても困るんで我慢するのよ。マサ、この子に猿轡かませてやって。」
 再び真穂は、口の中にハンカチを入れられてから、手拭で口を割られて、声も挙げられなくされてしまう。
 すっかり用意が出来たところで、三人は玄関のほうへ出ていった。入念に鍵を掛ける音がした後、車のエンジンが掛かる音が聞こえ、やがて音は遠のいていった。

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