鼻摘み

妄想小説

監禁された女巡査



 第四章 饗宴


 監禁されて部屋の中に繋がれている真穂にも、部屋のあちこちにある縦長のフレンチ窓からカーテン越しに差し込む陽の様子から、夕闇が迫ってあたりが暗くなってきたことは判っていた。
 そんな頃になって、三々五々出入りを繰り返していた十数人の組員たちが、一斉にぞろぞろと括りつけられた真穂の前を通って、外へ出始めた。通りすがるついでに、殆どの者が、ちらっと相変わらず晒し者になっている真穂の痴態を眺めていく。男達はどうも屋敷の外の庭へ出てゆくようだった。外からは男達のだみ声が響いて部屋の中の真穂のほうへも聞こえてくていたのだ。
 最後の一人が通り過ぎて、再び静寂が訪れた時に、出ていった者の中に、若と呼ばれた青年と朱美と呼ばれた次郎の情婦は含まれていなかったことに気づいていた。次郎やマサは男達に混じって外へ出たのは、真穂にも判ったのだ。
 再び一人にされて暫く経ってから、真穂の元へやって来たのは、朱美だった。ふんふん鼻歌を歌いながら、真穂の近くへやってきた。真穂のほうは、強張った顔で朱美を睨むように様子を窺がう。その朱美が真穂の耳元へ囁くように話し掛けてきた。
 「どう、そろそろ又、おしっこがしたくなってきた頃じゃない。」
 図星をあてられていた。午前中に捕獲され、尿瓶を使わせられたのは一度きりなのだ。人間の生理的な摂理は止めることが出来ない。しかし、真穂には素直に認めて、朱美に乞うことは出来なかった。あの屈辱的な仕打ちを受けねばならないのをどうしても受け入れることが出来なかったのだ。
 「ふふふ、言わなくっても分かっていてよ。だって、さっき出してからもう何時間も経っているのですもの。ま、我慢しちゃって。そんなに恥かしかった?」
 朱美は嘲笑するかのように、真穂が必死で堪えている顔を下から覗き込むように見上げる。真穂は口惜しさに唇を噛みしめる。
 「でも、今回はすぐには駄目よ。まだ大事なお務めが控えているんだから。もう暫く我慢して貰うわ。いいこと。」
 朱美はそう言うと、真穂を小馬鹿にするように、真穂の鼻先を指で突き上げて、鼻の穴を露わにさせる。朱美だけは真穂の身体に触れることを禁じられていないらしく、鼻の穴を豚のように開かせられたことが、真穂の屈辱感を一層たぎらせた。
 「さて、私もお仕事を済ませてしまわなくっちゃ。さ、脚を大きく広げて頂戴。」
 「私に何をしようって言うの。」
 「いい気持ちになれる薬をあげるの。一日ずっと辛い思いをしてきたでしょ。だからいい思いだってさせてあげなくっちゃ。プフッ。」
 朱美は妙な含み笑いを洩らした。
 「嫌がって、言う事を聞かないんなら、男達を連れてきて、無理やりにも脚を開かせるけど、どうする。男達に入ってきてほしい?」
 その言葉は、真穂には覿面だった。恥かしい姿を更に男達に見られるのなら、朱美にだけなら我慢しなくてはならないと思った。
 真穂は、膝にパンティの引っ掛かった膝を少しずつ緩めて、がに股になって膝を広げた。足首には縄が巻きつかれているので、自由に脚を広げることは出来ないのだった。
 真穂がおとなしく股を広げたのを見て、朱美は後ろ手に隠し持っていた壜を真穂の前に出して、蓋になっているキャップを回して取り外す。見下ろしている真穂には小さな壜にローションのような白いクリームが入っているのが見える。それを朱美は人差し指で掬ってからめ取ると、含み笑いを浮かべながら、さっと真穂のスカートの下へ手を伸ばした。咄嗟のことで真穂も身を動かす暇もなかった。気づいた時には既に朱美の指が真穂の陰唇を捉えていた。
 「あ、いやっ・・・。」
 真穂は朱美の指がくの字に曲がりながら、陰唇の内側に妖しげな白いクリームが塗り篭められていくのをどうすることも出来ずにただじっと堪えているしかなかった。塗った直後はひんやりした感触が肉襞の内側に感じられたのだが、すぐにかっと熱い火照りに変わった。
 「何なの。いったい、これは・・・。何をするつもりなの。」
 「すぐにいい気持ちになれるわよ。」
 それだけ言うと、クリームの壜に再び蓋を閉めて傍らへ置くと、両手で膝元の真穂のパンティの両端を掴むとスカートの中に引揚げる。クリームを塗り篭められた股間を包み込むようにパンティが穿かされてしまうと、不安と安堵が入り混じった妙な心持になる。
 「ストッキングは着けないほうがいいわね。いざという時に興ざめだから。」
 真穂には意味不明の言葉は吐くと、朱美は真穂のストッキングを広げて指で穴を開け、両手を思いっきり広げて引き裂き始めた。最後のほうは引き千切れなくなると、どこからか鋏を持ってきて、ちょんぎっていく。穿いていたハイヒールは一旦脱がされ、足首の縄の下を通して、ストッキングがすっかり取り去られてしまった。生脚になった真穂の下半身は短いスカートから露わになっていて、ずっと艶かしくなる。そこまで準備が整うと、朱美は用が終わったとばかりに外へ出てゆくのだった。朱美が出ていったのは、男達を呼びに行ったのだったようだ。すぐに入れ替わりで次郎とマサがやってきた。どうも真穂を取り扱う役目を仰せつかっている風だった。
 次郎が再び真穂の首の周りにぶらさがっていたアイマスクを引揚げ、視界を奪う。マサのほうは足許で足首の縄をほどいている様子だった。首輪がぐいと引かれて、カチンと何やら音がしたことで、新たに首輪に茄環が嵌められたのが分かった。それにも頑丈な鎖が繋がっているのが分かる。天井から吊るされていたほうの鎖は外されたようだった。手錠を柱に繋いでいた鎖も錠前のところで外された。足首を柱に繋いでいた縄も新たに足首と足首を50cmほどの弛みを持って繋ぎなおされただけだった。走って逃げようにも、目が見えないし、脚の縄が絡まってすぐに転んでしまいそうだった。
 「じゃ、鎖を引くから黙って着いてきな。」
 次郎がそう命じるように言うと、早速真穂の首輪が前に挽かれた。真穂はつんのめって倒れないように後をついてゆくのがやっとだった。
 ドアを通り抜けたらしいところで、階段のようなところを昇らされる。それは回転しながら上がっていくので、螺旋階段だろうと見当をつけたが、目が見えないので踏み外さないかばかりを気にしなければならなかった。手錠からは外した鎖が垂れているのを引き摺っていてジャラジャラ音を立てていた。そのもう一方の端を後からマサが握っているらしかった。段数から想像して三階部分まで昇らされたようだった。そこから少し平坦な場所を進まされると、急に冷たい外気が頬を伝ったことで、屋外に連れ出されたのだと悟った。何かがキィ―と金属音を立てた。首輪と背中を押されて前へ出るのと、背後で鎖がジャラジャラ音を立てるのがほぼ同時だった。再びキィ―という高い金属音がしたところでアイマスクが再び外された。視界が戻ると、真穂は自分の置かれた場所に仰天する。遥か下に男達が庭に出て何やらバーベキューの用意をしているのが見下ろせる。しかし、問題は真穂が立たされていた場所だった。そこは建物三階の外側で、屋上テラスになった部分の柵の外側だったのだ。真穂のすぐ前には縁まで数センチも無い。鎖は手錠を腰ほどまでの高さの鉄製の柵にしっかり錠前で繋ぎ止められていて、万が一バランスを崩しても階下へ転落することは無さそうだが、目の前が遥か下の庭なのが恐怖心を煽った。先ほど立てていたキィ―っという金属音は屋上部分を囲っている鉄柵に一箇所だけ設けられた出入り口なのだった。そこからは壁に埋め込まれた鉄の梯子伝いに二階部分までは降りられるようになっているようだった。外壁の工事などの為に設けられたもののようだった。庭に居る男達から真穂の身体を遮るものは何も無い。文字通り晒し者の状態なのだった。下から見上げられてスカートの奥が覗いてしまっているかもしれなかった。しかし、真穂にはそれを確かめることも、覗かれるのを避けるように身体の位置を変えることも出来ないのだ。相変わらず後ろ手に手錠を掛けられ、股間の前を男達に向けていることしか出来ない。既に男達の何人かは真穂が屋上の柵の外に磔にされるのを見上げて見守っている。

屋上磔

 次郎がおういと声を掛けると、すぐに閃光が走って、真穂は眩しさに顔を顰める。目が慣れてくると、下から屋上部分を照らすことの出来るスポットライトの照明が付けられたのだと分かる。夜の闇の中に、真穂の下半身を露わにした肢体が煌々と浮かび上がって見えているに違いなかった。時折吹きすさぶ夜気を含んだ冷たい風が、真穂の身体を震えさせ、嫌が応でも真穂の尿意を高め、限界へと追いやってゆく結果となるのが、すぐに推測された。責めはしかし、それだけでは無かったのだ。螺旋階段を昇らされている時から、妙な掻痒感が真穂の股間を襲いはじめているのに気づいていた。それは朱美にいきなり塗り込められた妖しげなクリームのせいに違いなかった。山芋のエキスやずいきの汁などを調合して催淫薬として作られているものがあるというのは真穂も聞いたことがあったが、実物を目にしたことはなかった。一度痒くなりだすと、その刺激は増してくるばかりで、掻き毟らずには居られなくなってくるのだ。しかし、脚同士を擦り合わせて身悶えるしか、痒い股間を癒す術は真穂には与えられていないのだった。真穂は募る尿意と高まる掻痒感に二重に責められることになったのだ。
 男達はそんな真穂の苦境を知ってか、知らずか、時々暗闇に浮き出るようにスポットライトに照らされた真穂の身体が何やら身悶えている様を遠目にちらちら身ながら、庭でバーベキューの宴会を真穂の身体を肴にして飲み始めたのだった。
 真穂は募り来る尿意と必死で闘っていたが、同じ股間を襲ってくる猛烈な掻痒感がそれを邪魔し、ややもすると、痒みのあまり、真穂の緊張感を解かせて、締めている括約筋を緩ませてしまいそうになるのだった。男達が階下で何やら真穂のことを話題にして大声で揶揄しているようだったが、最早、その声さえも耳に入らないほどだった。
 (ああ、もう洩れてしまう・・・。)
 どうしていいのかパニックになっている真穂には、背後から音も立てずに忍び寄ってくる者の気配を感じ取る余裕などなかった。ただ、ひたすら股間に神経を集中させて、括約筋を引き締めているので精一杯だったのだ。背後の人影は、真穂のすぐ後ろに屈み込んだと思うと、さっと両手を伸ばしてスカートの中に手を突っ込みショーツ一枚になっている下着を膝まで一気に引き下ろした。真穂は誰かに脱がされたと認識するより先に、解放された下半身のせいで一気に我慢の限界を超えてしまったのを認識した。
 「も、洩れる。」
 着衣を濡らさないという無意識の思いが、真穂の膝を大きく広げさせた。途端に激しいゆばりが大きな放物線を描いて夜の闇に向って放出された。
 「わっ、な、何だ・・・。」
 突然、宙からシャワーのように降ってきた奔流に、今度は庭で宴会の真っ最中だった男達がパニックになる。
 「しょ、しょんべんだぜ、こりゃあ。」
 「うわあ、汚ねえ。逃げろっ・・・。」
 真穂の小水は意図した訳ではなかったが、宴会のテーブルのど真ん中に向けられていたのだ。最初の勢いのあるうちは一筋の奔流となっていたものが、勢いが弱まるにつれ、今度は広範囲に乱れ飛ぶシャワー状になって男達に降り注いだ。そのしぶきを除けるように、男達は逃げ惑うのだった。

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